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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
八章

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作戦会議?

 ユユナのおかげでサキュバスたちを追い払うことに成功した俺は、無事他の魔族に道を訊いてトイレを済ませて部屋に戻った。

 ユユナがあのときついてきたのは、こっそり部屋を出た俺のことが気になっていたかららしい。トイレに行きたかっただけだと説明すると、ユユナは恥ずかしそうな顔をしていた。


 サキュバスたちに絡まれたのは災難だったが、おかげで貴重な情報を得ることができたのも事実だ。

 あのサキュバスたちの言っていたことだ。俺たち一行のことをすでに知っている様子だっただけでなく、どうやら俺にターゲットを絞って狙っていたらしい。

 最初はサキュバスの本分として俺を溺れさせて、生気を奪うのが目的かとも思ったが、それについては「ついで」だと言っていた。つまり目的は別にあった。


 考えられるのはサキュバスに命じて俺を虜にして、意のままに操ろうとしていた可能性だ。

 命令したのはリトタキか、それともここへ来て最初に会った老魔族か。名前だけ出ていたルニーシアという魔族の可能性は、この城を実質支配しているらしいリトタキの敵対者なので低そうだ。

 もしリトタキが命じたのだとしたら、愚直そうな第一印象よりかは一筋縄ではいかない相手らしい。

 部屋に戻った俺が自身の考えを説明すると、ラルスウェインが静かにうなずいた。


「リトタキ様の部下の身としては残念だが、その可能性が最も高いだろうな。どうやらリトタキ様はクリスに利用価値を見出しているのかもしれない」

「利用価値? ただの人間の俺にか? 俺の魔法の威力をあいつは知っているのか?」

「違う。その逆だ。たとえただの人間であったとしても、その可能性に賭けたくなるほどに魔王の捜索は八方ふさがりの状況なんだ。人間の視点という私の提案を採用したのも、たぶんそういうことだろう。(わら)にもすがるというやつだ」


 だからサキュバスを使って洗脳し、便利な手駒にしておきたかったというわけか。


「待てよ。つまりリトタキは魔王を探すのに血まなこになっているということか。なるほどな。だから俺たちをあっさり受け入れたのか。目的が同じ――つまり利害の一致ってやつだ」

「そうだな」


 ラルスウェインは素直にうなずく。


「あの人も魔王さんを探して、それで人間界の異変をなんとかしようって思っているの?」


 アンナの問い。ベッドに寝転がって顔をこちらに向けている。

 もう一つのベッドに腰をかけているリズミナは思案顔。


「そんな様子には見えませんでしたが……」

「いや、たぶん違う。リトタキは次期魔王を自称しているんだろ? 魔王の座を巡ってルニーシアとかいう魔族と争っている。魔王を見つけ出すのは自分が魔王に成り代わるためという可能性もある」

「えっ、そんなことできるの?」


 エリは枕のほうに足を投げ出して仰向けで、頭をだらんとベッドからはみださせている。なんつーだらしない格好だ。垂れ落ちた髪が床に付きそうじゃねーか。それに、でかすぎる胸がことさらに強調されて、目のやり場に困る。

 これにはラルスウェインが真面目そのものの顔で答えた。


「いや、それはわからない。私は魔王の交代が行われた時代には生きていないし、文献なども残っていない」

「三千年を生きているっていうシウェリーもフリタウスも知らないらしい。まあ誰も知らないことだから、成り代わるっていうのは単なる推論だ」

「もしクリスの推測が正しければ、魔王を探し出すのは慎重に行ったほうがいいかもしれないな。魔王から情報を引き出す前に、リトタキ様が殺そうとしてしまうかもしれない」


 ラルスウェインは深刻そうな顔で言った。

 成り代わるっていうのが推測でしかないのだから、その方法についても当然確証などない。案外リトタキと魔王の間で戦闘が勃発するようなことはないのかもしれない。いかに寿命を迎えつつある魔王だって、魔王を名乗るからには簡単には殺されないだろう。そもそもその魔王の寿命にしたってただの推測でしかない。なぜ魔王が短命なのかもわからない。わからないことばかりで頭が痛くなりそうだった。


「とにかく魔王を探し出さないことにはなにも進まないって感じだな。それも、リトタキにはなるべく感づかれないように」


 結構な難題だ。

 ここはリトタキが支配する城だし、魔王に関しては糸口すら掴めていない。


「リトタキには自由に調べ回ってもいいと言われているし、ひとまず探索でもしてみるか。アンナたちは絶対に俺かラルと行動すること。もしくは異空間の拠点で待機だ。いいな?」

「はーい」


 アンナは素直にうなずいてくれた。俺と一緒なら文句はないのがアンナの基本方針だ。他のメンバーからも異論は出なかった。

 俺はふと気になって腰の短剣を抜いた。


「そういやシウェリー、お前ここへ来てからほとんどしゃべってないな。どうした?」

「私はここではなるべく目立たない方がいいと思ったんだ。魔王様に逆らうことはできないからな」


 シウェリーの主張も魔王派ということで一貫している。もし魔王と敵対することになったらこいつの立場も考えて行動しないとな。


「そうだ、リトタキにルニーシア。これらの名前の魔族に心当たりはあるか?」

「ない」


 予想通りの返答。知っていたらさすがのシウェリーも教えてくれてただろう。


「じゃ、ひとまず探索に出かけるか。おや……?」


 部屋のドアをノックする音。

 返事をすると、入ってきたのは先ほどのスラハというメイド少女だった。


「失礼します。人間の皆様のお口に合うかわかりませんが、こんなものをご用意しました」


 スラハが持ってきた籐のカゴには、赤い葉っぱと白いタマゴのような物が山と入っていた。葉っぱはシソっぽい。タマゴの大きさはニワトリのものに近いが楕円形ではなくまんまるだ。


「なんだこりゃ」


 俺はカゴからタマゴをひとつ取ってまじまじと見つめた。意外にもふにふにとやわらかく、軽い。マシュマロのような手触りだ。

 ラルスウェインの顔色が変わった。


「アトマストライトか!」

「アトマストライト?」


 アンナが首をかしげた。

 俺もその名前に聞き覚えは……いや待て。どこかで聞いたことがある。あれは……そう……。

 思い出した!


「伝説食材のひとつだよ!」

「「「「えーーーーーーーーっ!!」」」」


 全員の声が重なった。

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