トーコさん珠璃と出逢う①
スタバでコーヒーを買い、なるべく店の隅に移動して、恐々と婦警さんに用件を尋ねる。
「えーと、聞きたい話って何っスか?」
相手は超絶美人のパイメガ婦警さんだ。
……スか?、……スよね、と語尾にスをつけると、目上の人相手の話し方になるよな?
少なくても俺的には、もうサイッコーに気をつかった言い方なんだぜ?
「まず……自分は警視庁刑事部捜査一課の藤井です」
婦警さんはそう言って警察手帳を開いて見せる。
「婦警さんの名前は……藤井陶子さんですか。警部補!? そんなに若いのに」
驚くと、ニッコリ微笑が返って来た。
「先日、警視庁の刑事が殉職した事件について捜査を行っています。その件について何かお心当たりはありますか?」
「あ、あの……」
「はい?」
「その刑事さんがどうして亡くなったのかは知らないっス。けど、その人とはゲームで知り合ったんで、何度か一緒に遊んだことはあるっス」
「ゲームですか? どのようなゲームでしょうか?」
「えっと、あの《Unreal Ghost Online》ってネトゲなんスけど、知ってます?」
「亡くなった刑事からはそのようなゲームの名前は伺ってませんでした。どのようなゲームなのか伺ってもよろしいでしょうか?」
婦警さんは小首を傾げながら、教えて!!って感じでの表情で俺に尋ねてくる。
ふぉぉおおおお、なんてイロっぽい婦警さんなんだ!!
さすがパイメガ婦警、一部のスキも無いって感じだぜ!!
合格!!
「こいつみたいなサングラスを使ってアクセスするネトゲなんスけど……」
俺は婦警さんにも見えるよう、顔からサングラスを外して見せた上で《Unreal Ghost Online》についての概要を婦警さんに説明する。
婦警さんは俺からの説明で、彼女のセンパイ刑事と逢ってた人間がもう一人居ることを聞くと、その人物もココへ呼び出して欲しいと俺に頼んで来た、なのでメールで逢えないかを打診する。
その人物は珠璃という名で、俺と同い年の結構イイ線をいく可愛い娘だ。
彼女ともUGOで知り合った。それ以来、何度かパーティーを組んで遊んでいる。
しばらくすると、メールでOKの返信が返って来た。
「今、西国分寺駅だっていうから、ここに来るまではもう少し時間掛かるみたいっスよ」
「なら、あたし達も新宿駅へ移動しましょうか、その方が早いでしょう」
新宿駅へと移動しながら、俺はメールで新宿駅西口での待ち合わせを連絡する。
俺はサングラスを掛けなおし、隣のパイメガ婦警さんをチラチラと盗み見しながら周りをよく見てみると、すれ違う男ドモの振り返る率がハンパない。というかモレなく彼女を見ていくのだ。
道行く男どもが全員振り返るようなイイ女連れは、俺の人生で初めてだった。
すげー、気分イイ。
呼び出したもう一人の人物……珠璃も可愛いので一緒に歩くと注目を受けるが、ここまでヤローどもが振り返るのはコレまで経験が無いゼ。
メトロ食堂街のフルーツパーラーに入り、珠璃が来るのを待つ。
一応目の前にはジュースを置いてあるが、さっきコーヒー飲んだので手をつけてない。
婦警さんはさっきも買ったコーヒーに口を付けなかったが、ここでも買ったまま放置してる。
勿体無いなー、とは思うがこれも婦警さんのおごりだしスルーしとこ。
婦警さんからは俺が亡くなった刑事さんと何をしてたか、どのように知り合ったのか?
そして肝心のアリバイの有無を聞き取り調査された。
もっとも、知り合ったキッカケを正直に言いはしなかったけどね(汗
それがすむと、次に《Unreal Ghost Online》についての詳細を尋ねて来る。
「そのサングラスは普段から掛けてるの?」
「そうっスね、大抵掛けてるかな? ……あれ?」
「?? どうかしましたか?」
「いえ、あの……」
変だな?UGOプレイヤーでもない人が、俺の顔に掛けてるサングラスが見えるなんて。
「えーと、婦警さんはこのサングラス見えてるんですか?」
「?? ええ、普通に見えるけど? どうかしたの?」
「《Unreal Ghost Online》のプレイヤーじゃないとこのサングラスは見えないハズなんスよね」
「……そうなの? たぶん……プレイヤーだけが見えるんじゃなくて、そのサングラスを知ってるかどうかで見える、見えないが分かれるんじゃないかしら? 自分はセンパイの刑事がそのサングラスを掛けてたのを知ってたし、さっき柏木さんからもサングラスの事を聞いたから」
そんな物なのかねぇ? 俺はプレイヤーだからその違いはもうすでに判りようが無いな。
目の前で普通の眼鏡を掛けてる婦警さんはイマドキ見かけない大きな丸いレンズ越しに、俺の顔をじっと見つめている。
ぉおっと、そんなどうでもイイこと気にしてる場合じゃないな。
「そんなモンなんですかね。このサングラス掛けてても普通は気付かれないし、どうやら俺の素顔が見えてるみたいなんスよ、これまで授業中でも先生から注意を受けたことは無いっスよ」
「なるほど、その機能も興味深いですが、とりあえず《Unreal Ghost Online》の詳しい話を聞かせてください、さっきより細かい部分を知りたいです」
概要はここ来るまでに語り終えたので、もう少しゲームの詳細部分に踏み込んだ説明を行う。
このサングラスを掛けないと、AR表示が見えないこと。
なぜか持ち主を判別するらしく、他人に貸してもそのヒトにはAR表示が見えないこと。
俺のサングラスを婦警さんに貸して、やっぱり何も見えないことを理解してもらえた。
《守護霊》のこと。
《霊》《虚霊》のこと。
ゴーストの強さは『レベルxレシオxランク』で表現されていること。
Lv10ユニーク・エリート級などと言い表している。
レベルの上限は、50であること。
レベルが2倍になると強さは4倍になること。
これを頭に入れて敵とのレベル差を考え、戦うかそれとも逃げるのかを決めるのだと教える。
レベル1を基準に考えた時、↓↓↓単純に、このような強さ関係になる。
Lv1 x1
Lv2 x4
Lv4 x16
Lv8 x64
Lv16 x256
Lv32 x1024
低レベルの時には、1⇒2へのレベルアップだけでも、《守護霊》が4倍の強さに成長するので、すっげぇ自分が強くなった気になれるのだ。
さらに、強さはレシオ(倍率)によっても変化する。
マイナー x1/2
ノーマル x1
メジャー x2
ユニーク x4
守護霊はレシオがメジャーなので、同レベルのノーマルゴーストより2倍強いのだそうだ。
また、強さはランクによっても決まり、ランクが一つ上がると強さは4倍となる。
同じレベルでもランクが高い方が4倍強いことになる。ランクは弱い順から、
ノーマル x1
エリート x4
キャプテン x16
コマンダー x64
ジェネラル x256
ヒーロー x1024
レジェンド x4096
そんなワケで、俺の《アリアンロッド》の強さは、Lv10メジャー・ノーマル級となる。
独り(ソロ)で戦うならノーマル級を、ペアや少人数で戦うならエリート級を、パーティで戦うならキャプテン級を狙うのが経験値を稼ぐのに効率的とゲームチャット上では言われている。
もっとも、俺はキャプテン級以上は見たこともないけどねっ はっはっは。
つーか、そのランクはソロじゃ勝てねぇよ。
ゲームの詳細をあらかた話し終えた俺は、この婦警さんとよりいっそう仲良くなりたい一心で、なんとか個人的な話へ持っていけないかと四苦八苦していた。
俺と、もうすぐここへ来る珠璃のそれぞれの《守護霊》レベルなんかを話していると……
「あーっ!! 何で他人のレベルを勝手に教えてんのよー」
唐突に店内に女の子の声が響く。
「あ、きたきた。いいだろ?どうせ教えるんだからさ」
「そういう問題じゃないでしょ? たかがレベルと言えど、あたしのことを勝手に他人へ教えないでよね!」
「はじめまして、警視庁の藤井です」
「うっわ、綺麗な婦警さん。 はじめまして甲田珠璃です。遅れてすいません。部活仲間との用事がなかなか終らなくて……」
珠璃は国籍日本だけど、米国生まれの白人だ。
まだ幼い頃に母親が離婚して日本人と結婚し、日本に移り住んだという。
今じゃ日本人(俺)より日本語が達者で、口げんかじゃ勝てそうにない。
髪が赤毛っぽい金髪美少女で、胸なんてロケット並みだ。
背も高いし、アメリカン・ビューティーを幼くした感じって言えばイイのだろうか?
珠璃もパイメガ婦警さんも身長の高さは同じくらい。たぶん170cmを越えるくらいだろうか?
俺の身長が180cmなので並ぶとちょうどいい感じだぞ。
「さっそくだけど話を聞かせてもらうわね? わざわざ此処に来てもらったのは……」
俺へ質問した内容と同じ事を再度、今度は珠璃からも聞く婦警さん。