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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
トーコさんの騒霊な日々
13/51

トーコさんと初めてのXXXX②


 俺達三人が小道に足を踏み入れたと同時に、AR表示されているシステム・ウィンドウにメッセージが流れる。そこには《You enter the instance dungeon》と表示されていた。


 俺はそのメッセージを確かめてから、《アリアンロッド》をドール・サイズから人間サイズへと戻した。ぐんぐんぐんっ、とアリアンロッドが大きくなる。

 珠璃はそれを見ると、


「お人形サイズの《アリアンロッド》って可愛いよねー、羨ましいなぁ。あたしもその《守護霊》スキル欲しい!! どうやったらその人形サイズにするスキルが身に付くの?天太」

「へ?これって《守護霊》なら誰でも出来るんじゃないの?」


「出来ないわよー、あたしもメニューあちこち探したけど無かったもん。あんただって、あたしが使ってる《守護霊》スキルの《シースルー》は使えないんでしょ?」

「……なに?その漢心をくすぐる便利そうなスキル?」

「シースルー……?」

 あ、そう言えばスキルについてはトーコさんに教えてなかったっけ?


「トーコさん、《守護霊》は成長するとスキルってのが使えるようになるんだよ。人形サイズにするスキルは《ダウンサイズ》ってヤツね」

「《シースルー》は、壁なんかを透かして見ることが出来るスキルなのよ」

 珠璃も自分のスキルを説明する。


「もしかして《シースルー》って、洋服とかも透過できんのかよ!?」

「ふっふっふ。 あたしのダイヤモンド・アイからは誰も逃れられないのだ」

「知らねーよ、マジかよ!? トーコさんのスミズミまで見れてんのかよ!!……写メく……イエ、なんでもありません」

 い、いま、トーコさんから殺気を感じたヨ!

 それ以上一言でもしゃべったら殺す。って目だったヨ!!


「なるほど、それじゃぁ柏木君が《シースルー》なんてモノを使えるようになった日には、女性はおちおち外を出歩けなくなるわね」

「あっはっは、だよね~、天太がそんなスキル持ってたら悪用しないわけがないもん」

「くっそー、なんで俺にそのスキルが無いんだよ」




 そんなクダラナイ馬鹿話をしながらダンジョンの中を奥へと進む俺たち。

「っと、あの先が最初の2体の所だったよね?」

「ああ、たしかレベル4が2体だっけかな? トーコさんは最初見学しててよ、さすがにレベル1の《エルジェーベト》じゃ、レベル4には勝てないからさ」

「そーそー、あたし達でパワーレベリングするから、すぐに戦えるレベルまで上がるわよー」


 とたん走り出す珠璃の守護霊メルカルト

 おっと、俺も出遅れちゃカッコ付かないぜ。続いて《アリアンロッド》を突っ込ませる。


 珠璃は右側の《虚腐鬼Lv4》に狙いを定めたようだ。名前に《虚》が付くのが虚霊な。

 それならば、俺は左側《虚屍鬼Lv4》に初撃を与えるべく《アリアンロッド》を動かす。


 《メルカルト》が最初に右側のゴーストへ打撃を与えると、左側のゴーストも《メルカルト》へ攻撃すべく反応する。攻撃を受けた側だけじゃなく、その近くに居る敵まで反応することをゲームでは『リンク』と言う。


 このままにしておくと《メルカルト》は2体とも同時に相手をするハメになる。

 《アリアンロッド》は一瞬遅れてターゲットしておいた左側の敵へ一撃を加えた。

 とたん、《メルカルト》へ向かおうとしていたその敵は《アリアンロッド》へと向きなおす。


 よし、上手く行った。

 俺は目標を右側(・・)の敵へとターゲットを変更する。

 そして《メルカルト》と殴り合いとなっている右側の敵の真後ろへと《アリアンロッド》を移動させる。左側の敵は無視だ。

 《アリアンロッド》は俺の意思通り、一瞬で右側の敵の真後ろへつけると《メルカルト》と敵を挟む形でフォーメーションを取る。


 敵背後を取り、そこからの攻撃は大ダメージを与えることがあるんだ。

 だから複数で敵を攻撃する場合には、こういう風に敵を間に挟んで戦うのがイイんだ。


 《メルカルト》と《アリアンロッド》のLv10コンビ二人掛かりで、Lv4のゴーストを殴ればあっという間に1体を葬り去る。あれ?相手は死者だから葬るってのは変かな?ま、いいか。

 《アリアンロッド》が引き受けていた残るもう1体へ、今度は《メルカルト》が後ろに回り込み同じように倒してしまった。


「なかなか良いリズムで戦えたねv」

「まぁな。レベル差もあるし瞬殺だな」

 いまの2体を戦わずに見学していた《エルジェーベト》もパーティー経験値が加算されてるハズだし、この調子でもう数体倒せばレベルアップするだろう。


「《守護霊》サマが戦って、プレイヤーは後ろから指示をするわけね」

 振り向くと、見学中のトーコさんは《エルジェーベト》と並んで立っていた。


「そうだよ。俺らの代わりに戦うのが《守護霊》ですからね」

「うんうん《虚霊》たちはザコでも攻撃力がハンパ無いから、【霊障:バックラッシュ】を受けると、痛いじゃすまないからさ~」


「ふーん、そうなんだ?」

 奥を見つめながら何かを考えていたトーコさんは、そう生返事をすると、


「それじゃ、次はあたしの番ね」

 と言うやいなやトーコさんは駆け出して、おもむろに奥の敵へ突っ込んで行く。




「ちょっ!?」

「うわっ、相手Lv4だよ!! Lv1のエルじゃ勝てないってば!!」

 相手はこの辺りのザコとはいえ、単純計算でエルの16倍強いんだってば!!

 驚いた俺と珠璃はトーコさんを止めるべく叫んだ。


「トーコさん、無茶よっ」

 珠璃はそう叫ぶが、

 トーコさんは《虚邪鬼Lv4》に近付いたと思ったその瞬間。

 右下段蹴りを敵に放……ったと思った時には軸足だった左足で敵の右顔面へ廻し蹴りの2段蹴りを入れてた。右そして左の、目にも留まらぬ空中での2段蹴りを綺麗に決めてしまった。

 《虚邪鬼Lv4》はそのコンボ技で頭部が吹き飛び、続いてポリゴンが爆散する。


「んなアホな……」

 守護霊を戦わせようとせず、プレイヤーがまっさきに戦うなんて……こんな戦い方ってアリ?




 辺りにレベルアップのエフェクト音が鳴り響き、《エルジェーベト》がLv2へとレベルアップしたことが判った。

 俺はすかさず、おめでとう、と言うつもりだった、が、続いて聞いたことがないエフェクト音が響き渡る。驚いているとさらに、3回目のこれまた聞いた事の無いエフェクト音が鳴り響いた。


「何だ?今のエフェクト?」

「3回鳴ったね?」

 珠璃も聞いたことがないようだ、しきりと首をかしげている。

 意味のある効果音ならシステム・ウィンドウに何かメッセージが出ているかも知れない。

 俺はそう思って表示されている文字を読むと……


 システム・メッセージ:《エルジェーベト》がレベルアップしました。


 最初のエフェクト音の時のだ、これは知ってるから良い。

 聞きなれた効果音で、すでに判ってることだから。

 問題は次の2行。


 システム・メッセージ:《エルジェーベト》がレシオアップしました。

 システム・メッセージ:《エルジェーベト》がランクアップしました。


 なんっじゃ、こりゃーーーーっ!?


 俺の目の前で、何かトンデモ無いことが起きた。

 《エルジェーベト》をターゲットして見ると、確かにネームタグにLv2と書かれている。

 さらに、ヒットポイントを示すHPステータスバーが《アリアンロッド》のバーよりも少し長い、それだけじゃなく、HPバーそのものが時折キラキラと輝いている。


 HPバーが長いのはランクがノーマル級より高いエリート級だということを示し、キラキラ光るのはレシオがユニーク級だということをこれ以上なく物語っていた。

 つまり、先ほどまで《エルジェーベト》はLv1メジャー・ノーマル級だったけど、

 今ではLv2ユニーク・エリート級だということだ。


 なのに、それを引き起こした当の張本人であるトーコさんは、

「このあいだ観た世界選手権のロシア選手の今の技は、もっとキレが良かったわね」

 とか言いながら、先ほど見せた2段蹴りをシャドウ・キックしながら戻ってくる。


 あっ いま見えそうだった! くそー、おし~~ぃっ

 じゃぁ、なくて!!



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