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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
三章

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賞品につられ

 腹いっぱい食べた俺たちは支払いを済ませて店を出た。

 帰る道すがら何人かの人に声をかけられた。

 やっぱりそれはアンナへの応援とかそういうのだった。


「お嬢ちゃん、名前は?」

「アンナだよー」

「絶対投票するからな!」

「あのーあたしコンテストには……」

「がんばれよー!」


 今ので三人目。

 ちゃんと断るべきだよなーやっぱり。

 勢いに押されて断る暇がなかったが、これ以上勘違いさせてしまう人を増やしてもまずい。

 そう思っていたところへ、また一人きた。

 ちょっと小太りなおじさんだ。


「いやーお美しい。お名前を教えてもらってもいいですか?」

「アンナだよっ」


 アンナは一応のあいさつは嫌な顔もせずにしっかりとやっている。バザンドラでは俺の商売の接客を担当していたくらいだ。


「アンナちゃんですか。ぜひ投票させていただきますよ。がんばってくださいね」


 ここだ。

 さすがにそろそろちゃんと言わなければいけない。


「あー、こいつ美少女コンテストには出場しないんですよ」


 おじさんは背をのけ反らせて驚いた。


「えっ! そうなんですか? いやもったいない。出るべきですよ」

「そうは言われても……」


 俺は頭をかく。


「優勝賞品はあのキリマルインですよ。出ないのはもったいない」

「!?」


 俺とアンナは示し合わせたようにピッタリのタイミングで顔を見合わせる。

 キリマルイン。

 その名前はさっきの飯屋の、客たちの会話の中で聞いていた。

 たしか伝説の食材の一つだったはずだ。

 絶対美味いだろ。

 思わずつばを飲み込んでしまったが、それはアンナも同じだった。


「クリス!」

「ああ!」


 俺とアンナは一直線で宿へと駆け戻った。


「すいませーん!」

「おやお客さん、どうしたんですか顔色を変えて」

「やっぱり出ます! あたし出場します! 美少女コンテスト!!」


 宿の扉をどかんと開けて飛び込んで、一息にアンナは言った。

 店主のおじさんもその言葉を聞いたとたん、ぱっと笑顔になる。


「そうですか! そりゃあよかった! 本当にいいタイミングでしたよ。何しろもうコンテスト当日まで三日しかありませんでしたからね。こちらの名簿に名前をどうぞ」


 さっそく名前を書くアンナ。


「え、そんなにすぐなんですか?」

「ええ。お客さんは運がいい。規定上、ギリギリまで飛び入りの参加も許可されているんです。過去にはそれで優勝した娘もいましたしね」


 結局出ることになったなー。

 まあひいき目で優勝狙えるなんて思っているけども、もしダメでも損はないはずだ。参加費用だって取られない。

 賞品を聞いたアンナも乗り気なのだから問題はない。

 その日の夜。宿の部屋で俺はリズミナの報告を聞いていた。


「酒場や広場で少々話を聞いて回った。しかし小さな手掛かりすら掴めなかった。アリキア山脈の魔物の活発化についてすら知らないという者がほとんどだった。残念だが収穫はゼロだ」

「こっちはパギャラモとカギギラを食った。めちゃくちゃおいしかった。そして美少女コンテストにアンナが出ることになった。町の色んな人たちから応援された」

「こいつ……」


 リズミナは呆れたように目を閉じて首を振った。


「私が真面目に聞き込みをしている間にお前は……。はぁ、そんなに堂々とされては怒る気にもなれん」

「まあまあ。簡単にいく話じゃないことはわかってたろ。長期戦になる可能性も考慮しておいたほうがいい」

「それはそうだが……」


 リズミナは小さく息を吐いた。


「わかったよ。私も少し焦っていたのかもしれん。焦りは大抵の場合、いい結果をもたらさない。クリスに合わせるよ」

「そうか。ならどうだリズミナ。お前も美少女コンテストに出てみるというのは――おっと」


 無言で繰り出されたパンチを軽く受け止める。


「ふん、もう不意打ちも食らわないか」

 

 不意打ち、とは今のパンチのことを言っているのだろう。


「さすがにな。お前だって本気じゃないんだろ?」

「魔術だけじゃなく、案外お前にはこっちの才能もあるのかもな」

「じゃあリズミナが俺の体術の先生になってくれるのか?」


 リズミナはフードの下で笑う。


「ふっ、考えておこう」 


 そう言って天井裏へと消えてしまった。


「さて、そろそろ寝るか……ん?」


 やけにおとなしいと思ってたら……。

 アンナは先にベッドに入って気持ちよさそうな寝息を立てていた。


「おやすみ、アンナ」


 俺もアンナといっしょの毛布の中へ入り、その頭をやさしくなでた。

 そして三日が経ち、いよいよ美少女コンテストの当日がやってきたのだった。


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