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転生したら魔法の才能があったのでそれを仕事にして女の子と異世界で美味しい物を食べることにした  作者: 鉄毛布
六章

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アセルクリラングの夜は長い

「あふぅー……もう食べきれないよ」

「ふにゃぁ……」


 部屋に戻るなり、きれいに並んでベッドに倒れこんだアンナとエリは、苦しそうな顔を天井へと向けていた。


「まったくお前たちは、食いすぎだっつーの」


 さすがの食いしん坊二人も、あれだけの量は食べきれなかったようだ。そもそもあれらの料理は食べきるように作られていない。残った料理はどうするんだろう。もし捨ててしまうのならもったいないと思うのは庶民感覚が抜けていないからだろうか?

 俺は窓際にイスを寄せて座り、やさしく吹き込む夜風を楽しんでいた。

 そういえば自然と受け入れていたけど、全員で一つの部屋に泊まるってのはユユナたちの計らいなのか?

 まあ一人一人にこの規模の部屋をあてがわれても寂しいだけだからいいんだけど。


「クリス、あれはなんでしょうか?」


 俺のそばに来たリズミナが、窓の外を見て言った。


「ん?」


 星々の輝く夜の空に、月の光を浴びて浮かび上がる白いものが飛んでいた。鳥だ。

 白い鳥はまっすぐにこちらへと飛んでくる。

 部屋の中に飛び込んできた鳥は小さい。スズメくらいの大きさだ。俺の肩に止まって可愛らしく羽をバタつかせた。


「ようやく来たか」

「えっ?」


 不思議そうなリズミナの声。

 次の瞬間小鳥はポンと小気味のいい音を立てて煙になって弾けた。

 そして一枚の紙片がひらひらと舞い落ちる。

 それは術符だった。


「ルイニユーキに預けておいた連絡用の術符だ。俺の血を一滴染み込ませてある。その生体情報を元に、対象のところまで鳥になって飛んで行ってくれる仕組みだ。実験的な試みったが、どうやら成功だな」


 長距離連絡用だから込められている魔力量も多い。メモできる文字量を稼ぐために普通の術符よりは大きく作ってある。手のひらからはみ出す程度のサイズだ。

 書かれていたのはイリシュアールでの近況。俺たちがアセルクリラングへ出発してから、とりあえず平穏無事が続いているようだ。

 あとはまあ俺を心配する内容。できるだけ早く戻って欲しい等々だ。

 俺は懐から一枚の術符を取り出した。これは今の小鳥と同じ術符で、ルイニユーキの血を一滴染み込ませてある。

 アセルクリラングに無事到着して女王たちと友好を深めたことや、心配するようなことは起きていないと返事をしたためた。ユユナの力についてはまあ書かなくてもいいだろう。脅威とはならないのだから余計な心配をかける必要はない。


「お前も何か書くことはあるか?」

「ないですよ。でも……そうですね。今度遠出をするときにはその術符を何枚かほしいですね。妹に手紙を出すのも、今までよりずっと早く、そして簡単になりますよね」


 さすが妹大好きお姉ちゃんらしい。

 俺は笑顔で答えた。


「お安い御用だ」


 そこへ、ドアをノックする音が響いた。

 返事をすると入ってきたのはラーニャとユユナだった。


「どうしたんだ?」

「みなさん、これからご予定はありますでしょうか?」

「いや、特には。夜も遅いし、眠くなるまでまったりしてようかと思ってたけど」


 ラーニャは明るく笑った。


「それならばどうでしょう? これから賭場をご覧になるというのは? もちろん参加も歓迎ですよ」


 賭け事かぁ。

 正直転生前の感覚で言えばギャンブルは怖いってイメージが先行していてあまり興味がわかないんだよな。


「ご案内するのは来賓の中でももっとも高貴なお人方専用の施設です。きっとクリス様にも楽しんでいただけるかと」

「この国の一番の見どころなんですよ、クリスお兄様」


 まあユユナが言うなら怖かったり危なかったりってことはないんだろうけど。


「大負けして破産した王なんてのもいるのか?」


 俺の冗談にラーニャとユユナは笑みを消して視線を逸らした。


「えっ? ……まじでいたりすんのか?」


 どんなマヌケな王なんだそいつは。

 というか王が破産するってそれ、国が吹っ飛ぶってことだろ。

 うーん……アセルクリラングが豊かな理由、わかった気がする。


「だ、大丈夫ですよ。無茶な金額を賭けなければいいだけですし、一度戦争に発展しかけてから上限金額を設ける法律も整備されましたから。ここ数十年はそういった王族はいないということです」


 笑って言うユユナだったがちょっとぎこちない。


「いやでもアンナもエリも食べ過ぎてダウンしてしまってるから……」


 言いかけたところで背後から声。


「なになに? 賭場? わはーーーっ! 楽しそーーーー!」

「行きたーーーーい!」


 復活早いなお前ら!

 目をキラキラさせた二人が俺の背中に飛びついてきた。

 こうなればあとはもう行くしかなかった。

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