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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
二章

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20/198

対決!巨獣リウマトロス

 サンドイッチを食べながら宿の主人の後を追うと、昨日いっしょに夕食を食べた警備隊の一人が、血相を変えて宿の玄関に駆け込んできた。


「リウマトロスが出た!」

「なんだって!?」


 宿の主人もその一言で顔を青くした。

 リウマトロス。

 何度か耳にしたことはあるが、どういう魔物なのかは知らない。


「すぐに避難を! 客にも呼び掛けてくれ!」


 警備隊員はそれだけ言うとすぐに別の場所へ向かった。

 宿の主人は俺に向き直る。


「お客さんはすぐに避難してください。私は他の客にも知らせてまいります」


 そう言って階段を上っていった。

 外から、人々の悲鳴が聞こえた。

 外へ出てみると、遠く町の外、山の方角に巨大な魔物の姿が見えた。

 でかい。

 魔物というより、怪獣と表現したほうがしっくりくる。

 恐竜のようなシルエットは黒と緑のまだら模様で、目が燃えるように赤く輝いていた。

 転生前に見た怪獣映画を思い出した。

 その圧倒的なスケールは、理屈ではない生物としての根源的な恐怖を呼び起こされる。


「ゴアアアアアアアアアアッ!!」


 空を、大地を、世界を震わせるような咆哮。

 心臓を手で直接掴まれるような、どうしようもない気持ち。

 自分の手を見ると、それは勝手に震えていた。 

 人々は悲鳴と怒号を上げて逃げまどっている。

 使命を持って行動している警備隊はまだ正気を残して宿に知らせに来てくれていた。

 だけど一般人はそうもいかない。

 押し合い踏みつけながら、迫りくる脅威から逃げようと必死だ。

 リウマトロスが山のような巨体をとどろかせて町へと向かってくる。

 ものすごい勢いだ。あっという間に町に到達してしまうだろう。

 魔物が多く出没するここアカビタルの町の市壁は高い。

 しかしいかんせんスケールが違いすぎる。

 恐るべき勢いで迫るリウマトロスの威容。

 そしてリウマトロスがついに市壁に到達した。

 壁の建材、ちょっとした小屋一軒くらいの大きさはある石の塊が、まるで発泡スチロールで出来ているかのように空を舞う。


「くっ」


 それが俺の頭上数メートルを飛んで行って、さすがに冷や汗が流れた。

 そして見た。

 道の真ん中。人が取り残されている。

 木製の担架だ。その上に人が寝かされている。

 おそらくけが人。だが担架を運ぶ人間はどこにもいない。

 考えるより先に体が動いた。

 俺は逃げる人々とは逆方向、その担架を目指して走り出した。

 担架に乗せられている男は、駆けつけた俺を見て眉をしかめた。


「馬鹿……野郎……なにぼけっとして……俺は置いて……逃げろ……」


 男は昨日一緒に食事をした警備隊の一人だった。

 腹部に巻かれた包帯には血がにじんでいる。

 この大けがでも、まだ逆に俺の心配をしている。

 町の人を守ることに、文字通り命をかけているのだ。

 あっぱれ、としか言いようがなかった。


「あとは任せておけ」


 凄まじい轟音と衝撃。

 ついに市壁が崩壊したのだ。

 壁のそばの建物がリウマトロスの突進を受けて爆散した。

 怒涛のように迫りくる巨体。

 俺を踏み潰すまであと十秒もあるかどうか。

 だが、それだけあれば十分。

 術符起動。詠唱補助精霊召喚。脳内詠唱を開始。

 リウマトロスに吹っ飛ばされた建材の丸太が俺めがけて飛んでくる。

 人間十人は同時に叩き潰せるほどの大きさの丸太。

 障壁符起動。

 飛んできた丸太は見えない壁に弾かれて上空へと舞った。

 迫るリウマトロス。

 その一歩一歩ごとに地震のような振動が襲う。

 立っているのもやっとだ。

 四秒。

 魔法陣の展開を確認。周辺環境を把握。詠唱補助精霊による口述詠唱とのズレを修正。

 三秒。

 素早く周囲に視線をめぐらせる。

 効果範囲に人の姿はない。

 リウマトロスの、建物自体を踏み潰せる巨大な足が、ついに俺へと振り下ろされる。

 太陽が遮られ、すっぽりと影に飲まれる。

 一秒。


「おおおおおおおおおおお!」


 魔術発動。

 一本一本がリウマトロスの足よりも長く、その爪よりも鋭い風の刃。

 それがリウマトロス体を次々に切り刻んでいった。

 荒れ狂う魔法の暴風は勢い余って周囲の建物の一部をもかすめて切り落す。

 リウマトロスは不出来な解体ショーのように体のパーツを乱雑に切り離され、周囲に衝撃を撒き散らしながら巨体を地に沈めた。

 再現魔法。神話の暴風刃。

 静寂。

 もうもうと立ち込める土煙に交じって、巨獣の血臭が鼻を突いた。


「お、お前……」


 担架の上の警備隊員は信じられないとばかりに茫然と俺を見ていた。

 振り返れば宿の入り口からアンナが手を振っていた。

 俺は片手を上げてそれに応え――担架の端っこに足を引っかけて転んだ。


「ぎゃあああああああっ!」


 突然の衝撃に傷口が痛んだのだろう、警備隊員の絶叫が辺りに響き渡った。


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