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彼女は子どもが嫌い

 彼女は笑顔で俺にいった。

「子どもなんて大嫌いよ」


「なんで?」


「そりゃ、うるさいもの」


「そこは無邪気な可愛さと思うけどなあ」


「ちがうわ。あいつらが騒ぐのは無邪気じゃなくて無意味よ。意味もなく叫び回っているからうざったらしいのよ」


「あらら」


「わたしは意味のないことが嫌いなの。子どもなんて意味のないことしかしないじゃない。無意味の塊だわ」


「無意味の塊って……でも、何も知らない子どもに意味を求めるのは酷なんじゃないか?無意味というなら子どもは無知だろ。まだ発展途上なんだよ」


「別にわたしは子どもに何も求めていないわ。ただ嫌いなものを嫌いと言っているだけ。未熟だからすっぱいすだちに、すっぱいのが嫌いだから甘くなれって求める人なんていないでしょ?そのすっぱさを好きな人もいれば嫌いという人もいるのと同じよ。わたしは子どもの無知が嫌い。無邪気が嫌い。無意味が嫌いというだけの話。そして、そのわたしの嫌いなところを好きだと言う人もいるだけの話よ」


「子どもを嫌いすぎるだろう。大人気ないやつ」


「え?わたしが大人気なやつだって?やーね、急に褒めないでよ。」


「会話でそんな間違いするわけないだろ!」


「声を荒らげないで。そんなのだからあなたはいつも大人気(だいひとけ)ないのよ」


大人気(だいひとけ)ないってなんだよ……人払いの結界でもはられているみたいだな」


「そうよ!」


「そうだったの!?」


「術者はわたし」


「俺に誰も近寄ってこないのはお前のせいかよ!」


「嘘よ。自分の人気にんきのなさをわたしのせいにしないでちょうだい」


「ぐっ……」


「それにそんなことができるなら自分に子ども払いの結界をはるわよ」


「どんだけ嫌いなんだよ。そんなのでお前が子どもを産んだ時どうするんだよ」


「何それ?プロポーズのつもりかしら?ごめんなさい、そんな陳腐なプロポーズを言う人にわたしの一生は奉げられないわ」


「勝手に勘違いして勝手にフるんじゃねぇよ!今の話のどこにそんな要素があんだよ」


「言葉のうらを読んだのよ」


「うら?」


「あーあ、んん。どんだけ嫌いなんだよ(そんなところも好きだけど)。そんなのでお前が(俺の)子ども産んだ時どうするんだよ(とりあえず、今夜どうだい?)」


「……お前、俺のことイタリア人とでも勘違いしてないか?しかも最後あきらかに結婚じゃなくてホテルに誘っているだろ。それに、声マネも下手だし」


「あなたがイタリア人だって?冗談にならないわ。はやくイタリアに行って謝ってきなさい。国際問題になるわよ。それとわたしの声マネはあなたよりもあなたらしかったわ」


「なんで俺の声マネにそんな自信あるんだよ……俺より俺らしいならそれはもう俺じゃねぇよ……。それよりも、え?なんで俺そんなに怒られてるの?」


「あなたまだここにいたの?早くイタリアに行って謝ってこないと戦争になるわよ?」


「本気で言ってたのかよ!?」


「あたりまえよ。あなたみたいな童貞クソチキン野郎と同じにされたら、イタリアじゃなくとも戦争をおこすわ」


「あの急に罵倒がきつくないですか?」


「だまりなさい。童貞クソチキンロリコン野郎」


「ロリコンではねぇよ!」


「あらよかった。てっきりそうなのかと思ってたわ。童貞クソチキン野郎(*ロリコンではない)に訂正しとくわ」


「その注釈は絶対いらないだろ。要するに何が言いたいんだよ?はっきりしてくれよ」


「言いたいこと?この上なくはっきり言っているでしょ。あなたが童貞クソチキン野朗ってことを。それ以外は何も言いたくないわ。」


「いや、わからねぇよ。ただ俺が罵倒されていること以外は」

「鈍いひとね。童貞鈍感クソチキン野郎って呼ぼうかしら?そこまでいくと、わたしの書くラノベのキャラのネタにもならないわ」


「お前ラノベ作家だったの!?」


「タイトルは『異世界ケシバト戦争~唯一の特技が世界を救う!?~』よ」


「ダサいけどちょっと気になる!」


「失礼ね、ダサいとか言わないでよ。わたしの考えた絶対売れないラノベタイトルを」


「それならダサくてもいいだろ」


「そうよ。そしてダサくて売れないタイトルを売れる本にするのが作家のわたしなのよ」


「わたしなのよって……そもそも作家が嘘だろう」


「嘘かどうかはわたしが決める」


「かっこいいだけのこと言うんじゃねぇよ」


「まぁ嘘なのだけれど」


「お前が決めたならそうなんだろうな……じゃなくて、なんで俺が罵倒されてるのかって話だっただろ!」


「自分が罵倒されている話に戻すなんてあなたエムなの?」


「なんで罵倒されているか聞いているところにさらに罵倒を重ねないでくれます?」


「呆れた。本当にわかってないみたいね。童貞クソチキン野郎だけじゃなくて鈍感クズブタ野郎だったのね」


「いや、エムでもないから、ブタやろうって……」


「わかった。あなたのためにもっとはっきり言ってあげるわ。こころして聞け」


「命令形……」


「あなた、毎日のようにこんな美少女と仲良く話していて何か思うところはないわけ?いつもどうでもいい突っ込みばかりして、本当に突っ込んだ話をしようとしない。あまりわたしを待たせるなってことよ?童貞クソチキン野郎」


「え、いや、あの……」


「もっとはっきりいってあげるわ……」



「わたしのこと、どう思ってる?」


「……………………………………」


「……ゴミ野郎。……もういい、帰るわ」


「なぁ」


「何?もうおそむっ!?」






「ふぅ、口を塞いで黙らすなんて意外だったわ」


「こんな少女マンガみたいな告白するつもりなかったんだけどな……」


「まって、言葉でちゃんとききたい」


「え!?いや、だってキ……」


「童貞クソチキン野郎……」


「うっ……」


「…………」


「すきだ」


「…………」


「子どもが嫌いすぎるところも、やけに高慢だし自信家なところも、口を開けば嘘か暴言しか言わないところも、全部、好き」


「それだけ聞くと何でわたしのこと好きなのか理解できないわね。やっぱりあなたエムなんじゃないかしら?」


「告白くらい真面目に聞いてくれませんか!?」


「んふふ。まぁあなたがわたしを愛してることは伝わったわ」


「愛してるって……」


「あってるでしょ?」


「…………」



「そういえば、わたしがあなたの子どもを産んだ時どうするかって話だったわね」


「違う。それはおまえが勝手に読んだ裏の話だ」


「ふふっ。まぁいいじゃない。わたしが子どもを嫌いな理由覚えてる?」


「やることが無意味だからだろう?」


「そうよ、馬鹿のくせによく覚えてたわね」


「あのいちいち、暴言はくのやめてもらえません?」


「あら、そういうところが好きなんでしょ」


「調子にのってるなぁ」


「うれしいもの。話を続けるわね。そう、子どもは無意味だから嫌いよ。大嫌い。」


「…………」


「……でも、自分の子どもは違うわ。だって意味があるもの。わたしが意味をあげるもの。何をしても愛するもの。泣いても、叫んでも、無知でも、無邪気でも、それは無意味じゃない、すべてをわたしが愛するから。特別扱いだってするわ。自分のこどもなんですもの。もしそれがわたしの大好きなあなたと二人の子だったなら、なおさら、ね」


 彼女は笑顔で俺に言った。


すだちって完熟するとちゃんとオレンジ色になるんですね。

読んでくださりありがとうございました。

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