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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
40/51

トーコさんと珠璃の決意②

読み返すと、ちょっと……かなり強引な展開だわさ。

直そうか悩むうちに2週間経っちゃって、もうこれで行きます!

結局、直さなかったぞよ


 珠璃に言われてスキル《ファントム・リアリティ》に気付いたのち、俺がアイテムボックスを開くと二つの見慣れないアイテムに目がとまる。




アイテム銘: エロティックリス

分類: 短剣武器

属性: 神聖

魔力: 120

攻撃力:240

素早さ:450

攻撃速度: 30%アップ

魔力付与: シェイミング・ペナルティ

特殊効果: ラブマックス


《エロティックリス》は、刃形が女体をイメージした波打った形をした両刃の短剣で、クリスを模して創られた刃渡り48センチの神聖武器です。


《シェイミング・ペナルティ》は相手が女性であれば羞恥心を喚起し、精神異常(催眠・魅了・混乱・忘却・睡眠・恐慌)のステータスから回復し、男性であれば霊力へダメージを与えます。


※注:特殊効果の《ラブマックス》は異世界神から貸与された神罰執行権です(注:神罰は霊障の上位に当たり効果を上書きします)。対象者が異性に限り一定確立で????効果を発揮し、この効果は永続で蓄積されます。この効果はスキル《霊障無効》の影響を受けません




アイテム銘: ビッグ・マグナム(女性専用武器)

分類: 射出武器

属性: 神聖

魔力: 120

攻撃力:520

素早さ:120

攻撃速度: 30%アップ

魔力付与: デザイア・バレット

特殊効果: インサイダゥッ


《ビッグ・マグナム》は、S&W M500とニュースーパーブラックホークとコルト・パイソンを合わせたようなオリジナル形状(注:製作者のイメージ不足により形状はシステム側で決定されました)を持つ神聖武器です。装弾数6発はホルスターに戻せば直ちに補充されます。

男性に握られることは武器が拒否するため、女性専用武器です。


《デザイア・バレット》は、プレイヤーの欲望・妄執・執着心などの負の意識レベルが高いほど効果を発揮する特殊弾頭で、一日につき《守護霊レベル÷10》回だけ使用出来ます。


《インサイダゥッ》によって、ホルスターから出し入れ時のスピード/リズムそれぞれに技術点と芸術点が設定されており、さらにその出し入れ回数を重ねることで評価点は蓄積され、評価点に応じて次弾の威力が上昇します。

初心者はリズムを気にせずホルスターからの出し入れを多くこなすことに目標を置きましょう。

上級編:さらに決めポーズを取ったりなどの様々なアクションで芸術点が加算されます。


※《重要》:子宝の異世界神から授けられた神罰執行権により、《ビッグ・マグナム》から放たれる弾丸は《物理無効》で目標に必ず命中し、クリティカル効果を発揮します。 一度でもこのアイテムを使用すると《反動》により同じ効果の《祝福もしくは呪い》をアイテム使用者は永続で授かります。この意味をよく理解し、用法・用量を守ってご使用ください。この効果はスキル《霊障無効》の影響を受けません。






 剣と銃をデフォルメしたアイコンの、その意味するところは明白。

 俺は期待感でワクワクしながらプロパティを読み上げて二人へ説明した。


 それから装備ウィンドウを開いて《アリアンロッド》へ装備する。

 まずは《エロティックリス》から。


「すげー、なんつーかエロカッコ良くて、ずいぶん強力な武器だよね?」


 自慢げに言う俺。

 どうよ、この短剣を持つアリアンロッドの凛々しさ!


 それなのに、トーコさんと珠璃はエロ本でも見つけたような顔で俺を見る。


「在り得ないでしょ、それ、その形」

「このまま風俗文化博物館にでも飾れるわね(※田舎によくある色モノな博物館、18禁)」


 むー、散々な言われようだ。


「カッコよくね? これ、マジカッコよくね?」

「そりゃ、アリアンロッドは元が良いから何を持たせてもサマになるけどさ~」

「格闘系美人のアリアンロッドにお似合いだって言うかもね、知らない人から見れば」


 ちぇっ

 女性陣には短剣の造形がいま一つ不評のようだ。

 このなめらかな曲線を描くラインが良いと思うんだけどなぁ?


 次に《ビッグ・マグナム》を装備させてみる。


「ぉぉおお? こっちもカッコ良いゾ! さすが俺のアリアンロッド」

「ほんとだ、ハリウッド映画のヒロインみたい」

「あら? 当たり前だけど両手で構えるのね、それじゃ短剣と銃の両方を同時に装備は出来ないのかしら?」


 トーコさんに言われて短剣も持たせようとすると、銃か短剣か片方しか装備出来ない。

 片手に短剣、もう片手に銃のようなことは出来ないのかぁ……


 どっちを装備するか、ならば……


「やっぱ剣でしょ!」


 うん、アリアンロッドには剣が良く似合う。


 となると、この銃をどうしようか?

 武器のバックアップとしてサブウェポン扱いで持たせてても良いけど……


「なぁ? 珠璃、《メルカルト》に銃要る?」

「え? 良いの?」


「ああ、俺のイメージではアリアンロッドに銃が合わないからさ」

「ぅぅ、欲しいかも」


「よし、あげる、トレード・ウィンドウ開くぞ」

「ありがとう……って、女性専用武器だからメルカルトには装備出来ません、って出るよ」


 あらま

 女性専用って制限事項はそういうことか。


「それ、もしかして珠璃が装備出来るんじゃない? その指輪みたいに」


 そうかも!


「どうやるんだろ、アイコンをタッチすれば良いのかな? あ! 出来た!」

「おおおおおっ!?」

「あら、似合うじゃない」


 珠璃の腰に、ホルスターに納められた《ビッグ・マグナム》が表示される。


「西部劇のような利き手側のヒップホルスターなのね、ショルダータイプじゃなくて」

「うふふ、どうよ?これ」


 珠璃はシュッと《ビッグ・マグナム》を抜き、構える。


「ちょっ、こっち向けんな!」

「そうよ、たぶんプロパティ通りならそれヒトだって殺せるわ、他人に向けちゃダメよ」


「それにしても名前がイヤラシイし、この《インサイダゥッ》だって、出し入れの回数だなんてどこかエッチぃスキルだよね、子宝の異世界神ってのもそれを連想させるし」


「そうね、子宝の異世界神……ビッグ・マグナムからの弾丸は物理無効で必ず命中する……アイテム使用者は永続で呪われる?? もしかしてそれって……」


「トーコさん、何の事なのか判ります?」


 トーコさんは腕を組んで右手人差し指をあごの横に当てて何かを考えている。


「コンドームが効かない? 必ず妊娠するって意味にも取れるわね?」


 ピキッ


 あ、珠璃が固まった


 ぎぎぎっ


 珠璃の顔がゆっくりと俺のほうを向く……こ、こわい……


「あんた……まさか、あたしをっ!?」


 誤解だっっっ!!




 結局、ビッグ・マグナムは怪しげなその効果ゆえ女性二人から敬遠され、でも、このまま素人が銃を持ち続けるには危ないからと、トーコさんに取り上げられてしまった。


「現実の世界へも影響を及ぼすとは言えゲーム世界のアイテムだからね、100歩ゆずって短剣は許す、でも銃はダメ。 暴発でもしたら取り返しがつきませんから」


 ちぇーーーっ




「二人とも、もう出かけないと学校に遅れるんじゃない?」

「俺んとこはここからだと1時間もあれば着くと思うんで大丈夫っスよ」

「あたしのとこもそれくらいかな? それと家が心配だからちょっと見てきますね」


 珠璃がそう言うと、メルカルトはその場から掻き消えた。

 おそらく、システム・コマンド《テレポート》を使って自宅へ送ったのだろう。


 《Unreal Ghost Online》では、プレイヤーが生身で歩き回る必要があるため、軽減措置としてその手間を省かせる手法がいくつか盛り込まれている。


 100箇所まで登録可能な地点か、もしくは、パーティー・リーダーの居場所へと《守護霊》を送り込むシステム・コマンド《テレポート》

 プレイヤーの所へ《守護霊》を引き戻すシステム・コマンド《リターン・ホーム》


 効率の良い狩場を地点登録して、定期的に巡回狩りするには便利だ。

 本来、サングラスに表示される守護霊視点のウィンドウ表示機能は、プレイヤーから遠く離れた遠隔地でも守護霊を操るための物なのだろう……俺は別な使い方してるけどナー


 珠璃はメルカルトを遠隔操作するためにサングラスに映し出された映像に集中しているので、手持ち無沙汰な俺は夕べ値段の高いお酒を勝手に飲んでしまった件を、トーコさんに謝っておくことにした。


「夕べのお酒、そこまでに高いとは思ってなくて……勝手に飲んですみません」

「ああ、値段の方は気にしなくて良いわよ、食事代補助か交際費で計上しちゃうから。それよりも未成年者がアルコール飲んじゃダメでしょ!」


「そこは見逃してくださいよ! それで、イイんスか? あのお酒高いんでしょ?」

「問題無いわ。 あたしがオーナーしてる会社のね、収益規模に見合った福利厚生の関連費用をある程度計上しないと税務署の監査が五月蝿いの。これまではいつも頑張ってお金を使わないといけなかったくらいだから調度良いのよ」


 それでなくとも、ウチの会社は幽霊会社だからね


 最後に小さくつぶやくトーコさん


 どういう意味なんだろう?


 実体が無いとか誰も居ないとかの意味なんだろうけど。

 言葉通り、幽霊が社員だったりして?

 まさか……ねぇ?




 しばらく待つとメルカルトが戻って来た。


「お待たせ、家にはまだ誰も帰ってなかったみたい」


 年頃の娘を独りにするなんて、珠璃ん家も複雑そうだなぁ……

 珠璃自身が明るいからそれを感じさせないけどさ


 トーコさんは、何も気付かない風に、パチン、と手を合わせ、


「それじゃ出掛けましょうか」


 と、にっこり笑って声を張り上げた。




◆◆◆




 3人でJR田町駅に着いたところで、トーコさんから念押しされた。


「昨日一日サボったんだから、今日は真面目に学校で勉強しなさい」


 そう言い残して、自らは東京方面のホームへ歩いていく。

 有楽町線で乗り換えて桜田門へ行くのだと言っていた。


 あずき色の少しグラデーションが入った膝上ワンピースは、スカートのフロント部分にヒラヒラのレースで縁を飾られた上品なスリットがあり、膝の動きが楽そうだ。


 それにベージュの上着を組合わせたトーコさんは、綺麗なウォーキングで周り中の男の視線を釘付けにして歩み去る。


 俺は、トーコさんの姿が消えてから新宿方面へ向かうべく珠璃に声を掛けようと……


「ねぇ、天太。 今日、もう一日サボれない?」


 先に珠璃から話が切り出される。


「おーい、つい今さっきトーコさんに釘刺されたばっかじゃん、どんな理由よ?」

「ん、トーコさんの生死に関わることだって言えばわかる?」


 おい!


「詳しく」

「予知夢で見たシーンは二つ、一つは犯人、二つ目が化け物と戦うトーコさん」


 !!


 化け物?

 刑事さんを殺したヤツか!?


「化け物と犯人?ってことは、ヒトが介在してるってことか? なんでトーコさんに言わなかったんだ!?」


「言えないよ、マジでバケモンだった、あんなのと戦ったら死んじゃうもの」

「それじゃどうするんだよ? 何か手があるのか?」


「あたしも朝起きてから悩んで、これしかないと思うんだ、だから……」

「だから?」


「犯人の方を押さえに行こうと思う、バケモンは放っといてさ」


 バケモンか、そんなの相手にしたく無いぜ。

 かといって、珠璃の言う犯人相手に俺たちシロートが何を出来るって言うんだ?


「あー珠璃? 俺としては犯人の情報をトーコさんに提供して任せた方が良いと思うぞ?」

「それが出来るなら、あたしだって悩まないよっ 予知夢で犯人の顔は確かに見たハズなの! もう一度見たら絶対判るって自信もあるんだけど、どうしてなのか思い出せないのよ」


 なんじゃそりゃ?


「ちゃんと見た、って確信があるのに思い出せないの! もしかしたら……知らない個人情報は正確には見えないってやつに関係するのかも、ほら、あたし犯人の事を今時点では顔も名前も知らないワケでしょ? それでこの場合、見たのに思い出せないことになってる気がするの」


「そんな曖昧な犯人情報じゃぁ、確かに警察には言えないよなぁ」

「でしょ? だから、まず犯人を取り押さえるなりで特定してから通報すれば良いかな?って、うまくすればバケモンを召喚する現場も押さえられるし」


「そんなうまく行くかねぇ? 第一、どうやって探すんだよ? なんか当てがあるのか?」

「夢で見た場所はなんとなくだけど判るよ、天王洲公園の近くだと思う。モノレールで見たことある景色だった!」


 天王洲って、品川駅の東の方だっけ?


「つまり、まず場所を押さえて、そこに犯人が来るのを待つのか? 気が長い話だなぁ」

「たぶん……予知夢で見るのは24時間以内の出来事じゃないかなぁ~と思うんだけど?」


「……つまり、今夜か?」

「うん、そうなるね」


「そうか。もう一度確認するけど……犯人、顔を見れば判るって?」

「うん」


 よっしゃぁ

 いっちょやったろか!



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