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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
33/51

トーコさんと夜のドライブ②


 車は首都高の環状線から中央道に入るジャンクションに差し掛かったところだった。

 トーコさんは「中央フリ~ウェィ~♪」と聞いたことあるような歌を口ずさんでる。

 珠璃が真面目な声を出す。


「トーコさん」

「ん~? な~に?」


「トーコさんって、ずいぶん霊に慣れてますよね?」

「そうねぇ……実家はお寺だったし、子供の頃から幽霊とか身近だっからね」


「それだけじゃない。《Unreal Ghost Online》に慣れるのがずいぶん早かったですね」

「そりゃあね、こう見えてもあたしは、かなりコアなネトゲユーザーだったのよ? 5……6年前まではMMORPGやってて、サーバーでも1・2を争うタンク職だったんだからv UGOって基本的なシステムは、一般的なMMORPGでの召還職に近い操作だしね、ペットを召還して戦う処とか」


「そう……それじゃ……」

 珠璃とトーコさんの会話が続いていたが、俺はそれを聞いてるどころじゃなかった。


 だって、だって……


 いまトーコさんは婦警ユニフォームから全体的にミルク色にコーデした私服へ着替えている。


 トーコさんの足がアクセルとブレーキを行ったり来たりしてるうちに、徐々にスカートが上へとずり上がってて、会話に夢中なトーコさんは気付いて無い。


 くはぁ。男だったらガン見するだろ!?

 なぁ!?


 そして……俺にはガン見だけに留まらせない、便利なモノがある。


 いま、トーコさんも珠璃もサングラスを掛けてない。

 トーコさんはいつもの大きな丸メガネだし、珠璃は外して学生鞄に仕舞い込んでいた。


 後部席に座る俺は、トーコさんがバックミラーで見ても直ぐには判らないように、すこし浅めに座って腰を前に出し、頭の位置を下げてサングラスを胸ポケットから取り出しコッソリ掛ける。


 ドールサイズまで小さくした《アリアンロッド》を呼び出す。

 俺の目の前に人形のような《アリアンロッド》がチンマリと出現した。


 こうやって大きさを任意に変えられるのが《虚霊》の良い所でもある。

 《守護霊》も《虚霊》の一種だからねv


 アリアンロッド(ドール)は、センターコンソールから運転席の隙間に入り込むと、左足の下を通り抜け、座席前の両足の間から顔を覗かせる。


 そうして運転に集中しながら会話してるトーコさんの真正面からスカートの中を覗き込ませた。


 贅肉の無いトーコさんのフトモモは、スカート奥の三角地帯が丸見えだった。


 紫!


 はぁ天国だぁ、今日一日の疲れが全て癒されるぅ……




「天太」


 突然、トーコさんが運転中にも関わらず振り返って、俺を呼び捨てにしたっ。


「は、ハイッ」


 や、やべぇ、反射的に返答する俺。

 ビルの灯りが車室内に時折届いて流れていく中、トーコさんの瞳が底冷えな光を放っていた。


 高速道路のカーブの最中に後ろを振り返るトーコさんの行動には、珠璃も慌てている。


「とと、トーコさん、前っ! 前っ!」

「危ないっ、危ないからっ、トーコさんっ」


「また盗撮?」


 前を向いたトーコさんはバックミラーから氷の目で俺をチラチラと見ている。

 その言葉に驚いた珠璃も後ろを振り返り、俺がサングラスをしてる姿を確認したとたん、


「あ……あんたってヤツは(怒」


 珠璃の顔が、阿修羅に変わった。


「天太って、ホントにどうしようもないドスケベね」


 トーコさんは心底呆れたふうに呟く。

 ぅう、天太って呼んでくれるのは嬉しいけど、針のムシロですたい。はい。


「珠璃は彼女なんだからこの子のことをよ~っく見張ってないと、いずれ性犯罪を起こすわよ」

「か・か・か・彼女なんかじゃないですっ」

「はぅ性犯罪者よばわり……」


 そのトーコさんは「このまま行けば無職・独身男・30代になっちゃって重犯罪予備軍よ」とかブツブツ言っている。


 あうぅぅ……トーコさぁ~ん、ひどい~


「あら、彼女とちがうの?」

「ちがいますぅ~っ! だ・だいたい天太なんて彼女居ない暦=年齢の、ぜんっぜん、イケてない男の子なんだから、彼女とか言われたらあたしに失礼ですっ」


「ふ~ん(にやにや) 天太は顔はまぁまぁだからモテ無いだなんてコトは無いんじゃない?」

「そそ・そんなコトないですよ、トーコさん近視が進んでますよゼッタイ」


 さっきまで俺に対して怒ってたハズのトーコさんは、新たなイケニエを見つけたようだった。

 スマン!珠璃、トーコさんにこのまま弄られてくれ、俺のために。


「あたしの視力は両目とも1.5ですから。そうなんだ、それなら良かった」

「「え?」」


 良かったの?


「だって、これからはもう、天太はあたしの下僕だからv 珠璃が彼女だったら可哀相かな?って思ってたのよ(にやにや」

「「えぇ~っ!?」


 うっそマジで? 『天太、あたしの足を舐めなさい。つぎはアソコよ』とか言われるの?


「で、でも、トーコさん、こいつドスケベで……これからも覗かれたり、下手すると襲われたりしますよっ。良いんですか?」

「あら? 珠璃はあたしが覗かれたり襲われたりするとイヤなの?(にやにや」


「当然ですっ、あたしはトーコさんの嫁を狙ってますからっv」

「うわ、まだそのネタ続いてたの!?」


 あ、攻守が変わったらしい。


「ねぇ、トーコさ~ん、あたしって自分で言っちゃうけど、料理上手だし掃除洗濯なんでもOKですから今すぐにでも嫁にいけますよぉ? 将来トーコさんが子供を生んでもあたしが立派に育ててみせますからっ」


「あ・あたし、ソッチのケ、無いからっ それに子供って夫はどうするのよ?」


 なんかトーコさんもずいぶん慌ててる。

 これまで女性からこんな風にアプローチされた事が無いんだろうけど、トンチンカンなこと言ってるし、混乱してるなぁ(笑


「あらぁ? トーコさんには覗かれても襲われても構わないっていう、ちょうどイイ下僕がいるじゃぁないですか」

「ちょうどイイって……ナニがイイのよ?」

「なるほど」


 イイ話の流れだ。珠璃ナイス。


「つまり、トーコさんも珠璃も、俺の子供を生みたいというワケですね、二人相手なら一日5発は頑張れますからっ(☆きらっ」


 トーコさんは呆れたように俺を見て……ついでに乱していたペースを取り戻したようだった。


「その件は、間に合ってますから」


 珠璃を弄って遊んでいたトーコさんは、自分が弄られ始めたと感じたとたん、話の流れを無理やりブッタ切った。


「話を戻して、この際だから説明するけど、ねぇ、天太。あたしのパンティー何色だった?」


 げげぇ、そこへ話を戻しますかっ!?


「《守護霊》の視界内の景色にしても、珠璃の《シースルー》にしても。 あなた達が見てるモノが常に正しいとは限らないのよ?」


「「 はぃ? 」」


「つまり、天太がさっきまで見てた、あたしのスカートの中はウソッパチな映像なのよ」




「へ? だって《守護霊》の見てるモノって、こうして俺が見てるモノとまるっきり同じだし、何か違うんですか?」

「あたしが《シースルー》で見てきたこれまでも、間違ったモノなんて無かったですよ?」


「そうでも無いのよ、だから聞いてるの。 天太、アンタが見たあたしのパンティーの色、さっさと教えなさい」


 そんな面と向かって言われると……ごにょごにょ


「……ムラサキっス、あの、今も見えてるんスけど……間違いなく紫っス」


 卑屈さから思わず丁寧語の俺。


「ホントにそうかしら? もっとよく見て」


 そう言ってトーコさんは、あろうことか足元から丸見えになるように自分の右手でスカートを持ち上げた。俺から直接は見えないけれど、《アリアンロッド》からは先ほどまでのチラチラ程度の露出ではなく全モロで見えるようになった。


 うぉぉぉおおおおおおお(@@;


「と、トーコさんっ、ダメですよっ、そんなっ」


 助手席の珠璃が、トーコさんのスカートを押さえようと両手を運転席に伸ばす。


「イイのよ、珠璃、貴女も《シースルー》であたしのスカートの中を見てみて」




 その後、色々あったけど割愛。

 結局、珠璃もサングラスをもう一度掛けて《シースルー》を発動し、トーコさんを見た。


「うう、恥ずかしいなぁ、同性のスカートの中を覗くなんてハジメテだよ、あたし」


「どう?紫のパンティーが見える?」

「ええ、紫の大人っぽいのですよね」


 珠璃も真っ赤になりながらも、俺と同じモノを見てるらしい。


「じゃ、天太も珠璃もそのまま見ててね」


 トーコさんは左手でハンドル操作しながら、右手でグイッっとさらに太モモ、いや、その付け根まで晒すようにスカートを思いっきり手前に捲り上げる。


 ちょっ!?

 トーコさんダ・イ・タ・ン☆


 後部席の俺からみても太モモのかなりギリギリまで見えてる、珠璃からならその上まで……


 珠璃はソコを見て、驚くように小さい声で呟いた。


「ウソ、シロだ」

「へ?」


 シロぉ?


 そう思ったとたん、サングラスの《アリアンロッド》の視界サブウィンドウに映っていたトーコさんの紫パンティーは、一瞬で白パンティーへと色が変わった。


 トーコさんはゴソゴソと、運転席に座ったままやりづらそうに片手で服を調えると、


「どう?今ではもう白に見えてるでしょ?」

「で、でもどうして? 色だけじゃなかった、デザインまでも《シースルー》で見た時と違ってましたよ?」


「それはね《守護霊》の視界も、《シースルー》にしても、見えない場所がホントに見えてるワケじゃぁ無いってことなの」



 トーコさんは続けて説明する。


「自分から直接見えない場所でも、物の配置とかヒトが何人居るのか、とかは視えるわね」

「えぇ、まるでサーモグラフィのように壁の向こうにヒトの形した光が見えますよね」

「あれ?でも見えないハズの教室に、友達の誰々が居る、とか見えたことありますよ、俺」


「そうね、珠璃が確認したとたん、白くなったあたしのパンティーみたいにね」


 そこまで言われれば俺にも気付けた。


「つまり、そこにナニがあるのか、誰が居るのかをあらかじめ知ってれば全部見えるけど、予備知識が無ければ、正確なモノは見えない、ってこと?」


「その通り。個人情報は特に見えないわね。だからあたしのスカートの中を見ても正確には判らないワケ」

「で、でも、最初に紫のパンティーが見えましたよ? あれは何で?」


「個人情報でフィルターが掛かった場合、自分の思い込みで映像が見えるみたいね」

「俺の願望だったってワケですか!? それなら珠璃が俺と同じ紫を見たのは、アレはナゼ?」


「それは簡単、天太が先に紫だって言ったから。 つまり先入観を持って珠璃は見たからよ」

「先入観?そっか、それで珠璃が確認して白だって言ったから、俺のも白に変わったのか……」


 芸が細かいというか、奥が深いな《Unreal Ghost Online》。




「自分の身を護るためにも、そういう思い込みや先入観からくる情報の違いから、錯誤……勘違いしないように《Unreal Ghost Online》のシステム的な仕様は知っておいたほうが良いわね」

「自分を護るって何から?」


「システム的な仕様を悪意を持って上手に使ってくるプレイヤー、すなわち、PKから」



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