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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
二章

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17/198

モーガスの肉

 宿の一階には宿泊客用の食堂スペースがある。

 今俺とアンナが並んで座っているのは十人はいっしょに食事ができる大きな長テーブルの真ん中の席。

 そしてテーブルに堂々たる威容を誇っているのは、大皿にどんと乗った肉の塊。


「でっっかーーーーーーい!」


 両手で抱えられないくらいの巨大な肉を見て、アンナは大喜びだ。


「モーガスですよ。魔物ですね。じっくり丸焼きに仕上げるのには時間がかかりましたよ」

「魔物!?」


 宿の主人は得意そうに口ひげをなでながら言った。


「アリキア山脈は秘境ですからね。魔物の類も多く出没するんですよ。町の近辺に現れて人に被害をもたらした場合は、警備隊が討伐に当たります。ですから、魔物の肉も時折こうして食卓に上がることがあるんです。貴重ですよ」


 切り分ける前の特大のケバブを丸々大皿に乗せたような感じだ。

 こんがりと焼けたモーガスの肉は、食欲をそそるいい匂いを漂わせていた。

 そこへ、ぞろぞろと人がやってきた。

 みな鎧こそ着てないものの、見るからに歴戦の勇士といった感じだ。

 主人が説明する。


「彼らがモーガスを仕留めた警備隊の方々です。今日は新鮮なモーガスをいただいたので代わりに料理を提供することになっていたんですよ」

「おお、こりゃうまそうだ」


 ガチムチひげ面の男が笑顔で席に座る。


「兄ちゃん、宿の客かい? ガレンの宿は最高だろう? この辺りじゃ一番の料理の腕だ」


 別の男がそう言って気安く話しかけてくる。


「モーガスはうまいぞ。こいつの肉を一度食ったらもうポルポなんかじゃ満足できねえ」


 さらにもう一人もそう言って俺の肩を叩いた。


「楽しみですね。今日はご相伴(しょうばん)に預からせてもらいます」


 そう言ってモーガスの肉をアンナにたっぷりと切り分けてやる。

 並のステーキ一枚分はあろうかというそれに、アンナは大口を開けてがぶりと食らいつく。


「おおーー!!」


 とたんに周りの男たちから拍手が上がった。

 見た目はいかついがみんないい人そうだ。

 これが戦地から戦地へと移動する傭兵や兵士の類だと山賊並みにやっかいな連中も多いのだが、町に根を下ろして生活する警備隊からはそんな威圧感は感じられない。

 男たちも思い思いに肉を切り取って、にぎやかな夕食が始まった。

 俺も自分の分を切り分けて、砕いた岩塩をさっと振ってさっそくかぶりついてみる。

 口の中でじゅわっと広がる肉のうま味。甘い脂。

 本当にこれはうまい肉だ!

 そしてその肉質のなんとやわらかいことか。

 筋張った感じが一切しない。

 こんなに豪快に肉を食らう機会なんて、転生前にはありえなかったことだ。

 異世界に転生してよかったーーー!

 肉が胃の中に飛び込むたびに、その幸せを実感する。

 切っても切ってもなくならない肉。

 アンナにもガンガン切り分けてやる。


「おいしいいーーーーー! お肉おいしいいーーーーー! さいこーーーーー!!」


 アンナはナイフとフォークを高く掲げてそう宣言。

 酒の入った男たちもアンナの堂々たる振る舞いにどっと大笑いだ。


「いいぞ嬢ちゃん。将来は警備隊に入らねえか?」

「お前ならリウマトロスだって仕留められるようになるぜ!」

「ははは! 違いない!」


 大量の肉を食べて口の中が脂っこくなっていたところへ、木のボウルに山と盛られたサラダが登場した。

 渡された白い果実を搾って汁をかければ、これ以上なく肉に合う。

 レモンとは違うがスッと抜けるような香りがする。

 果汁のさわやかな酸味と青野菜のシャキシャキ感。

 そして肉。

 交互に食べればまだまだいける。


「どうだい? あんたも一杯」


 筋肉の塊のような男に酒を勧められるが俺は飲めない。


「申し訳ありません。飲めないんで」


 それを聞いた筋肉ダルマは何を思ったのか大笑い。


「がっはっはっは! そうか。まああと二、三年もしたら酒の味も覚えるようになる」


 子ども扱い……されてるんだよなぁ。

 まあ、慣れたことなのでいちいち腹も立たない。一部例外を除いては。

 俺はこっちで十分だ。

 冷ました薄いお茶を喉へ流し込む。

 宿の主人が言うには動物の乳もあったが、種類によってはクセがあるので俺は水か薄いお茶が好みだ。

 大量の肉でしつこくなっていた口の中をスッキリとリフレッシュさせる。

 そしてまた猛然と食らいつく。


「おいひい! おいひいいーーーーー!! おいひいよぉぉーーーーー!!」


 幸せそうに口いっぱいに頬張りながらもペースのまったく落ちないアンナはさすがと言うべきか。 

 結局アンナも俺も、腹がはちきれんばかりに食べることになってしまった。

 その場にいたのは警備隊の面々五人と、宿の客だろう商人風のおじさんと、品の良さそうな紳士、それに宿の主人。

 大皿の巨大な肉は半分以上がなくなっていたが、まだまだ残っていた。

 食べきれなかったらどうするんだろ、あれ。

 明日聞いてみて、残っていたらパンにでも挟んで食べたいな。

 食べ過ぎて動けなくなったアンナを抱きかかえて食堂を後にするとき、アンナはその場の全員に手を振っていた。

 みんなも小さな大食の英雄に惜しみない拍手を送るのだった。

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