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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
三章

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鈴に隠された文字2

 シャーバンス国。それはアリキア山脈を越えた先にある国の名前だ。

 俺が解読した鈴に刻まれていた文字には、そのシャーバンスでかつて使われていた古い魔術文字が隠されていたのだ。

 二種類以上の文字による隠し文字。さらには古い魔術文字で、しかも山向こうのシャーバンス国のものとなれば、これは国が解読できないのも無理はない。

 隠し文字に気付いた俺でさえ苦戦させられたのだから。

 シャーバンスの魔術文字と重ね合わされていたもう一つの文字のほうは、残念ながらわからない。

 もしかしたら二種類ではなく三種類の文字が重ねられているのかもしれなかった。

 しかし今回発見した魔術文字についてはそれなりに自信がある。


「まさかシャーバンスの魔術文字だったとはな……で、どういう意味なんだ?」


 そう言ってリズミナはパンを一口。

 俺も床に座ってベッドに左腕をだらっと乗せながら、右手の丸パンをかじる。カエンのカフェで買ったジャムを塗ればただのパンでも最高にうまい。柑橘系の酸味の効いたこのジャムはお気に入りだ。

 リズミナもアンナも、自宅二階でいっしょにパンを食べていた。

 もう日は暮れているので遅い夕食といったところか。


「増幅と中継、反射。そんなところだ。なにかの魔法を受信するアンテナのように使われたんじゃないかな?」

「あん……てな?」


 いぶかしげに眉を寄せるリズミナ。

 ああ、しまった。

 疲れて頭が回っていないからだろうか。つい転生前の知識で単語がそのまま出てしまった。


「なんというか、魔術装置の類だ。それもかなり特異な働きをする物だった可能性が高い」

「さすがクリスだ。よくそこまでわかったものだ」

「いや、推測の域を出ないけどな。それにもう鈴は手元にない。確認することもできない」

「山の向こうの国って……あたしたちと違う文字を使ってるの?」


 アンナの疑問はもっともだ。


「今は言葉も文字も同じはずだ。でも昔には――少なくとも魔術文字に限って言えば、独自のものが使われていたんだ」

「ふーん……」


 アンナはジャムの瓶を手に取って、中身をたっぷりとスプーンですくう。

 食べかけのパンに再び塗られたそのジャムの量は、俺がパン一個に使うよりも多い。

 結構高いジャムなんだけどな……。

 まあ金に関してはとやかく言うつもりはないけど。


「それにしてもシャーバンスか。やっぱりリズミナは調査に行きたいんだろう? 山向こうでも」

「無論だ。だがクリスの警護も同じくらい重要な任務。だから……」


 そう言ってリズミナはアンナのほうを見る。

 任務任務と口では言っても、リズミナはアンナを気にかけてくれている。

 俺がアンナに危険が及ぶような場所へ行きたがらないことを十分に理解しているのだ。


「じゃあシャーバンスへ行こーーーー!」

「お、おい……」


 元気よく腕を上げるアンナを俺は止めようとした。

 しかしそれ以上の言葉が出てこない。

 なぜなら思い出してしまったから。

 以前キリアヒーストルの王都へ犯罪者扱いされて呼び出されたときのことだ。

 同じ間違いを二度繰り返すことは出来ない。

 なら俺はいさぎよく降参するしか手はなかった。


「わかったよ。でも山越えだぞ。大変だぞ」

「どんなくっにかっな、シャーバンスーぅ♪」


 さっそくうきうきのご様子。

 俺はリズミナに苦笑いをした。


「すまないな。先にクリスに通すべき話だった」


 アンナをその気にさせてしまえば俺は従うしかないとリズミナも知っているのだ。

 だからアンナを先に落としてしまったことへの謝罪だろう。

 だが今回リズミナは完全に無罪。

 俺とアンナに気を使っているのも知っている。


「いや俺が先に話を振ったんだから気にしないでくれ。行くと決まれば準備はしっかりしておかないとな」


 と、パンを食べ終わったアンナは何やら眠そう。

 首をふらふらと動かし始めた。


「じゃ、今日はもう遅いから寝るぞ」


 部屋の壁に貼った発光符を剥していく。

 アンナは倒れ込むようにベッドに寝転がった。


「ふあぁ……おやすみぃ」


 リズミナはいつも通り一息に飛び上がって天井裏へ。

 俺もベッドへと思っていたところへ、頭上からリズミナが小さく一言。


「……おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 フードを被っているときも、やっぱり冷たいやつじゃないんだよなぁ。

 俺は気配でバレないよう口元だけで笑いながら、アンナの横に寝転がった。

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