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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
48/51

トーコさんと最高難易度ダンジョン


「さぁ! ちゃちゃっと戻ってあの蛇を倒すわよ!」


 そう言うなり珠璃に顔を向ける。

 俺はというと、いまだ珠璃にダッコされたままだ/////


 トーコさんは俺をチラ見して


「珠璃、お楽しみのところ悪いんだけど、足の治療をするから天太を降ろしなさい」

「はぁ~い、と~こさぁん」


 ダッコしたままゆらゆらと身体を揺らしてた酔っぱらいの珠璃は、俺を地面に置く。

 続けてトーコさんは、珠璃も地面に座らせた。


 トーコさんは珠璃の失われた右足部分を自分の手で確認しながら、


「身体の部分欠損の回復は……《レイディ》の回復スキルだと10万ポイント必要で、《エルジェーベト》の超回復スキルだと12万ポイント必要か、将来的にはエルの方が安上がりになりそうだけど、今日のところはレイディで癒した方がいいわね」


 トーコさんとは珠璃の足を挟んで反対側の傍らへと《レイディ》に片膝をつかせ、それから、珠璃の右足の太もも、今はエルジェーベトの右足へ手をかざす


「うふふ、と~~~こさぁぁ~ん」


 エルジェーベト(珠璃)がトーコさんに噛み付いた。

 おい! 珠璃? おまえ何やってんの!?


「んぐんぐんぐ……」


 咽を鳴らしながらトーコさんの血を吸うエル(珠璃)


「ぷはぁぁぁ、トーコさんの処女の血、すごぉぉいおいしぃ……」


 なぬっ!?


「こら、何ヒトの個人情報バラしてんの」


 珠璃は吸うだけ吸うと、こてんと横になって寝てしまった。

 トーコさんは苦笑しているようだ。


「参ったわね、【霊障無効】だからって油断してると、自分の守護霊には通じない、か」

「処女?」


 俺がそうつぶやくと同時に、トーコさん(巨鬼)にガッシと頭をにぎられる。


「忘れなさい」


 いてーーーーっ

 痛いって! 頭が割れるから!


 巨鬼の陰でトーコさんの顔はハッキリ見えないけど、おそらく氷の微笑を浮かべてる。

 ごつい腕をペシペシ叩いてギブアップをすれど、なかなか許してくれなかった。




「まったくとんだ寄り道だわ、急がないとね」


 トーコさんがそう言うなり、レイディは珠璃の右足に『ふ~~』と息を吹きかけた。


 その息は真っ白で、氷の吐息だ。

 エルジェーベトの右足を全て凍らせて、けれど、一瞬で氷が砕ける。

 特に変わったようには見えないけれど……


「今のスキルは……? 10万ポイント?」

「さすがに失われた片足を元に戻すにはそれ相応の代償が必要となるわけ、この場合はイケニエとしてHP10万点が必要ね」


「HP10万!? アリアンロッドとメルカルトのHPはそんなに無いですよ」

「別に一人で一度に支払わなくても良いし、普通は仲間で分割するんだけど。今回は、あたしの経験値を代償にしといたから」


 俺はサングラスを上にズラして見る。


 !!


 失われてしまったハズの珠璃の右足が、そこにはしっかりと存在していた。


 傷一つない綺麗な太もも。

 そこに無いのは、履いてた靴とソックスくらいで。

 最初から失われてなんか居なかったのだと言われれば、それで納得してしまうくらいまったく違和感が無い、珠璃が生まれた時から持ってる本来の右足に見える。


「スキル《愛のため息(サイ・ウィズ・ラブ)》よ、レイディの守護霊称号は《氷の万華鏡アイシー・カレイドスコープ》。モノに永遠(エターナル)属性を付与できるし、氷柱が砕けて傷ついても氷がまた成長していくように治癒属性も持ってる。それと幻影系と攻撃も得意ね」


 なるほど、レイディは万能型魔法ユニットって感じなのかな?


「え~と、トーコさん、ありがとうございます。俺のドジで10万も」

「レベル10であの蛇相手は無茶を通り越して自殺行為よ、よく無事だったわね」


「直接対決するつもりは無かったんですけどね、気付いたらそうなってて……でもトーコさんに会いたい一心で頑張りましたからっ」


 お!? 決まった?俺。


「ばっかじゃないの? 嬉しくもなんともない」


 がくっ


「(小声)珠璃をかばって、それでも生き残ったのはえらいけどね」


 え?

 小さくて聴こえなかった。


「ほら、さっさと足を出しなさい」

「いて! もっと優しくプリーズ」


 トーコさんは俺の左足を乱暴に掴んで引き寄せ、傍にいるレイディが『ふ~~』と息を吹きかけてくれた。


「うはv トーコさんの愛げっと!」

「残念、今のはスキル《喜びのため息サイ・ウィズ・プレジャー》でしたv 時間を掛けて少しずつ治療するスキルで、いわゆるリジェネレーションね」


「ちぇっ~、でもトーコさんってば、ビッグ・マグナム使ったでしょ? それって俺の愛を受け入れてくれたってこと?」

「じょうだんでしょ? 天太とは一生セックスしないって宣言よ」


 ガ~~~ン!!


「御預けなんてひどいっ 純真な男子高校生の心を弄ぶの反対!」

「はいはい、さぁ、さっさと珠璃を背負って! 急がないと蛇が逃げちゃうわよ」


 その声で、俺は急いで珠璃を背負って立ち上がる。

 アニキの仇、あの蛇を逃しちゃ意味がない。


 珠璃は幸せそうに、にへらと緩んだ顔で寝ている。

 背中のバランスを取る為に軽くゆすっても目覚める気配が無い。


 ダンジョンの奥へと歩き始めたトーコさんを追って俺も歩き出す。

 すげー、もう足は痛くもなんともないぜ。


「いつかトーコさんの処女は俺がもらいますからね」

「そういうのは口には出さないで心の中にしまっときなさい、それに珠璃はどうするの?」


「もちろん、珠璃も」

「はぁ、どうしてこんな変態小僧と知り合っちゃったのかしら?」


 トーコさんは首を振っているけれど声に嫌そうな響きは無かった。……と思いたい。




「あの蛇に勝てます? レベル30のユニーク・レジェンドですけど?」

「あたしのレイディと煉獄丸はともにレベル75のユニーク・ヒーローよ、単純な戦力なら互角なんだけど……問題ないわ、奥の手を使うから」


「そのぉ……そもそも、トーコさんがあの(・・)レイディなんですか?」

「うん」


「PKクラン《ビシャス・クロス》リーダーの?」

「うん」


「新宿で《ビシャス・クロス》のメンバーと会いましたよね?」

「のっけに警察手帳を見せて、あたしのリアル情報を突然教えたから皆驚いてたわね、これまで刑事だってことは伏せていたから」


「昨日レインボウ・ブリッジで俺たちを助けてくれた?」

「うん、そうよ。 朝の新宿駅で天太と待ち合わせて会った時に、こっそりレイディを張り付かせといたの。役に立ったでしょ?」


 だから俺たちが危なくなったとき、レイディで助けに入ることが出来たのか!!


「……もしかして、トーコさんはサングラスしてなくても守護霊レイディを操れる?」

「あたしの眼鏡のフレームは、元々レイディを操るサングラスのフレームなの。そのフレームに普通の眼鏡のレンズを入れてるのね、レンズが無くても機能するのよ、これは」


 !!


 俺の背中を冷や汗が伝わる。


「えっと、その……」

「出会った時の盗撮の件なら、見えないフリしてただけで最初からバレてたわよ」


 あうあう


「ふふ、その件はもういいわ。初心者のフリしてたら得意そうに色々教えてくれたダレかさんの顔がとっても面白かったからv」


 トーコさんはヒトが悪いよ、まったく。

 まるっと丸見え大作戦のことは気付かれないようにしようっと。


 トーコさんは体育会系だから、もういいと言ったことは本当にもう良いのだろう。

 俺は知りたいことを続けて尋ねる。


「でも、トーコさんはレイディとエルジェーベトに、その鬼を含めて3体もの守護霊を操ってるじゃないですか、いったいどうやってるんですか?」

「こっちのエルジェーベトのサングラス右側のレンズは、レイディのサングラス右レンズと取り替えてるの。それで2アカウントを同時に使いこなせるように改造してるわけ」


 2アカウント使い、左右レンズでそんな小細工が出来るなんて知らなかった。


「そしてこの煉獄丸はね、あたしと一心同体なの。スキル《ワー・ヴォイド》 守護霊とひとつとなり、その能力を全て使うことが出来る技……というか状態ね」


「ずっとそのままなんですか?」

「使ってる本人が解除しない限り、そうなるわね」


 俺は首を回し、背中ですやすや寝ている珠璃へ視線を投げかけた。


「《ワー・ヴォイド》はヒトと守護霊のイイトコ取りするスキルだからデメリットは生じない。 珠璃もバンパイアの力を昼間でも発揮できるようになるわ」


 あの超人的な体術を自由に使えるのか……

 ちょっと……うらやましい……かも。


「凄いですね、あの、俺にも使わせて欲しいっつーか」

「それはダメ」


「え~~っ!? なんで!?」

「見たでしょ? 珠璃の、というかエルジェーベトの無敵の力。珠璃に使ったのはあれが緊急時だったからよ? それに、強い力を手に入れればヒトは必ずそれを使うからね」


「……トーコさんも?」

「えぇ、あたしもこの力で色々やったわ、その代償はこの先永遠について回る。あたしが死ねばこの世界の輪廻転生の輪からはじき出され、生まれ変わることは出来ない」


 まるで何でもないことのように言うけれど、それってとんでもないことなんじゃ?


「地獄へ落ちるってこと?」

「この世界の地獄なんて、あたしの庭みたいなモノよ? 地獄や天界で何度も大暴れしちゃったのが原因でね……あたしも若かったわ」


「庭って……それじゃ、このダンジョンも突破できるんですか?」


 レイド専用UGO最高難易度ダンジョンって言ってたけど。


「余裕よ、レベル50を越えた頃ここへはソロで100回以上通ったし、繰り返しクエストだって全クリアしちゃったくらいよ」

「それなら、このダンジョンのボスにも勝てる?」




「ここのラスボスは《閻魔大王:Lv40ユニーク・レジェンド》、あの蛇より強い」



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