トーコさんと連続猟奇殺人事件②
リアル事情で午前様になってしまい、チェック不十分だった場合には
近く修正する可能性がある……かも?
とはいえ、お楽しみ頂けたら幸いです。
『こちらゲーム初心者のLv5です。PKとかしないで一緒に遊んでくれる優しいLv6-7辺りのヒトを新宿で募集してます』
サングラスに映る《Unreal Ghost Online》の、チャットウィンドウを流れる様々なプレイヤーの投稿メッセージを眺めていたら、ふと、その一文が目に止まった。
このゲーム、リアルを題材にして、かつ、倫理規制何ソレ?と思えるような気持ち悪い、ハッキリ言えばゲロいネタが満載している。エロじゃねぇゲロだ。絶対R-20だ。
まともな神経の持ち主なら、夜中に一人でトイレにも行けなくなりそうなゲームだ。
いや、そもそもこのゲームを気味悪がらずに独りで遊ぼうとする初心者なんぞ居るか?
初心者ならPKよりも、このゲームに登場する諸々のゴーストの方が怖いだろうに。
一緒に遊んでくれるだけで、相手が誰だろうと地獄に仏って思えるぜ。
そんなゲロゲーで、初心者なのに、PKを気にしつつ、優しいヒト募集だと?
何気ないメッセージに込められた3つのキーワード。
2つまでなら違和感が無かっただろう。
だが、3つ揃うと刑事のカンに触れた。
こいつ、ホントに初心者か?
俺は《ウィスパー》と呼ばれる機能で、メッセージを投稿した人物に話し掛けた。
このサングラスは携帯並みの通話機能すら持ってる。まったく不思議な品だよ。
「こちらLv7です。いま新宿に居るんで少しだけですが一緒に遊びませんか?」
「どもども。こっち歌舞伎町の二丁目に居るんですけど?」
「了解、そっち行きます」
妙に甲高いそいつの声は、女なのか男なのか判別出来なかった。
こいつがホントに初心者ならただの無駄足で終わる。
そん時は、ちょっと遊んでバイバイすれば良い。
だが、初心者を装ったヤツだったら? 何のためにそんなことをしている?
俺は自分のカンを信じて歌舞伎町へと足を向けた。
指定された場所に少し遅れて現われたのは、身長は約170cmより少し高いくらいだろう、大柄で小太りな女だった。
金髪ロンゲだがアレはカツラか? すこし遠目でも刑事の観察眼なめんなっ。
顔は《Unreal Ghost Online》のサングラスを掛けてるのと、両頬を隠すような髪型のせいで、どんな顔をしているのか、そして年齢までは解らない。
スカートをはいているが、服装はセンスの悪さを感じた。
ちょっと見た限りでは女に思えたが、もしかしたら女装という可能性もあるか。
ソイツはニヤニヤと薄気味悪い笑いを口元に浮かべつつ、そこに現われてから一向に何も話そうとしない。なんだコイツ?
「おい」
痺れを切らした俺がそう話しかけた、まさにその時、
『『『 ブォーン 』』』
辺りに響き渡る重い効果音と共に、地面に現われる紫に耀く不思議な形の模様。
なんだ、ありゃ? 魔方陣!?
「ひゃーーーーっっはっはっはー、ブァアーカ、引っ掛かったな!!」
そいつは、狂ったように笑いだした。
気に障る笑い声に気を取られた瞬間、魔方陣らしき物から何かが飛び出して来る。
鮫のような尖った乱杭歯をむき出しにした大蛇らしき生物が大口を開け、俺の《守護霊》を飲み込もうとしている。あまりにも素早いその動きは、人間の反射神経を大きく上回ってた。
あ、っと思った時には、《守護霊》の上半身は既に怪物の口の中だった。
俺は熱いような痛みを腹に感じた。噛み付かれたのか??
俺の《守護霊》は怪物の、たったの一撃でHPをゼロにされてポリゴンを爆散させ《死亡状態》となってしまった。
怪物の強力な攻撃力は《守護霊》のHPを大きく越えゼロにしただけでは飽き足らず、操るプレイヤーである俺自身にもダメージが還元されたようだ。
ダメージ・フィードバック・システム。
通称【霊障:バックラッシュ】と呼ばれる《Unreal Ghost Online》特有の現象だ。
あまりの痛みに俺の身体は麻痺したように動けない。
化け物め!
その化け物は《守護霊》だけでは物足りなかったようだ。
俺へと顔を向けた直後、ヘビのように一瞬で飛び掛って来た……
俺が視認出来たのは、上あごと下あごにビッシリと生え揃ったカミソリのような歯。
やっぱりこの化け物は大蛇の一種のようだ。
麻痺したまま動けない俺は、何も出来ないまま丸呑みされ、蠕動運動でさらに腹の奥へと運ばれるのを感じた。
大蛇の腹の闇の中、何も見えない。
俺が最後に思い浮かべたのは……
さっき買ったばかりの赤い石が付いた指輪と、その指輪を嬉しそうに受け取り、耀かんばかりの微笑みを浮かべた後輩の顔だった。
「フジ……イ……」
「センパイが……亡くなった?」
陶子は、捜査一課長からもたらされた話に瞳を大きく見開いて驚いた。
「ああ、今朝03:40頃に歌舞伎町二丁目のビルの間で見つかった。奴さんが7人目のガイシャになっちまうとはな、参ったよ。 藤井、おめえ最近ヤツが何を張ってたか知らねぇか?」
陶子は顔をうつむけて、一瞬間をおくと、
「申し訳ありませんが聞いていません。ただセンパイは最近何か悩みでも抱えていたのではないでしょうか? サングラスを掛けると他のヒトには見えない変な物が見える、とか言っておられましたから」
「ああ、それは俺も知ってる。 俺がそのサングラスを借りて掛けた時にゃ、変なモノなんざ何も見えなかったよ。 なのに奴さんは幽霊が見えるって大騒ぎしてたな。 ふー、そうか藤井も何も聞いてねーか」
「それでセンパイの御遺体は?」
「今は司法解剖に出されてる。葬式はたぶん来月になるだろうが、そんときゃお前さんも出てやってくれ。 奴さん、お前さんを好きだったみたいだからな、供養になるだろ」
「それは……はい、もちろんお葬式には出席するつもりです」
「あー、お前さんも気付いてたか。本人は気付かれて無いと思ってたらしいがな」
「はい……。それでは他に何か思い出しましたら報告いたします」
「ああ、そうしてくれ。邪魔したな、仕事に戻って良いぞ。 ああ、それと、パートナー決めるまではしばらく独りで活動しててくれ。それとこの件はマスコミには調査中でノーコメントだ」
「了解しました」
陶子は自分の机に戻ると引き出しを開き、中からメモの切れ端を取り出す。
『藤井、この不思議なサングラスの事を聞いて笑わなかったのはお前だけだ。だからお前にだけは、この件で俺に何かあった時には捜査を引き継げるよう連絡先を残す。警部や他の奴等は信じちゃくれないしな。詳しいことは其処に書かれているソイツから話を聞いてくれ』
「センパイ……必ず、犯人には相応しい罪の償いを受けさせますね」
おー? 藤井ーぃ?
陶子は、脳裏に浮かんだ故人が自分を呼ぶ声と笑顔を思い出し、少しだけ寂しそうに微笑んでから、仕事の顔に戻すと、
「柏木天太、か……」
陶子はもう一度目を閉じ、去来する想いにしばし身を任せてから、書かれている連絡先と名前を再度確かめ、電話を掛けるべく受話器を持ち上げた。
うぅ、連続投稿出来ないかも?と言ったとたんにリアルで急用が……
次話、ようやく主人公のターンなのに。
R-15表現で不適切な箇所がないか、もう少し確認したいので一週間ほどお時間頂きたいです。
そして、ごめんセンパイ、貴方の名前は出てこないのだよ。
自分は小説の修行のために投稿しているのではなく、好きなものを書く、というのが原動力です。
そのため、ストーリーを批判されても直す予定も無く行き場がありませんので、スルーして頂くのがお互い楽な道だと申し上げておきます。