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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
七章

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調査結果

 結論から言うと、調査の結果かなりのことがわかった。

 まずアルフィリムという王は、約三百年も昔に実在していたと判明した。

 王宮の蔵書をひっくり返すような大捜索の末、いくつかの文献が見つかった。

 母の死後すぐにというリフィスの言葉が気になっていた俺は、リフィスから聞いた彼女の母の名前を中心に王の女性関係の記述を探した。

 しかし王関係の文献からは手掛かりは得られず、同一年代の使用人たちが暮らしていた(りょう)の入居記録のほうに名前を発見した。

 現在その寮は寮としての役目を終えて、倉庫として王宮庭園内の一角にひっそりと隠れるようにしてあった。

 その建物は古すぎて誰も寄り付かなくなってかなりの月日が経っていた。

 俺はそのボロボロの廃寮を捜索(そうさく)して、リフィスの母の部屋であっただろう一室を探り当てた。そして徹底的に調べた。

 その結果、壁を壊して現れた空洞の中に、古ぼけた木の宝箱を発見したのだった。

 その宝箱の中には一冊の本が入っており、それはリフィスの母が残した日記だった。

 そこには驚愕の内容が書かれていた。

 リフィスと城で会話をしてから、実に七日目のことだった。


「よう、リフィス。いるか?」

「あっ、クリスさん。それにみなさん!」


 驚くリフィス。

 それもそのはず。いつものリフィスの部屋にやってきたのは俺だけでなく、あの日肝試しに参加した全員がそろっていたのだから。


「えへへ……手紙だけじゃなくてちゃんとお話ししたいなって。いいよね?」

「もちろんです!」


 アンナの言葉にリフィスは花が咲いたような笑顔になる。


「あの日は逃げてしまって……その、すまない」


 イリアはすまなそうに頭を下げた。

 ミリエは不安そうに俺の服を掴んでいるが、その顔はしっかりとしていた。


「私も……私ともお友達になってください」


 あの日手紙を読んだリフィスの反応を、俺はみんなに詳しく聞かせてやっていた。リフィスがどれだけうれしそうにしていたかとか、どれだけ楽しげだったかとか。


「みなさん……ありがとう。うぅっ……ありがとうございますっ! 私、うれしいです……。うれしすぎて私、なんだかこのままお空に昇って行ってしまいそうな気分です」


 ぐすっと涙ぐむリフィス。半分泣き笑いで、そんな冗談を言った。


「おいおい、待ってくれよ。お前が気になっていたっていう王の調査の件、聞かずに行っちまうのはなしだぜ」

「あはは……そういえばそうですね」

「まさかアルフィリム王が、三百年も前の人物だったとは思わなかったよ。おかげでだいぶ時間がかかっちまった。仕事をサボるわけにもいかなかったし、とにかく遅くなってすまん」


 毎日の仕事はめちゃくちゃ急いでこなし、調査は主に午後を使って行ったが、それでも七日間もかかった。

 頭を下げた俺にリフィスはとんでもないとばかりに手を振って慌てた。


「いえ、そんな。クリスさんこそ王様なのに、こんな私みたいなお化け一人のために、本当になにからなにまで……なんて言ったらいいのか。とにかく本当にありがとうございます」

「はは、今は王政はなくなって俺は筆頭政務官なんだけどな」


 リフィスは可愛らしく首を傾げた。


「ひっとうせいむ? よくわからないです。なんだかおばあちゃんですね……私」


 そりゃあ三百年も時代に取り残されていれば仕方ないことだろう。

 というか王政がなくなったのはつい最近だ。わからなくて当たり前。


「じゃあ本題だ。リフィス……いやリフィス王女」

「えっ!?」


 全員が驚きの声を上げる。


「間違いない。ここにお前の母フラミュスの日記がある。この日記にすべて記されていた」

「母の……」


 俺が持つ古ぼけた日記に視線が集まる。


「どうやら城のメイドだったフラミュスは、王の寵愛(ちょうあい)を受けてリフィスを授かったようだな。そしてリフィスが自分の血を引いているということは王も知っていた。王がお前にやさしく接していたのは、おそらく父としての愛もあったのだろう」

「じゃあ……じゃあなんで私を閉じ込めたり!! 私はそれで命を落とし……うぅっ」

「どうやらリフィスの血筋のことは、王とフラミュスだけの秘密だったようだ。王家の血筋のことを娘にすら黙っておくというのが、フラミュスとリフィスが城に(とど)まるための約束だったようだ」


 もしその約束が守られなければ、母娘はどうなるのだろうか?

 その答えは日記の続きに書かれている。


「当時のイリシュアールは他国の脅威にさらされていて、王は政略結婚を決断したらしい。ちょうど折り悪く娘の将来を案じたフラミュスが、リフィスの認知を王に迫った。メイドではなく娘を王女として認めろということだな。王は拒否し、フラミュスにさらに強く口止めをしたそうだ」


 もしかしたらフラミュスは王に結婚話が持ち上がって焦ったのかもしれない。今声を上げなければ娘は一生下働きのメイドで終わってしまう。本当なら王女の資格があるのに、と。


「そんな……」


 悲壮な顔で口元を押さえるリフィス。

 さすがに俺も明らかにするべきか迷ったのだが、百年以上も幽霊になって現世に縛られるほどの未練なのだ。黙っているほうが残酷だと思って今日はすべてを話すことを決意した。


「日記には王に拒絶されたフラミュスの悲しみと、娘の将来を案じる不安がつづられている。真実を他人にばらせば、娘の命はないとまで言われていたようだな。そして心労からか、ちょうどこの時期に体調を崩して寝込むようになった」

「お母さん……」


 俺が渡した日記を抱きしめて切ない表情を見せるリフィス。


「あの、クリスさん……この国の、イリシュアールの王は……」


 リフィスは(くら)い目をしていた。

 俺は首を振った。


「この国に王はもういない。王政は俺が打ち倒した」

「そう……ですか」


 俺と、アンナたち全員はお互いに視線を交わし合った。リフィスにどんな声をかければいいのかと思った。

 意外にもリフィスは気丈(きじょう)に笑った。


「それじゃあ、化けて出てやることもできませんね。でもそれでよかったのかもしれません。クリスさんが私に代わって復讐してくれたおかげで、私は悪霊にならずに済んだのですから」


 たしかに。リフィスには恨みの顔よりも笑顔のほうがよく似合う。

 リフィスは気遣いはいらないとばかりに、ぽんと手を叩いて明るい声を出した。


「そうだ! 実はですね。この部屋には隠し部屋があるんですよ。幽霊になってから発見したんですけどね。えへへ……なんと、その隠し部屋には、こぉんなにおっきい宝箱がありまぁす!!」


 ばっと手を広げて宣言するリフィス。


「「「「「「宝箱ーーーーー!?」」」」」」


 全員の声が重なった。


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