先輩わたしに告白してくれませんか?
部室で二人の生徒が静かに本を読んでいた
「先輩ちょっといいですか?」
「……何?」
「わたしに告白してくれませんか?」
「本から一つも目を離さないで急に何言ってんのお前。なんで俺が告白しなきゃいけないんだよ」
「だってほら、わたしいま少女マンガ読んでるじゃないですか」
「ほらとか言われても知らないし、わかんねえよ」
「このわからずや!」
「やっとこっち見たと思ったらなに言ってんの?」
「普通わかりますよ。わたしの頭の中はいま少女マンガ脳なんですよ?キュンっとしたいわけですよ!」
「結局よくわからねえけど、俺が告白したらお前キュンとするのかよ?」
「それは先輩しだいですね。見せてくださいよ先輩のうでを。数々の女の子を落としてきたっていうラノベの主人公みたいな口説き文句を」
「そんなものにうでの覚えはない。それに俺はラノベはあまり読まないからよくわからん」
「先輩いつもかたそうな本読んでますもんね」
「ん?ハードカバーの本はそんなに読んでないぞ」
「いやいや、先輩がボケないでくださいよ。収拾つきませんよ」
「というか、ラノベの告白ってどんなんだよ?」
「んーそうですね、基本ラノベの主人公って周りに自分のこと好きな女の子はべらせてハーレム作りますからねー、本命以外の女の子に自分に告白させるだけさせて全員フリ終わったら時が満ちたと言わんばかりに本命の子に告白しにいきやがりますからね。まぁわたしはそのまえに、ビビッてないで告白しろや!っていつも思うんですよねー悲しい思いする子が増えるだけですからね。あと、ずっと好きだった女の子を落としたくせにパッとでの最初は仲の悪い転校生にどんどん心惹かれれいくんじゃねぇよ!ってわたしは思うわけですよ!両思いだったから余計に悲しくなるだろうが!ってわたしは思うわけですよ!」
「落ち着け、ラノベの主人公への悪口はその辺にしとけ。いろいろ危ないだろ。お前がラノベのどんな告白がキュンとするかを聞いてたはずだろ?」
「あーそうですよ、あいつらクズが多いくせに最後はかっこいい言葉で決めてくるんですよ!そんなのもう全部許してしまいますよ!あぁそんなにその子が好きなら、そんなにその子を思ってるなら、もう何があったとしても、どんな経過をたどって来たとしてもそれが正しかったって思わされますよ!悔しいですけどキュンとしてしまいますよ!」
「結局、どんな告白がキュンとくるのか答えてくれないんだな……一回深呼吸して落ち着け、はい吸ってー」
「すー」
「はい……からさんが通る」
「あーっわらいじょうご……!」
「ハイカラジャジャ馬!」
「いや先輩そんな古い少女マンガのネタわかる人いますか?まぁわたしはわかりましたけど」
「大正くらいのマンガだったっけ?」
「古すぎますよ。それは舞台になってる時代です。あと、先輩が忍役なんておこがましいです。激おこです」
「そんなにか……?いやまぁ、自分でも伊集院っぽくはないとは思っているけど……逆にお前はジャジャ馬ぶりが紅緒らしいよな。」
「わたしはあそこまで男勝りじゃないですよ。それにわたしは紅緒みたいに誰にでも食ってかかって騒動を起こしませんよ。わたしが食ってかかるのは先輩だけです!」
「そんな特別はいらん。蘭丸くらいにおしとやかになれんのかお前は……まぁいいか、で、どんな告白がいいんだ?」
「へ?何のことです?」
「忘れるなよ。お前がキュンとしたいていうから、どんな告白がキュンとするか聞いてたんだろう?」
「あーはいはい!思い出しました!先輩が『ハイカラさんが通る』の話をしたせいで忘れてたじゃないですか!」
「そもそもの話題をふってきたやつが忘れるなよ。それに、お前の話がそれてラノベの主人公の悪口を言い出したからいったん話題を変えたんじゃないか」
「でも先輩、それなら最初の深呼吸だけでもよかったんじゃないですか?」
「…………」
「黙って目をそらさないでください」
「昨日、『ハイカラさんが通る」を読んだから誰かとその話をしてみたかったんだよ」
「想像以上に理由が可愛いです!しましょう!今すぐ!わたしの話はもういいですから!」
「そういうわけにはいかんだろ。キュンとしたいんじゃないのか?」
「いやもう、十分にキュンとしましたから!先輩のその可愛い理由で!」
「でも、告白されてキュンとしたいって話だっただろ?」
「いや、そうでしたけど。というかなんで先輩ちょっと乗り気になってるんですか?最初すごい嫌そうにしてたじゃないですか」
「興がのった」
「なんでそんな伯爵みたいな言い方なんですか……」
「まあいいだろ?で、ラノベのどんな告白がキュンとするんだよ?いやまて、主人公の悪口はなしだぞ!」
「わかってますよ。とは言ったものの、わたし今読んでいたのって少女マンガなのでラノベの告白とまたちょっと違いましたね。すいません」
「じゃあ今までのくだりなんだったんだよ……」
「先輩の可愛いところをみるためのわたしの作戦です」
「そんな明らかな嘘をつくな」
「さぁ、本当に嘘でしょうか」
「思わせぶるな」
「でもぉ~わたしぃ~先輩のぉ~可愛いところが~見たくってぇ~」
「可愛いこぶるな」
「うるさいですよ先輩!可愛いは正義です」
「自分で言うな」
「可愛いかは半疑です」
「ちょっと自信なくしてんじゃねえか」
「まあとにかくやってみましょうか先輩。ちゃんとキュンとさせてくださいね」
「そういわれても、少女マンガもあまり読まないからなあ。壁ドンでもすればいいのか?」
「いや先輩マジでそういうのはいいんで」
「ドン引き!?」
「いや、あんなの実際に先輩にされたら、鼻で笑っちゃいますよ…………フッ」
「お前いま想像して笑わなかったか?」
「いや、すいません、先輩の壁ドンはマジでないっすね」
「あ、そうか……」
「そんなマジでへこまないでくださいよ先輩。そもそもわたしあんまり壁ドンみたいな上から目線の告白が好きじゃないんですよ。だから先輩が嫌ってわけじゃないんですよ?」
「なぜかお前に慰められてしまったことが気になるが、それならどんな告白がいいんだ?」
「というか先輩、昨日、『はいからさんが通る』を読んだなら、その中の言葉でいいんじゃないですか?」
「確かにそうか。いや、でも、あんな恥ずかしいセリフ言うのか?」
「告白なんて恥ずかしいものですよ。だいたいあんなの少女マンガのなかじゃかなり言いやすいほうですよ。もっと歯の浮くようなセリフたくさんあるんですよ?」
「そうなのか?」
「そうですよ。さあ早くわたしをキュンさせてください先輩」
「わかったよ」
「フリだとしても心こめてくださいね。やっぱり想いがあっての胸キュンですからね」
「わかったわかった」
「…………」
「…………」
「あの先輩黙ってないで早く言ってくれませんか?なんか本物っぽくて緊張するんですけど。照れてるんですか?」
「こ、言葉が思い出せなかっただけだ」
「嘘つかないでくださいよ。さっき自分であんな恥ずかしいセリフって言ってたじゃないですか。やっぱり照れてますね?ま、それだけ想いをこめてくれているってことですかね」
「うるせえよ」
「ふふっ、ちゃんと言ってくださいよ?先輩」
「わかってるよ」
「…………」
「好きだったよ。もうずっとまえから」
「…………んふふ」
「笑いこらえてんじゃねえか!」
「あはははは」
「爆笑してるし……」
「はぁーあ、笑いました」
「悪かったな面白くなって、キュンとしてないみたいだし」
「いえいえ、先輩、けっこうキュンとしましたよ?わざわざセリフを自分の口調に変えて言ってくれているところとか。想いこめてくれた証拠ですね」
「いやまぁそれは……」
「正直、嬉しかったっす」
「…………」
「まぁでも、おかしさのほうが強かったですけどね」
「あっそう……」
「じゃ次いきますか」
「もう、絶対やらねえよ」
「えー!なんでですかー」
「お前が笑うからだろ」
「え、じゃあ先輩、真面目に聞けばしてくれるんですか?」
「それはそれでいやだな……」
「でしょ!やりましょうよ!興がのったって言ったの先輩ですよ」
「今日はさめたんだよ」
「ちょっとうまいですね。わかりました。仕方ないです、今日、興がさめたのなら後日にやりましょう」
「言葉尻をとらえんじゃねよ。後日も嫌にきまってるだろ」
「んーまぁ、わたしも後日は先輩のちゃんとした告白のほうを聞きたいですしね」
「いや、だから告白はもういいだろ……ん?ちゃんとした?」
「そういえば先輩、なんでいつもかたそうな本を読んでいるのに『ハイカラさんが通る』なんて古い少女マンガ読んでいたんですか?もしかして家では少女マンガばかり読んでいるとかですか?」
「ん?あーいや、ただ父親に借りたい本を探しに本棚をあさっていたら見つけただけのことなんだが」
「お父様のものだったんですか……いや、いいんですけどね。しかし先輩、マンガの話をしたかったくらいですし、おもしろかったんですよね?」
「まぁそうだな、あまりマンガを読んだことはなかったがいいものだな」
「じゃあ今度から先輩もマンガ読みましょうよ!わたしのマンガ貸しますんで!」
「まぁたまにならな」
「じゃあ今度もってきますね。あ、今読んでるこのマンガ貸しましょうか?」
「いや、今はいいよ。それよりだ」
「それより、なんです?」
「『ハイカラさんが通る』の話をしよう」
「ふふっそうですね、いいですよ。わたしに語らせると長いですよ」
「おてやわらかにな」
「とりあえず好きなキャラからいきましょうか」
「無難な質問だな。そうだな、牛五郎かな?」
「しぶいですね先輩!わたしはやっぱり青江冬星ですかね!」
静かな部室は二人の声でにぎやかになっていた。
わたしもキュンとしたいです。
読んでくださってありがとうございました。




