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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
四章

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温泉再び

 ばしゃーーーーーん!

 ものすごい水音がした。

 となりの女湯でアンナかエリが飛び込みを決めたのだろう。

 俺たちはアカビタルの町へ入り、いつものガレンの宿屋に泊まることにした。

 山越え長旅の疲れを温泉で癒すことにしたのだ。

 今回はリズミナの分も支払いを済ませていて、彼女も客として泊まっている。

 まあ本人はそれでも顔を隠して他の客になるべく見つからないようにしているのだが。

 リズミナが温泉好きなのは知っている。なので無理を言って正規の客として泊まるよう説得したのだ。

 夜にこっそり入るからいいとリズミナは言っていたのだが、一分一秒でも早く温泉に入りたかったのは絶対に俺と同じはずだからだ。


「ふぅー……」


 ああー。

 七日間の山旅で凝り固まった筋肉が、暖かい湯に浸かって解きほぐされていくようだ。

 ゆっくりと癒されてゆくこの時間がたまらない。

 風呂に入れる機会の少ない異世界では、足を伸ばして入れる温泉は本当に貴重だ。

 思えば山越えの旅は行きも帰りもしんどかったな。

 特に帰り。

 連日の睡眠不足は行きのとき以上だった。

 エリに乗っかられたせいで窒息しそうなこともあったほどだ。そのときのエリの胸は比喩(ひゆ)ではなく本当に凶器になるところだった。

 転びそうになったエリの体をとっさに支えたときの、手の感触がふいに思い出された。


「……」


 手のひらを閉じたり開けたりしてみる。

 女湯の連中が今どんな姿をしているかなどわかりきってる。

 心に芽生えた煩悩(ぼんのう)は簡単に振り払うことはできなかった。

 ちらと女湯のほうに目を向けるが、当然見えるのは木で出来た仕切りの柵だけだ。

 柵の向こうではアンナとエリのはしゃぐ声が聞こえる。

 水音から察するにお湯をかけあったり泳いだりしているようだ。

 いつまで経ってもおとなしくなる気配がないことから、どうやら向こうも男湯と同じように貸し切り状態らしい。

 この宿に最初に泊まったときのことは覚えている。

 アンナに抱き着かれてあやうく理性が飛びそうになったっけ。

 しかしその後リズミナと行動を共にするようになり、自制はある程度利いていたはずだ。

 誰かに見られている、他の人がいると思うと、自然とストッパーがかかるということだ。

 その歯止めがぐらぐらと揺らぎ始めていた。


「ああ……くそっ!」


 邪念を振り払うように、水面に大きく拳を叩きつけた。

 ばしゃんと盛大な水音が響く。


「クリスーーー、どうしたの?」

「……なんでもねえよ」


 そう答えるしかない。


「それよりアンナ。前に入ったときは歩けなくなるほどのぼせてただろ。今度は気を付けろよ」


 返ってきたのは笑い声。


「あはははは! それっ!」

「うわーーーーっ! やったなーーー! えいっ!」

「きゃーーーーっ!」


 聞いちゃいねえし……。

 ばしゃばしゃばしゃ。

 すっげー遊んでるな、あいつら。

 なんであんなに元気なんだ?


「背後取ったーーー! まだまだ甘いよエリちゃん」

「しまったぁーー!? あ、やめ……どこ揉んで……」

「おっきいなー。いいなー」

「あう、あああ……」

「クリス、ずっとエリちゃんのおっぱい見てたもんなぁー。あたしにもこれだけのものがあればなぁ……ううぅ……うらやましい」

 

 いや、全部聞こえてるんですけど。

 俺、そんなにずっと見てたか? エリのおっぱい。

 思わず抗議の声を上げそうになったが、やぶ蛇になりそうなのでぐっと堪えた。


「えいっ、このっ! このっ!」

「や、やめて……」


 エリのものとは思えないような弱々しい声。

 なにしてるんだあいつら……。


「ちょっとアンナちゃん……」


 リズミナがおそるおそるといった感じで止めに入ったようだ。


「ふっふっふー。リズミンのはどんな揉み心地かな?」

「いけ! アンナちゃん! 一人だけまったり温泉を楽しんでいるのは許せん!」

「りょうかい!!」

「やめてくださいーーーーー!!」


 あー……。

 聞いてるだけで頭がクラクラしてくる。

 もうのぼせた……ってわけじゃないよな、俺。


「上がるか」


 長旅の疲れや汚れがさっぱり落ちた代わりに、なにか別の邪なものに侵食されてしまいそうな気がして、俺は一足先に浴場を出ることにした。

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