トーコさんからの天罰?
このお話で物語は折り返しです。
天太が陶子と出会って、事件が解決(?)するまで約50時間程度
三日ほどのお話なのに、いったい何話書くつもりなんだ?わたしゃ。
まだまだ続きます。引き続きお楽しみ頂けると嬉しいです。
気付けば俺の斬られた手のひらから血がポタポタ垂れていた。
服を汚さないよう血止めするかと、左ポケットからハンカチを取り出す。
血を拭おうとすると、小さな真白い可愛らしい手が俺の右手を掴んで来た。
「え?」
それは《エルジェーベト》だった。
俺の右手を握り、何をするのかと思ったら、手のひらをペロペロと舐め始める。
「ぇぇぇえええええっ!」
ぅぉぉぉぉおおおおお?
小さな舌でペロペロって、ぺ・ペロペロって……
エルは一生懸命、俺の血を小さな舌で舐め取ってくれる。
視覚効果も加わって、核爆弾級だよ。
これなんてエロゲ?
ぺろんっ
!!!!!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
ふと見ると、トーコさんと珠璃はこんな俺を見て、完全に引いている。
エルが舐めるのを止め、顔と手を離す。
彼女が舐めまわした手のひらを見る。
!!!!!
「傷がない……」
「は?」
汚物でも見るような瞳で、それでも珠璃は傷という言葉に反応したようだ。
「そういや、あんた、さっき手を斬られたんだっけ?」
「ぁぁ、あれ? 斬られたのは左手だっったっけ?」
そんなハズねーよなぁ。
変だなぁ、右手だったはずだけど。
確かにさっきまで在ったはずの痛みすら消えていた。
左手のひらを見ても、やっぱり傷がない。
両手のひらを並べて同時に見ても、やっぱりそこに傷は無かった。
「え? 治した?」
俺と珠璃が驚いていると、
「エルのスキル【コンバート・ライフ】よ、対象の生命力を吸い取り傷を癒す。まぁ、まだスキルのレベルが低いから、血を舐めて小さな傷は癒せても、失った生命力は戻せないから大怪我は治せないんだけどね」
「すっごぉ~い」
珠璃はすごいすごい言いながら、トーコさんに抱きついている。
あっ、くそ、どさくさに紛れて俺のトーコさんに何しやがるっ!!
そこで思い出した。
そーだ、取り出して行き場が無いこのハンカチで……
俺はトーコさんに近付くと、珠璃がコッチ来るなって瞳を向けてくるけど、そんなの無視。
「そう言えばトーコさん、ウィンドサーフィンで来てくれたんですよね、ありがとうございます。えーと言葉に出来ないくらい感謝してるっつーか、トーコさんに返せるのはコレくらいなんで」
そう言いながら俺はトーコさんの前にしゃがむ。
俺の突然の感謝の言葉と、意味不明?な行為に、トーコさんも珠璃も俺の行動を阻まない。
俺の目の前にはトーコさんが着ている婦警服の膝丈スカートがあった。
そこで俺は……
「海水に濡れて気持ち悪いでしょう? トーコさん。拭いてあげますね」
ウムを言わさずトーコさんの両足の間に左手を入れて、ハンカチを持つ右手でスカートを押し上げるように右膝を出し、まず膝下を右手のハンカチで丹念に拭いだす。
「!!! ぎ」
「え? ぎ? ホントすみませんトーコさん気が付かないで、夜の海水に濡れて寒かったですよね、暖めてあげますから」
俺はここぞとスカートを右フトモモの半ばまで押し上げながらハンカチで拭いた。
トーコさんの濃い肌色したストッキングの手触りが最高。
もちろん、トーコさんのフトモモの弾力はそれ以上の至高の感動だった。
それに、フトモモを露出したトーコさんはすっごくエロかった。
「あれ? 変だな、濡れてないぞ? あ、場所が違ったんですね、もう少し上かな?」
ハンカチを持つ右手をスカートの奥へ、右フトモモのさらに上の方へと差し入れる。
AR表示に真上からの攻撃予測線が表示された。
と思う。じっくり見る余裕は無い。
「ぎゃぁぁぁああああっ!」
間一髪。頭を後方へスウェイバックさせた。
一瞬前まで頭があった場所にトーコさんの肘が振り下ろされている。
「こ、こっ、コロス」
トーコさんは両手でスカートの前を押さえながら、少しうるうるした瞳を俺に向けてくる。
「あははやだなぁトーコさん。トーコさんの濡れた足を拭いてあげたかっただけですよぉ」
「トーコさん、その前にコレ見て!!」
「止めないで頂戴、甲田さん。ここまで酷い痴漢は生まれて初めてよ」
「いいえ、止めませんよぉ。トーコさんにはコレも見て欲しかっただけです」
珠璃はそう言うと、右手で何かを掴むようなジェスチャーをした。
さらに、トーコさんの方へと右手を振る。何かを押しやったような感じだ。
いったい、何してるんだ?
「ん、ダイアログが……ファイルを受け取りますか?って、何なの?」
トーコさんは受信ダイアログの受託ボタンを押したのだろう。
訝しげに眉をひそめると、次に瞳を見開き驚いて
「これ、倒れてる甲田さんのスカートが……柏木君、今度と言う今度は見損なったわ。倒れた女性を助けもせず、それ幸いとスカートを巻くってイヤらしい写真を撮るなんて!」
げーーーーーーーーーっ!!
あ、あの写真か!?
しまったぁっ!
そういやサングラスの隅っこにSS表示のウィンドウ出しっぱなしだったぁぁぁぁあああっ!
「こっちも見てくださいよ、トーコさん」
珠璃はそう言うと、新たなアイテムをトーコさんへドラッグアンドドロップで渡す。
こ、今度は何を……俺は嫌な予感が背中を走り抜けるのを感じた。
ま、まさ……か、まさか、まさかっ!?
「こ、こ、こ、これ! あたしが昨日穿いてたスカートの中! い、い、い、い」
トーコさんが壊れちゃったような意味不明な声をあげる。
「さぁ、東京湾に沈む覚悟は出来たかしら? 天太ぁ?」
口が『い』の形で固まったトーコさんの脇で、珠璃はヒトの悪いニンマリ顔をしている。
その顔は、俺をまんまと排除してやったぜ☆ ってドヤ顔だった。
そこから先は散々だった。
「いっっやぁぁぁぁああああああ!」
凄い勢いでビンタが往復したと思ったら、トドメはゲンコツで張り倒され。
うつむけの体勢で何度も何度もトーコさんに背中を踏まれた。
「イテッ イテッ イテッ」
珠璃はそんなトーコさんをハシャギながら応援していたし、
なぜかトーコさんも途中から実に楽しそうに、笑いながら俺を踏んでいた。
二人とも嬉しそうだし。
この姿勢なら、珠璃とトーコさんのスカートから覗くアラレもないフトモモを堪能出きるし。
ま、いっかぁ。
ひとしきり満足して落ち着いたトーコさんは、気を失ってる由里に気付くと、慌てて病院へ搬送すべく、救急車を手配してくれた。
救急車への添乗は独りだけ、と言われたので病院への付き添いは珠璃が行く。
トーコさんは搬送先を聞き出し、タクシーで後を追う。
俺も当然トーコさんに付いて行く。
「ここまで付き合って、倒れた女の子を最後まで面倒見ないで帰るなんて、出来ませんよっ!」
と建前は御立派なことを言っておく。
本音はもちろん、違う。
うぉぉぉ、デートだよ、でーと。
『運ちゃん、近くのラブホテルに向かってくれ』
『へい、ガッテンだ。 なんなら二時間後に迎えに行きましょうか?』
『彼、あたし相手なら夜通し頑張れるんですって! だから明日の朝迎えに来てちょうだい』
『くはぁ、若いねぇ、あんちゃん。 羨ましいぜ!』
なんてな!
そうして、後部座席の左に姿勢良く座るトーコさんを右横から眺めてニマニマしていたら
「逃げなかったのは偉いわ」
俺を見て微笑んでいる。
「甲田さんをね、ちゃんと踏ん張って守ってたじゃないの」
「ま、まぁ。俺はやるときゃヤル男ですよっ」
こ、この流れは?
『男なんて口ばっかだと思ってたけど……』
『中には俺のように行動で示す男もいるサ』
トーコさんの両膝を右手で割りスカートの中に手を入れ、左手はトーコさんの肩へ廻す。
『あ……』
トーコさんを抱き寄せ、そのまま麗しの唇にキスをする。
『天太君……』
「男なんて口ばっかだと思ってたけど……」
「な、中には俺のように行動で示す男もイルサ」
うぉぉぉぉ、妄想と同じシチュ!?
俺は興奮で少しカミカミだ。
ここぞと、トーコさんの両膝を右手で割りスカートの中へ差し入れフトモモに触れる。
もちろん左手でトーコさんの肩を抱き寄せた。
「あ……」
トーコさんは抱き寄せられるまま。
俺の胸元に両手を持ってくる。
俺は口をムニュっと出してトーコさんへキスを落とそうとした。
右手はフトモモの上へとどんどん差し入れている。
「天太……」
うぉぉぉぉおおおお! とうとう俺を呼び捨てに!?
トーコさんは手を俺の胸から首へ廻して……
俺の右手はフトモモを撫でつつ、一番の奥へ届こうとしていた。
「調子に乗るな」
トーコさんは俺の襟元を手で掴むと、グルンと手首を捻り……
あぁぁぁ、いい気持ちだぁぁぁ~~
『あ、アンッ 天太、天太ぁ』
『感じ易いんだ? トーコさんって』
『だって、だって、あたしソコ弱いのぉ』
『もっともっと感じさせてあげるよ』
さっきは危なかった。
一瞬早く、俺の右手がトーコさんの敏感なところに触れ、そこから先は俺のターン。
俺のテクでトーコさんの抵抗はあっというまに崩れ去る。
アンアンあえぐトーコさんは、完全に脳乱状態だ。
『ここか?ここがイイのんか?』
『ぐふ、ぐふ、ふふふふ……』
「ふふふふふ……」
身体がガタンと揺れたような気がした。
俺は自分の笑い声で目が覚める。
目の前には濃紺の色した手触りのイイ何か。
ふわりと良い匂いがする。
「ん~ トーコさぁ~~ん」
これ、膝枕?
目の前のそれがスカートだと解ればやることは唯一つ。
目の前の両フトモモで出来た三角形の窪みに顔を押し付けた。
「よっぽど、死にたいようね?」
ぴょんっ
と飛び起きる俺。
タクシーはいつの間にか病院の正面玄関に到着していた。
◆◆◆
襟で頚動脈を止めて落としてやった。
それなのに、幸せそうな顔して失神している。
とりあえずは本日の殊勲賞だから、膝枕してあげたけど。
このお気楽な顔を見てると、バカバカしくなってくる。
「頭大丈夫かしら? この子」
どこかオカシイんじゃない?
普通、親しくもない女性のスカートに手を入れる?
盗撮がバレて、まぁ、最初から気付いては居たけどサ。
あれだけ踏み付けてやったのに。
懲りもせずまた同じことをしてくるなんて。
後先考えられないのか、ただのバカなのか。
でも……
守護霊二体が死亡するほどの相手だったのに、この子は逃げなかった。
口先だけなら「女を守るよ」なんて、誰でも言える。
実際の場面に出くわした時、逃げずに踏ん張れる男が何人居るだろうか?
どうやら、攻撃事前察知系のスキルを身に着けたみたいだけど。
でも、PvPにおいてそんな物を騙すのなんてワケはないのだ。
さっきの襟締めを察知出来なかったところを見ると予知系ではなく観察系スキルのようだ。
写真を趣味にしているようだから本人の鋭い観察眼から派生したスキルなのだろう。
まだまだ知識不足だし、荒削りだが、将来性はあるのかも?
メゲないのはある意味で高ポイントだしね。
ま、意識も失ってることだし、膝枕なら良いだろう。
夜の闇の中、タクシーの窓に映るあたしの顔は笑っていた。
あらやだ。顔が緩んでるわ。
それにしても。
甲田珠璃犯行説はだいぶ遠のいた感だ。
今回の侍大将は、一連の事件で共通する殺害方法とはあまりにも掛け離れている。
あれでは刀傷は残せても、大型獣のような咬傷とはならない。
仲間総出で探してるのに、まだ犯人のシッポが掴めない。
つらつらと考えていると、タクシーが病院の正面口に着いた。
ふぅ。
甲田さんには悪いことしちゃったな。
犯人の可能性があったから泳がして様子を見ていたのだけど、結果として救出が遅れた。
せめて病院からの帰りは送っていってあげるとするか。
「ほら、起きなさい」
ゆさっ ゆさっ
「ふふふふふ……ん~ トーコさぁ~~ん」
きゃっ
どこに鼻を押し付けてるのよっ!?
こ、このぉ~
「よっぽど、死にたいようね?」
ぴょんっ
とゼンマイ仕掛けのように飛び起きてくる。
あっはっは、ばぁ~か
外来の人が居なくなり、暗くなった病院内を二人で歩く。
「とりあえず、あたしを盗撮してないって嘘をついたのは覚えてる?
あんた今日から下僕よ、下僕。 これからは天太って呼ぶからね」