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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
七章

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幽霊少女

 城の正面一階ロビーには、さすがに備え付けのランプ等の照明がいくつもあり、それなりの明るさが保たれていた。

 俺たちが戻ってくると、待っていたアンナたち四人は声を上げて喜んだ。


「あっ、帰って来たよ!! おかえりなさーーーい!!」

「わはーーーっ! どうだった? なにも出なかった?」


 エリも元気いっぱい。緊張の糸が解けたのだろう。


「よかった……クリスお兄様。ご無事で……」

「ふぅー……」


 心配してくれていたのだろうユユナも震え声で無事を喜んだ。

 リズミナも安堵のため息を吐いていた。


「こ、こわかったです……」

「ああ……かなり堪えた」


 涙目のミリエと、げっそりしたイリア。


「いやー、結構怖かったな。だけどみんな無事帰ってこれてよかった」


 俺が言うとエリは声を弾ませた。


「あはは。でしょでしょ! いやー、正直私も結構限界だったよー。でも面白かったーーー!」


 エリの明るさにつられてみんなの間にも笑顔が広がる。

 肝試しの最中はみんな泣き出しそうなほど怖がっていたけれど、終わってみればそのぶん解放された気持ちよさも大きかった。


「じゃあ帰るかーーー!」

「「「「「「はーーーーーい」」」」」」


 全員の声が夜の城内に響き渡った。

 そのときだった。


「あ……あ……」


 アンナが俺を指さしてブルブルと震えている。その顔は真っ青だ。


「ひっ――」


 エリも目を大きく見開いて声を失っていた。


「はうっ……」

「ああ……」


 気を失ったのかその場に倒れ込むユユナとミリエ。


「どうしたんだ、お前たち……」

「クリス……後ろ……後ろ……」


 イリアもアンナと同じように俺を指さしていた。いや、俺の後ろをだ。


「えっ?」


 ようやく後ろを振り返る俺。

 そこに立っていたのは――。


「はじめまして。私、リフィスと申します」


 にっこりと笑顔を浮かべた、メイド服の女の子だった。髪をふたつおさげにして、アンティーク人形を抱えている。

 しかしその子が普通の人間であるはずがない。

 なぜならその体は半透明に透けていたのだから。


「ええと、君、もしかして……」

「はい。みなさんが遊びにいらしたあの部屋で命を落とした……幽霊です」

「「「「いやああああああああああーーーー!!」」」」


 俺以外の全員、絶叫を上げて逃げ出した。

 城の正門は閉まっている。みんなはその脇にある関係者用の出入り口へと駆けて行った。


「あ、みなさん……」


 幽霊少女リフィスは寂しそうにその背中に手を伸ばした。

 しかしみんなあっという間に外へ逃げて行ってしまった。

 俺はなぜ逃げなかったのかというと、気絶して倒れたユユナとミリエをこのままにしておけないと思ったのと、この少女に悪意を感じなかったからだ。


「私が姿を見せると、みんな今のように……うぅっ……ひぅっ……」


 しくしくと泣き出す少女。


「なるほど。それでいつも泣いていたわけか。うわさになっていたぞ。すすり泣く少女の声が聞こえるって」


 リフィスは驚いた顔で俺を見た。


「あの、あなたは逃げないんですか?」

「ああ。別に怖がらせようと思ってるわけじゃないんだろ?」


 こんなに可愛い幽霊なら怖くは――いや、ちょっとは怖いけど。血とか出してたりしてグロい姿でないなら大丈夫だ。少なくともリフィスは生前そのままの愛らしい姿に見える。


「もちろんです。私、みなさんが遊びに来てくれて、楽しそうにしているのを見て……すごく興味を引かれてしまいました。結果的にみなさんを怖がらせてしまうことになってしまって、本当に申し訳ないと思っています」

「そんな、気にしなくていいよ。まあ、怖かったのは事実だけどな。でもそりゃ幽霊の本分みたいなもんだよ。仕方ないさ」


「そう言っていただけると助かります。あの、これ……。すいません。お返しします」


 リフィスが差し出してきたのはなくなっていたと思っていた木札だ。


「ごめんなさい。手に取ってまじまじ見ていたんですけど、ちょうどそのときあなた方が来てしまったので」

「本が落ちたのは?」

「慌てて隠れようとしたときに当ってしまって……」


 なんてこった。

 ということは本の内容は単なる偶然だったってわけか。


「幽霊って物理的に物を触ったり動かしたりできるんだな」

「はい。もちろんすり抜けたりすることもできますよ。ある程度自由が効きます」


 便利なやつ。

 まあ転生前にはポルターガイストとか、そういう物理的に干渉できる幽霊の話も聞いたことがあった。


「俺にだけ声が聞こえていたのは?」


 リフィスは恥ずかしそうな表情をした。


「あのときはみなさんを驚かさないようにと姿を消していたのですが……。たぶん、あなた――クリスさんと波長が合っていたからだと思います」

「相性か」

「はい。ふふ、うれしいです。私、こんなに人とお話したの、とっても久しぶりです」

「そりゃよかった。俺もリフィスが()り殺したりする目的でないのなら、話をするくらい付き合えるよ」

「本当ですか!? うれしいっ!!」


 満面の笑顔を浮かべて、ぴょんと飛び跳ねるリフィス。

 その姿は体が透けていることを除けば普通の女の子らしいものだった。


「じゃあ、あの……お友達になってくれますか? 私と……」

「ああ、もちろん。よろしく、リフィス」


 リフィスはばっと俺に抱き着いてきた。


「クリスさん、ありがとうございます! うれしいです! とっても!!」


 その体からは体温は感じられなかったが、俺はその頭をなでてやった。

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