トーコさんと初めてのXXXX①
「《Unreal Ghost Online》に限らないだろうけど、パーティーを組んだ方が安全に狩りを進めるには楽な道だってのは判るよね?」
俺の説明に頷くトーコさん。
「UGOでパーティーを組むためには、パーティーメンバーお互いが1キロ圏内に集まってないとダメなんだ。1キロ以上離れてるとパーティーに招待出来ないシステムになってる」
「それに《守護霊》に寄り添ってないとプレイヤーは指示を出せないしね」
俺の説明に、珠璃も補足してくれている。
「UGOはPKもシステム的に許されてるからさ、見知らぬ多人数が集まっちゃうと中にはよからぬヤツが居たりするんだ、んで、どうしてもUGOだとプレイヤーは顔バレになっちゃうからね、個人情報を明かしたくないってヒトが大多数だからさ、結果パーティーでも人数集めしにくくて、必然、まっとうなプレイヤーはパーティーを組まずにソロ活動が多くなる」
「PK集団ってのはやっぱ他のプレイヤーを襲うような大胆なヤツラだから、顔バレなんて怖くないって割り切ってるヒトが多いらしいのね。ますますソロプレイヤーじゃPK集団に対抗出来ないようになって、今じゃ高レベルプレイヤーはPKに占められてると言っても過言じゃないのよ」
「そんな訳でまっとうなプレイヤー達は、個人情報を晒したくないからソロプレイで低レベルから抜け出せず。PKは高レベルで徒党を組むってスタイルが定着しちゃってるんだよね」
珠璃もウンウンと頷いている。
「効率の良い狩場ってのは季節によって変わるらしいんだけど、そういう美味しい場所はPK連中に独占されちゃってるし」
俺と珠璃は、PKが如何に酷い連中か、半ば愚痴るようにトーコさんに話す。
話が一区切りしたところでトーコさんは帰り支度をはじめてしまう。
「それでは一通り質問は終えましたからこれで失礼します。お二人ともこの後は帰宅されるのでしょうか?遅くならないようにしてくださいね。捜査へのご協力ありがとうございました」
「「えぇ~~っ!?」」
「トーコさん、せっかくだからUGOして行きましょうよ、ほら、事件は現場で起きてるとか言うでしょ? それで何か得られるかも知れないしさ」
「そうそう、やりもしないで新しい発見なんて無いってば」
さっさと引き上げようとするトーコさんを、俺と珠璃の二人掛かりでなんだかんだと言って引き止めた。俺はトーコさんとこれっきりになるのがイヤで、なんとか今以上にお近付きになれるよう頑張っているわけだが……珠璃は何でだろう?
「トーコさん、せめて一度は《Unreal Ghost Online》を遊んでみるべきだと思うの。 そうじゃないと亡くなった刑事さんがこのゲームに何を見たのか解らないで終っちゃうでしょ?」
「……そうね、判ったわ。 それじゃ、何かお勧めの敵とか場所とかある?」
なんだろう?
どうにもトーコさんは、ここからさっさと切り上げて帰りたがっているように見える。
というより、UGOで遊ぶのが面倒だと思ってるようだ。
幽霊が不気味だから、ってことでは無いようだけど……??
さっきから隣の不気味少女、あらため、美少女守護霊とはずっとニコヤカに会話しているのだから。
会話というか、《エル》はコクン、ふるふると声を出さずに返事をしているだけだけど。
それじゃぁと、出逢った記念にパーティーを組んで、手頃に戦える場所へ行こうとなった。
挑戦するのはインスタンス・ダンジョン。
インスタンス・ダンジョンってのは、プレイヤーがお手軽に戦えるよう、プレイヤーの目の前に任意のダンジョンを開らいて遊ぶことが出来るUGOのシステム・サービスの一つだ。
そうじゃないと、長々と敵を探し続けなきゃならないし、見つけた敵が自分のレベルに丁度良いかどうかも運次第となってしまう。
UGOでは歩き回るのは結局プレイヤー生身の本人だから、長時間探し続けると疲れちまう。
自分のレベルに応じて選べるインスタンス・ダンジョンはすっごく助かるサービスなんだ。
とは言っても、インスタンス・ダンジョンはお手軽に敵と戦えるとは言え、一度中に潜れば全ての敵をクリアするまでたっぷり2時間は掛かるだろう。
それだけトーコさんと長く話して居られるってワケで、珠璃の選択はナイスだ。
俺はコッソリ珠璃に見えるよう、親指を立てGJと合図を送った。
俺達3人は店を出て、
「んじゃ、俺がリーダーで開くよ、Lv7ダンジョンの《迷い小路》で良いかな?」
「あたしは何でもイイよ、天太」
「お任せするわ」
俺はパーティーメニューアイコンをポップさせ、そこからメニューを辿り珠璃の守護霊と、トーコさんの守護霊を自分のパーティーに招聘する。
『ピッ』
システム・メッセージ:メルカルトLv10をパーティーに招待しました。
『ピッ』
システム・メッセージ:エルジェーベトLv1をパーティーに招待しました。
直ぐに二人がパーティに加入したメッセージも流れ、これでパーティを組んだことになる。
サングラスの左上にパーティー・ステータスが表示され、《メルカルト》と《エルジェーベト》が追加表示されていることを確認して、システムメニューから『ダンジョンを開く』を選び、俺が今のレベルで開催可能となっている幾つかの候補から《迷い小路》を選んだ。
建物と建物の間、一瞬前までただの壁だった場所が、まるで空間を引き伸ばすかのように歪み、何も無かった場所に小道が出来上がる。
お手軽なインスタンス・ダンジョンの出来上がり!!っと。
ここから先、ダンジョンから出るまでサングラスを外しちゃうとログオフしたと見なされ、ダンジョンから弾き出されてしまう。
まぁ、AR表示のダンジョンだからな。現実に無いはずの小道に本当に入り込むワケじゃなし、矛盾を解消するためにはダンジョンから放り出す以外にはないワケで、これが仕様なのだろう。
見慣れてる珠璃はともかく、トーコさんはこの不思議な現象にも特に驚いた風ではなかった。
変だなぁ、俺の予想じゃ……
『な・なにコレ? さっきまで普通だったのに大きいダンジョンがっ』
『トーコさん、これが漢のダンジョンさっ』
『そ、そうなの? なんか怖い……あたし達、コレに飲み込まれちゃったりしない?』
『大丈夫、これは俺のダンジョンだから守ってあげるよ(☆キラッ) むしろ飲み込んで?』
『アンッ、天太君って凄く頼もしいのね。 無事あたしを守ってくれたら、後でお礼に天太君の、飲んであげるわね(うふっ)』
『飲まれるのも良いけど、ダンジョンも探求したいな』
『まぁ、天太君ってば。 あたしのダンジョンにはまだ誰も入ったことが無いのに……イイワヨ、天太君がハジメテの相手なら。 それじゃ恥ずかしいけどダンジョン開くわね?』
『よーし、固く閉ざされた入口をこじ開けて中に入れるよっ、そして一気に奥までっ!!』
「天太ぁ、もちろん一番奥までイクんだよね?」
「あたりまえだろっ、一番奥のキツイところを何度も経験して、ソコいいっvってなるまでヤってヤってヤリまくって、らめぇ今日奥は危険なのぉって言われても、そこでイクのが漢だっ!!」
「は? アンタなに言ってんの?ちゃんと聞いてた? 初心者のトーコさんが居るから一番奥まで行くかどうかを聞いてンだけど?」
「むしろっ、トーコさんが初心者だからこそっ、初体験は一番奥までイカないとっ」
「柏木君って……そろそろ性犯罪者のブラックリストに載せてもイイかしら?」
「……むしろ、そうしてください」
な・なんだよっ!? 二人してその目は……