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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
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トーコさんと連続猟奇殺人事件①

1話⇒2話⇒3話……と昇順に書き進めるのが苦手です。

1話書いては5話目を書いてから4話目を……と書きたいお話から

ランダムに書くスタイルの方が、わたしには合ってるようです。


何が言いたいかと言うと、所々お話が虫食いで「これから書くわ」

という話数がありますので、そういう所は投稿に時間が掛かったり

しちゃったり。ということで一つヨロシク。


 藤井陶子(ふじい・とうこ)警部補は、大学卒業後の新人研修を経て警視庁刑事部へ着任したばかりの新米刑事である。いわゆるキャリアと呼ばれるエリートだが、現場叩き上げの古参刑事達から見ればまだまだヒヨッコの見習いであることは間違いない。

 着任してようやく半年が経ち、刑事と言う職業に慣れて来た頃に、藤井陶子は近頃世間を騒がせてる連続猟奇殺人事件の捜査本部付けとなった。


 その事件は、これまでに6件発生し、同数の惨殺死体が都内各所から発見されていた。

 今のところ発見された場所および時間、被害者の関連性は全く掴めて居らず、通り魔的犯行と見られている。殺害時刻はいずれも深夜から早朝にかけて行われていた。


 しかし、通り魔にしてはその殺害方法が尋常ではなかった。

 被害者は大型の獣に噛み殺されており、性別すら判別出来ないほど損傷していたからだ。

 6件全て同じ状況だった。


 警察では、都内動物園の猛獣や、違法輸入でもたらされた大型獣が逃げ出したのでは?との見解で捜査を展開していたが、これまでのところ有力な情報はもたらされていない。


 人を噛み殺せるほどの大型の猛獣にしては、それらしい目撃情報が皆無であり、それほどの凶暴な猛獣の移動には人間が関与している可能性も挙げられているが、非常線による車両検査でも発見に至って居ない。




 そんなある日、出勤した陶子は同じ事件に関わっている先輩刑事が朝からサングラスを掛けていることに気付いた、映画マトリックスの主人公のような形状だ。


「センパイ、おはようございます。朝からオシャレですね」

 縦社会の警察組織において、陶子は警部補とはいえ見習い期間中の身である。

 先輩をたてた呼び方を行うのは、人間関係の軋轢を配慮した当然の知恵だ。


「おう、藤井か、おはよう」

「雰囲気変わりますね、そのサングラスを掛けたセンパイは」


「はっはー、似合うか? これで我が刑事部の愛すべきメガネちゃんこと藤井とお揃いだな」

「あたしのメガネもファッションではありますけど、さすがにサングラスは行き過ぎだとボスに怒られませんか?」


「藤井のその服装ほどじゃねーだろ……、それに誰もこのサングラスには気付いてくれねーんだ、藤井だけだぜ?褒めてくれたのはよ」

「お言葉ですがセンパイ。この服装は見た目の『御堅さ』より『気安さ』を優先した結果です。パンツスーツの女刑事なんて典型的スタイルでは、ただでさえ市民と直に接しなきゃならない刑事職なのに、敬遠されてしまっては業務の効率が上がりませんよ?」


 陶子の格好はフェミニンなブラウスとスカート姿だ。

 もっとも指摘されているのは海外ブランドのオーダーメイドによるお値段の方なのだが。




「それで、どうした心境の変化ですか? そのサングラス」

「コイツはな、夕べ23時頃に路上で挙動不審な男にバンかけ(注:職務質問のこと)した時に、そいつはどうやら直前に喧嘩して軽い怪我してたみたいだが、怪我の程度も軽いし、任意同行するほどでも無いと判断したんだ。そしたらコイツを要らないからって俺に放り投げて寄越してさ」


「素敵なサングラスですね。 でも職質した相手から物を受け取って、さらにそれを私用で使っても大丈夫なんですか? 普通、警官に不要だからって物を渡さないでしょう?」

「おいおい、賄賂とか脅迫罪を心配してんのか? 今回は相手がコイツをもう持って居たくねぇ、一秒でも早く手放したいってぇから受け取ったんだぜ? 問題はコイツが唯のサングラスじゃ無かった。って処なんだけどな」


「貰ったんだからタダじゃないですか、それとも、どこかのブランド物なんですか?」

「かぁーカッテェ、藤井カッテェよ。さっきからコッチコチで委員長サマのようだぜ? しかも、そこはかとない険を感じるのは俺の気のせいですかぁ? その服装の様に柔らかくしてくれよ」


「それは失礼しました、他意は無いのですが。それよりも唯のサングラスじゃない、とはどのような意味でしょう?」

「あー、それなんだがな。 お前、このサングラスを掛けて何か見えるか?」


 サングラスを渡してくるので、陶子はそれを受け取って顔に掛け、そして言った。

「なんてこと無い普通のサングラスですね。 何か見えるかと言われれば、普通に物は見えるのですけど?」

「だーよなー、他のヤツラにも確認したんだが、それ掛けて変な物が見えるのはどうやら俺だけらしいなぁ」


 陶子はサングラスをセンパイに返すと、

「変な物ですか? 例えばどんな?」

「あー、いや、いい。気が狂ったとか思われるしな。忘れてくれ」


 陶子が軽く小首をかしげると、

「それはともかく、藤井は今日も可愛いねぇ、今晩一緒に飲みに行かねぇ?」


「お断りします。それよりミーティングの開始時間10分前ですよ」

「速斬りかよっ。 ん~じゃ今日も頑張りますか」




 捜査に進展は無く二週間後、その先輩刑事から陶子は、とある業務協力を依頼された。

「藤井、ネット使ってPKクラン《ビシャス・クロス:Vicious Cross》とか言うのを探してくれないか。『悪意の十字架』とかいう意味だな。ネットに載ってるとは思えねぇが念のためだ」


「……はい。確認ですが、PKって何かの略称ですか?」

「プレイヤー・キルとかプレイヤー・キラーとかっての頭文字だな。 オンライン・ネットワークゲーム、それも対戦ゲームなんかで使われてる言葉だ」


「そのPKクランのビシャなんとかってのが今回のヤマに絡んでいるのですか?」

「《ビシャス・クロス》だ。まだ判らん。 ただ被害者の一人と交際していたって人物からの話では、ガイシャがそのPKクランメンバーの《レイディ》って人物とトラブルを起こしたコトがあったらしい。何でもゲーム中に一方的に殺されたとかで、仕返ししてやるとか息巻いてたようだ」


「対戦ゲームでやられたからって、仕返ししてやるですか? ずいぶん幼稚ですね」

 陶子が呆れた顔していると、


「冷静に考えるとそうだけどな。PKされる側からすると迷惑行為なんだろ」

「そのPKクランですが、ネットワークゲームなら運営団体に事情を話して情報提供を受けるわけには行かないのですか?」


「ああ、そのネットワークは通常のインターネットとは異なるようで、運営団体を探ろうにもネットそのものが不明っつー、やっかいな代物なんだ」

「アクセスポイントとか、サーバーのログから追いかけられないのですか?」


「インターネットじゃねぇし、無線通信だと思われるが電波の送受信もされてねぇことはサイバー犯罪対策課に確認したしな。つまりどうやってアクセスしてるのかも判らねぇってことだ」

「なんですか? それパソコンの話じゃないんですか?」


「このサングラスだよ。信じられっか? このサングラスにはパソコン並みのハイビジョンで高精細画面が今も表示されてて、それが俺にしか見えねぇってことによ」

「つまり、そのサングラスはネットワークの端末なのですか? なのに通信のための電波がなんらかの隠蔽技術を使われていて検出できないと?」


「そういうこった。エックス線でサングラス内部を確認しても、普通のサングラスにしか見えねぇとよ。レンズも普通のプラスチックレンズで表示機の機能なんて欠片もねぇそうだし、通信するためのチップも何もかも存在してねぇと来たもんだ」

「センパイ、通信チップも無いし液晶でも無いし電波も発信されてないのに、通信端末だとか高画質な画面だとか、おまけにセンパイにしかそれが見えないって、それ何かの冗談ですか?」


「言われると思った。ウソじゃねーんだがなぁ…… とにかく調査頼んだぞ」




◆◆◆




「ケイジサン、情報料代ワリニ、アクセサリー買ッテッテヨ」

「ちっ、その代わり、次はもう少しマシなネタ頼むぜ?」


 俺は夜の新宿裏通りで、なじみの情報屋から事件に関係しそうな目撃情報の聞き込みを行い、アラブ系外国人であるそいつが開いているアクセサリー露店から目に付いた指輪を買ってやった。

 これも付き合いだわな。


 赤い小さな石が付いたその指輪を手でもてあそびながら、

「やる相手なんざイネーっての」

 独りごちる。


 思い浮かべるのは、綺麗な顔した後輩刑事の笑顔……


 やれやれ。

 最近の俺は、ちと焦りが出てきてるなと、自分で自覚していた。

「ま、俺はしがないヒラ刑事、向こうはキャリアの警部補サマだしな」


 わずかの間に、彼女は警部、そして警視へと出世街道を駆け上がって行くのだろう。

 そうして、俺のことなんざ直ぐにでも忘れちまうに違いない。

 その時が来ることを考えると、妙に悔しいし、寂しい。


 ヒラ刑事の悪あがきといやそれまでだが、このサングラスに映る不思議な光景とそこから得られる情報を元手に、少しでも功を立てようと足掻いている。才媛の彼女からすりゃ俺なんざ、さぞ滑稽な小物だろうよ。

 誰も信じちゃくれないが、この不思議なサングラスの特異性から、神出鬼没の犯人に迫れる気がするんだ。刑事のカンってやつさ。


 被害者の一人がノートに書き残していた内容から、被害者が遊んでいたゲームが《Unreal Ghost Online》なのだと、このサングラスを持つ俺にだけは直ぐ判った。

 サングラスを貰って最初に掛けたその時に、俺の目の前へと突然現われた《守護霊》とか言うヤツから色々教わりながら二週間。最初レベル1だった《守護霊》も今ではレベル7まで育った。

 そういったゲーム初心者へ教えてくれるイロハを、チュートリアルとか言うらしい。


 俺は、最近の恒例行事と化してる《Unreal Ghost Online》のチャット・ウィンドウを開いて、そこを流れる真夜中の噂話ってヤツをチェックしだした。



自分は小説の修行のために投稿しているのではなく、好きなものを書く、というのが原動力です。

そのため、ストーリーを批判されても直す予定も無く行き場がありませんので、スルーして頂くのがお互い楽な道だと申し上げておきます。

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