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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
32/51

トーコさんと夜のドライブ①

閑話のバイオレンス②は、主にトーコさんの口撃力を語るところだったのですが、

自分で読み返すと、あまりの破壊力で、めぐり巡って作者のプライドまで粉々に

なってしまいました。

素直に本編進めることにします。閑話を載せるのはまたいつか。




 病院に着いてしばらくすると連絡を入れた由里の家族が駆け付けて来た。

 家族に状況を説明するのはトーコさん。 核心をぼやかしてうまく説明してくれてた。

 朝に面会を断られた俺たちがどうして由里と一緒に居るのか? とか説明出来ないもんな。


 身体に傷は無く事件性はないこと、診断の結果は疲れているだけだとのこと。

 それでも、念のため一晩病院で様子を見ることになったこと。


 説明を終ると、後のことは家族に任せさっさと引き上げることにする。


「言い訳はしないけど、遅れちゃってゴメンね。お詫びに自宅まで送って行くわ」


 そう言って病院からタクシーに乗って、トーコさんの自宅?へ向かう。

 普段住む独身寮ではなく、個人で所有しているマンションなんだそうだ。




「ぅぉーー、ビーエムだよ。カックイー」

「すっごい。これ、トーコさんの車なんですか?」

「うん、そうよ。2ドアだから天太は後ろに乗って、珠璃が助手席ね」


 珠璃も名前で呼んで欲しいと言い出して粘り勝ち。

 俺を下僕扱いするのはいいが、「天太」と一人だけ名前で呼ぶのは許せないと。


「えーーっ、俺、助手席がイイ!!」

「あ゛? アンタ、下僕のクセに助手席ですって? フザケテルの? 死ぬの?」

「ウシロでイイデス」


 シクシク、助手席を前に倒してすごすごとリアシートへ乗り込む俺。

 あの優しかったトーコさんはいずこに!?(滝涙

 (注:優しい陶子は天太の妄想です




 トーコさんは婦警ユニフォームのまま運転席へと座り、キーを差し込むとハンドル左にあるエンジンスタートボタンを押す。


 『ヴォンッ』


 とたんに重低音の小さな音が一瞬だけ聞こえて来る。

 さすが高級車だ、その後は静かなものだった。


「わー、すごーい、最新型のビーエムなんだぁ?」


 珠璃が助手席でハシャいでる。


「新型はブレーキ踏まないとエンジンかけられないのが面倒よね」


 と、トーコさん。

 珠璃のハシャギっぷりはとまらない。


「このピコピコ光ってるLEDは何ですか?」

「それはオプトライザーって言って、車内光LANのパケット通信をモニタリングしてるのよ」


「そんなのモニターして何が良いんですか?」

「うーん? 今のビーエムってマイコンのかたまりでしょ? あたしはいつも同じように車のドアを開けて乗り込むから通信状態は毎回同じになるの。 でも誰か見知らぬ人間が車両へ悪戯するとそれを検出したマイコンの情報が更新されるから光通信内容が変化するのね、それを見るワケ」


「ゴルゴ13みたいですね」

「そうね、科捜研の同期がね、これ仕掛けておくとブレーキに小細工されたとか爆弾仕掛けられたとか解るようになるんだ、なんて言ってたのよ? LEDのピコピコで判るものなのかしら?」




「あたし新型のボードモニター触るの初めて。弄って良いですか?」

「イイわよ」


 ニッコリ微笑むトーコさん。


 くっそー、後ろの席からじゃ女神サマの御顔が少ししか見えねぇ。

 トーコさんの婦警服のスカートが少しだけ捲くれ上がってて、ひざ小僧が見えてる。


 こうなったら!!


『俺、トーコさんの太もも触るの初めて。奥も弄って良いですか?』

『イイわよ』


 うぉお鼻血・はなぢがっ うほほh「また、何か変なこと考えてるわね?」


 ギ・ギクぅ


 バックミラーからトーコさんの鋭い瞳が俺を捉えていた。


「や、やだな、トーコさん。ソンナワケ、ナイジャナイデスカ」


 これ以上、女神サマの御顔を曇らせたくない俺は急いで別な話題へ振る。




「ボードモニターって何ぞや?」


 あせった俺はとりあえず何でもイイから珠璃に尋ねると、


「ビーエムのセンターコンソールに在るTVのことよ」


 珠璃が得意げな顔で説明してくれる。

 そういや由里ん家の車も知ってたし、珠璃って車オタク?

 俺はそんな珠璃のトリガーを引いてしまったようで、マシンガン・トークが鳴り止まない。


「集中ディスプレイになってて、ほら、ここのジョグダイヤルで統合操作できるようになってるの。イイわ~、さすが5シリーズね。パパの3シリーズより機能豊富ー、あっマルチメディアチェンジャーも付いてるじゃないv」


 なんじゃ、そのセレブ発言は。


「くそー、ブルジョアめ。氏ね」


 あ、しまった声に出ちまった……


「ね、トーコさん、後ろの生ゴミ、どうします?」

「あらあら、生きてる間はリサイクルしなくちゃ勿体無いわよぉ」


「ですね。死んだら捕獲キャッチして、奴霊ドレイ化してから《特攻野郎》としてせいぜい利用しなくちゃ」

「「 クスクス 」」


 こ、こぇぇぇえええーーーーーガクガクブルブル。




「珠璃そのTVモニターだけど、今はボードモニターじゃなくてアイドライブって呼ばれてるわ。

 それじゃ、このままちょっとここで待っててね? 制服を着替えて来るから」


 トーコさんはそう言い置いて婦警服を着替えに車から降りた。

 部屋へ向かったのだろう。


「ちぇーっ、着替える間だけでも、部屋にお邪魔させてくれてたら良いのに」

「あんたみたいなヘンタイを家に上げて、下着がゴッソリ無くなるのを心配したんじゃない?」


 く、くそっ、珠璃のやつぅ。


「そのヘンタイと一つ屋根の狭い車中だってこと忘れるなよ~~?」

「そのセリフ、トーコさんの前で言ったら間違いなく、歩いて帰れ! って言われるわね」


「スイマセン、調子にノッテました」


 ちぇっ、やっぱり口喧嘩じゃ珠璃に勝てねぇ。




 珠璃がアイドライブとやらの何かを操作したらしい。

 静かな車内にラジオからBGM代わりの曲が流れ始めた。


 そしてDJのナレーションが始まる。


『ナインティ・ワン・ポイント・スリー、レイ・ウェーーブ♪

 はーい、本日の《0ウェーブ》、DJはワタクシ狂死老がお送りしっまぁース。

 最初の曲は、ありし日のニッポンを彷彿させる『大江戸ヒップ☆ホップ』からだ。

 今日も飛ばして逝くぜぃー? 昇天の準備はイイかぁー?』


「何コレ、91.3MHzって、FM周波数って90.0MHzが上限じゃなかった?」


 おいおい、それって……


「……深夜に存在しないFM局を聞くと死ぬ、って都市伝説が無かったか?」


『曲の途中だけど、本日は久しぶりのリスナー便りが届いてるんで、ここで紹介しちゃうぜ?

 今日のリスナーは、なな・なんと、あの藤井陶子のマンションからだ』


「ここなの!?」

「……なんかイヤな予感して来たゾ、俺。 珠璃サングラス掛けてろっ」


 俺と珠璃は急いで外していたサングラスを取り出し、顔に掛ける。

 お互いの守護霊は今も死亡状態で、8時間のデスペナルティの間は生き返らない。

 それでもサングラスを掛けていれば《霊》の挙動が見えるから対処し易い。


『とびっきりイキの良い、マダ10代の男の子と女の子2名が、マンション地下の駐車場で、

 も一度言うぞぉ? 皆のダーイスキなアンダーグッラッーンドの暗闇の中に、いま、まさに、

 今この瞬間! 狭い車の中で、ハァハァ言ってんだっぜーぃ?

 コレ聞いてるキミ。そこのキミだよ、エッチなこと想像するより前にヤルことあるだろぉ?』


「なによ、エッチなことなんてしてないわよっ!!」

「マズイぜ? なんだか知らないけど、まわりやばそうなヤツに囲まれてる……」


『だけど、だけど、だっけーっど。

 下手に近付くと怒った陶子に消滅させられちゃうぜぃ?

 ヤルんなら命知らずのヤツラだけにしときなよっ!?

 以上、《0ウェーブ》の狂死老がお送りしましたぁ~』


「どこ!?」

「目を向けると見えなくなるんだ、一点を見つめてると視界の隅で影が蠢いてるだろ?」


「ヤダ、ほんとだ……こいつら、絶対ろくでもない《霊》だよ」

「くそっ、近づいて来てる」


「《守護霊》いない状態のあたしたちで逃げ切れると思う?」

「わからない。 タグを見ようと視線を向けると、とたんに見えなくなる」


「それに数が多い……」

「今日は厄日かよっ」


「ぅぅ、やだぁ、運転席側の窓から覗き込んでるよぉ」


 珠璃は前を見たまま、横目で運転席の外に居るヤツを視界に捉えているようだ。


「車のリアウィンドウからもだ」


 俺も同じく前を見ながら視界の隅でヤツラの動きを監視している。

 運転席の外に居るヤツが、ガラスを透過して顔を車内に潜り込ませようとしてるのが見える。


「や! やだ~天太ぁ、中に入って来たぁ~~っ!」


 運転席のサイド・ウィンドウから、黒い靄に笑い顔が張り付いたようなヤツが……

 くそっ どうする?




 ガシッ


「「 え? 」」


 運転席に座った(・・・・・・・)ままのエルジェーベトが片手で黒い靄の顔をガッチリと掴んでいる。


 いつの間にそこに居たのか?

 最初から居たのか?

 ナゼ俺たちのサングラスで見えなかったのか?


 判らないことだらけだったけど……


 エルは黒い靄を容易く握り潰す。

 蠢いていた影達はそれを見て、サッ、と一斉に車から離れた。


「どしたの? ま、まだ居る?」

「いや……見えないぞ、どこに行った!?」




『ガチャ』


 運転席のドアが一気に開いた。


「ひっ」

「うぁぁあっ、あ?」




「ただいま、あれ? どうかしたの?」

「「 トーコさぁ~っん 」」




「あっはっは、《0ウェーブ》聞いちゃったのね」

「怖かったですぅ~」

「ホント、トーコさんが来てくれなかったらヤバかったですよ」


「アイツら、ただのザコだから無視してりゃ平気なのよ」

「で、でも、存在しないこのFM局を聞くと死ぬって……」


「うん、霊障に弱い人は死んじゃうみたいね?」

「「 ちょっ!? 」」


「あっはっは、だから霊障なんて気の持ちようだって」

「トーコさんって……」


 あ、珠璃がまたハート型の目をトーコさんに向けてる。


「ん?」


「トーコさんってナンカ漢らしいって言うか。都市伝説なんて"ヘ"でも無いって感じ/////」

「何よ、ソレ。 利用してる都市伝説なんてあとはセイゼイ《黄泉売新聞》くらいよ?」


 あははーっ

 って明るく笑うトーコさん……素敵だ……じゃなくてっ!!


「それ、一回読む毎に3日寿命が縮まる、ってヤツじゃなかった?」

「あっはっは、だから霊障なんて(ry」



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