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ディスオーダー  作者: 黒狼 優貴
2/2

ミミ

「ユミコ!私たち、ずっと友達だよね!」


 友達のミミに、嬉しそうにそう言われ、私はコクンとうなずいた。

 そう、私とミミは友達。


「生まれる前から友達だったんだよ~」


 と、夢見がちなことを言われた時はさすがに苦笑しちゃったけど。

 もしも本当にそうだったのなら、すごい運命を感じる。

 私とミミが、幼い頃からずっと一緒だったのは確かなのだから、きっとこれからも何があってもずっと一緒なんだ。

 世界で1番の友達であるミミ。

 私と友達になってくれて、私と出会ってくれて、本当にありがとう!


「ねぇ、ミミってさ、何を言っても無視するよねー?」

「うん。信じられなーい」


 午前の学校の授業を受け終わり、今は昼休み。

 ご飯を食べようと口を開けると、教室のどこかからミミの悪口が聴こえた。

 大切な友達の悪口を言われ、私はカッと頭に血がのぼる。


「……ううん、いいの。いいからね、ユミコ」


 ミミの悪口を言う女子生徒に、何かしら言ってやろうとすると、私の隣にいたミミはそれを引き止めた。

 どうして?と聞くと、ミミは微笑む。


「周りの人のことなんて放っておけばいいのよ!私はユミコがいてくれるのならそれで十分」


 やりきれない気持ちもあったけれど、ミミにそう言われ、私は何も言葉を返すことが出来なかった。

 それからというもの、女子生徒は暇さえあればミミの悪口を言う。

 ミミが近くにいても、ミミの側に私がいて、女子生徒をジッと睨んでいても、女子生徒は気にせずにミミの悪口を言う。

 一種のイジメだ。

 でも、ミミに何もしないでと言われた以上、私には何も出来ない。

 女子生徒を睨み、黙って耐えることしか出来ない。

 大切な友達なのに、私はミミのために何も出来ないのだ。



 そんなある日、ミミは物言わぬ人形になってしまった。

 ピクリとも動かない、一言も話さない……そんな、人形に。

 ……死んでしまったんだ。

 死んでしまったんだ、ミミは。

 ずっと一緒だったミミは、私の前から、私の側から、いなくなってしまったんだ……。


 許さない。

 そりゃ、私だってミミのために何も出来なかったけれど。

 「許さない」だなんて言う権利、私にはないのかもしれないけれど。

 1つの命を奪った女子生徒の方が、私の何倍もひどい。



 ――だから私は、ミミの命を奪った女子生徒に、今から罰をあたえようと思います。



「なーに?ユミコ。こんなところに私達を呼び出して」

「……」

「あははっ!何も言えないよねぇ。だってアンタ、“もう”人間じゃないんだから」

「う……ぐぅ……」


 女子生徒の1人にそう言われ、私のクチからは変な言葉が漏れた。



「アタシ、未だに信じられないんだよねぇ。


アンタ、交通事故に遭ったじゃん?


身体がバラバラになったじゃん?


『その身体の一部一部に生命が宿ったから仲良くしてやってほしい』


って、ハゲ教師から言われた時、『ハァッ?!』ってなったんだから。


きもちわりぃんだよ、お前。


お前も、鼻も、口も。


当然、ミミも。


きもちわりぃんだよ」



「ユミコ。アンタ自身がさ、死んでくんね?」



 その瞬間、プツンッと、頭の中にある何かが切れたような音がした。

 交通事故により、バラバラになってしまった私の身体は、特殊な液体が入った水槽の中で生きてきた。

 授業を受ける時は、教室の後ろに私が浸かった水槽をおいて、みんなと同じように勉強をする。

 そして、生まれる前からずっと一緒だった口や鼻、ミミ

 事故に遭って身体の1つ1つのパーツに生命が宿った時、ビックリはしたけれど、お話ができて……友達ができて、私は嬉しかったんだ。

 そんな友達を、あなたは殺した。

 ミミを精神的に追い詰めて、刃物より鋭い言葉のナイフで殺したんだ。


「ちょっ……ユミコ。アンタ、水槽からでて大丈夫なわ……け……ぐぇっ……うぇぇぇ……」


 怒りに身を任せ、水槽からでた私は、一直線に彼女らのもとへ行こうとズルズルとはいずり寄る。

 水槽から出た私の身体は、ドロドロになって溶けていく。

 そんな私を見て、(気持ち悪い)とでも思ったのか、彼女らはその場で嘔吐する。

 彼女らが顔を蒼白させていることなんて気にもしないまま、私は彼女らのもとへとはいずり寄った。


「くんな!くんなって……!いやぁ……っ!」

「私、知っていた」


 水槽の中のクチが言う。


ミミ、泣いていた。『もう嫌だ』って泣いていた。だから……」


 私の手が、彼女らのうちの1人の首に触れた。


「私も、あなたが『嫌だ』って言っても、やめないことにするね」


 水槽の中のクチはニヤリと笑う。

 私の手は、彼女の首を掴み、ギリギリと音をたてていく。

 苦しそうな声を出す彼女だけれど、私はやめない。


 だってあなたもやめなかったものね?


 ミミの心の声、分かっていたのに無視をして、ずっとイジメ続けていたのでしょう?


 だから私も、あなたが「やめて」、「もう嫌だ」って言っても、やめないことにするね。



「ね?私のアタマ



END.

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