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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
三章

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リズミナの意外な趣味

 その日、俺とアンナは自宅の一階で将棋をしていた。

 俺は悲しくも飛車角落ちのハンデをいただいている。

 それでも……なんか負けそう。

 こんなことなら転生前にもうちょっと本格的に将棋を勉強しておくべきだったか?

 まあアンナの才能なら付け焼刃の戦術なんて、すぐに吸収して上を行かれてしまいそうな気もするが。

 ダメだ。勝ち筋が見つからない。

 かといってこのまま負けるのもくやしい。


「むう……」


 必死に悩んでいた、その時。

 ズズン!

 二階でものすごい音がした。


「きゃっ――」

「うおっ!?」


 アンナも俺も驚いて上を見上げる。

 大砲で砲撃でもされたかのような音。

 一瞬家が揺れた気がした。

 俺たちは急いで二階へと上がった。


「うそだろ……」


 二階の部屋。

 その床の真ん中には穴が開いていた。

 大きくめり込んだ石。一抱えほどもあるかなりの大きさ。

 この石が落ちて床に穴を開けたということらしい。

 一階まで貫通していたら危なかった。

 だってこの穴の真下は、まさに今さっき俺とアンナが将棋をしていた机だったのだから。

 でもこの石はどこから?

 天井を見上げると、天井板の一部が割れて穴が開いているのが確認できた。

 そしてその穴の向こうにはリズミナの顔。

 天井板の一枚が外され、音もなく飛び降りるリズミナ。

 呆気にとられている俺とアンナの前で、リズミナは顔を覆うフードを跳ね上げた。


「ごめんなさいっ!!」

「えっ」


 がばっと大きく頭を下げて謝るリズミナ。

 なにがなんだかわからない。


「えっと、この石……お前が?」


 うなずくリズミナ。

 なんで石なんか落としてんのこいつーーー!!


「まさかお前……俺たちを殺す気で――」

「違います! そんなつもりはありません! 本当です! うぅぅ……信じてくださいーーーー!」


 必死にまくしたてる涙目のリズミナ。

 ついにはぐすぐすと嗚咽をもらして泣き出してしまう。


「……私、趣味なんです」


 ぽつりとそんなことを言った。


「ええと……人の趣味に文句を言うのは野暮かもしれないけど、あまり感心しないな。どこか人気のない山とかで、下に人がいないのをちゃんと確認してからにしたほうが」

「違います! そうじゃないです! 石を落す趣味なんてありません!! というかなんですか、石を落す趣味って。そんな趣味の友達でもいるんですか!?」


 こんなに焦った彼女は久々に見る。焦りすぎて逆ギレ気味。夜中の温泉以来か? ちょっとかわいい。


「たぶん、石を集めるのが趣味……ってことなんじゃない?」


 助け舟を出すアンナ。


「はい。私、石が好きなんです」

「ああ、じゃあこれはわざと落としたんじゃなくて、重みで天井板が割れたってことか」

「そうなんです。……ごめんなさい」


 しゅんと肩を落として申し訳なさそうなリズミナ。

 なるほど。

 つまり、天井裏にはリズミナが集めた石コレクションが……。

 なんだろう、いつ落ちてくるかわからない凶器の下で寝てたのか? 俺。


「ちょっと見せてもらっていいか?」


 リズミナは断れるはずもない。小さくうなずいた。

 俺は一度外へ出て、家の裏からはしごを持ってくる。

 忍者みたいにジャンプで出入りできるリズミナと違って、天井裏に上るにははしごが必要だった。

 天井裏へ上がることはめったにないが、一応は用意してあったものだ。

 それを二階の部屋の中央から天井へと立てかけた。

 そして天井裏に上った俺が見た光景は、予想をはるかに超えたものだった。

 天井裏はぎりぎり立ち上がれない程度の空間。しかし部屋と呼べるほどの広さはない。

 そこにはリズミナが寝起きしているであろう布団がひとつ。

 書き物用なのか机代わりの木箱の上にはランプが置かれていた。

 すっかり生活しちゃってるんだな……ここで。

 まあここを自分の部屋代わりに使うことは構わないんだけど。


「うわぁ……」


 問題はランプの明かりに照らされる石、石、石……。

 大小さまざまな石が散乱していた。

 一つ一つの石の重みは大丈夫だとしても、これだけの量が積み重なれば、たしかにやばいかもしれない。

 中には俺でも持ち上げられるか不安な大きさのものまであった。

 どうやって運び込んだんだろう?

 というかいつのまにこんなに運び込んでたんだ!?

 これらが全部落ちてきたらと思うと……。

 怖すぎる。


「とりあえずこの石は全部出すぞ、いいな?」


 俺ははしご下に向かって呼びかける。


「……はい」


 リズミナは申し訳なさそうに了承した。

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