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トーコさんの騒霊な日々  作者: 氷桜
プロローグ
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それが始まり

初めての方、はじめまして、氷桜ヒオと申します。

色々と前小説から設定を流用してますが、全然違う話です。

今を逃すと小説中の季節とズレてしまうので、連載開始しておきます。

楽しんで頂けると幸いです。


 都会の喧騒も、その路地にまでは届いていないようだ。


 路地を南に通り抜ければオフィス街が、北に抜ければ最寄駅へと続く繁華街へ出られる。


 昼間なら、サラリーマンやOLたちがひっきりなしに利用し賑わうこの路地も、深夜ともなればオフィス街からの人通りも途絶えネオンの明かりさえも照らさず、防犯対策などがポッカリと忘れ去られているかのような寂しい場所となってしまう。


 けれど、その晩のこの静けさは普段に比べても異常だった。

 まるで何者も寄せ付けない結界が周囲に張られているかのごとく。


 閑静で昏いその場所で、うねうねと蠢く巨大な陰がある。

 其れは大蛇だった。

 三つの頭を持っていた。


 毒々しい緑色が斑に輝く鱗を持ち、三頭それぞれの口からはチロチロと覗く赤い舌。

 一つ目の口から吐き出される息には、時折炎が見え隠れしている。

 二つ目の口から見える牙から垂れる液体は、地面にぶつかると『ジュッ』と音がした。

 三つ目の口を開き、鮫のような鋸状の歯並びを見せ付け、如何にも凶悪で獰猛そうだった。


 先ほどまで、この路地には人間が二人立って居た。

 今では独りしか立って居ない。

 もう一人は、いまや物言わぬ躯となってアスファルトに転がっていたから。


 残された人物は、笑っていた。

 まるで狂ったかのように。


 誰も来ない暗い路地。

 その耳障りな笑い声はいつまでも続いていた。

 いつまでも、いつまでも……


 大蛇はその笑い声に反応せず、ただ佇んでいた。




◆◆◆




「引退?」


 その日、あたしは前々から考えていたMMORPGの引退を、大好きだったそのヒトに伝えた。

「ええ、あたしもそろそろ大学入試を本気で考えないといけない時期だから」


「そっかぁ、せっかく知り合えたのにね」

 あたしは、ゲーム内で知り合ったこの女性が好きだった。


 チャットで、あたしは文字をキー入力してたが、このヒトはボイス・チャットを使ってた。

 この声が大好きだった。

 そのため、近頃では暇なときはこのヒトがいつも居る酒場でチャットして過してた。

「それなら、このURLアクセスしてみてよ。リアルでも遊べる面白いゲームが在るから」


 そう言って、あたしに文字のような何かが描かれたカードを渡して来たので受け取る。

 だから、なのかも知れない。このヒトに言われたのじゃなければ無視してただろう。

 受験を控え勉強するためにネトゲを引退するのだから。






 結局、紹介されたそのゲームに手を出してしまった。orz

 他人に言われる前に自分で言うわよ、この廃人め、ってね。


 こんなんで、あたしは志望する大学に合格出来るのだろうか?

 まぁ、人生なるようにしかならないのよね。






「配送でーす」

「はーい!」


 キタキタキターーッッ!!

 あのヒトから教えてもらったゲームは、新しいタイプのオンラインゲームだとの振れ込みだ。

 その運営サイトから購入したモノが今日ようやく家に届いたのよ。


 初期投資で一万円が必要だというその新しいゲームは、運営サイトのHPを読んでも内容が全然伝わってこなかった。正直ホントに面白いのかは謎に包まれたままだ。

 大好きだった彼女からの御推薦だったので騙されたつもりで高いお金を払う気になったのだ。

 たかだか一万円とは言え、17歳になったばかりの身の上には大金なのよっ。


 包装を解いて箱を開けると現われたのは、真新しい綺麗なサングラス。

 形状はいわゆるアラレちゃんタイプ。そういう形を選んだ。

 あたしの視力は両目とも1.5なので、レンズに度は入ってない。

 レンズの色は普通にグレー。綺麗に反射光を押さえた落ち着いた色をしている。


 あたしはゲームでも何でも、マニュアルを読まずに始める人間である。

 まずゲームを起動してあれこれ試しながら徐々に内容が判って行く過程が楽しいのだ。

 ゲーム紹介のHPには、サングラスがネット端末として動作するゲームだと載っていた。

 箱の中にいかにも分厚いマニュアルが入っていたが、とりあえずサングラスを掛けてみる……


 ついさっきまで誰も居なかったあたしの部屋の中に、見たこと無い誰かがヌッと立っていた。

 あたしの目の前、いわゆる恋人距離にその人物は立っている。


 「うわぁっ だ・だれぇっ!?」

 あたしはビックリして思わずサングラスをその人物へ投げつけ……たが、目の前には誰も居なかった。投げたサングラスは部屋の反対側の壁にぶつかって床に落ちた。


 「あ、あれぇ? 気のせい?」

 キョロキョロしても部屋の中に誰かが居た形跡は無い。

 当たり前だがこの部屋には瞬間的に隠れるような場所は無い。

 玄関にはさっき宅配便を受け取った後に、しっかり鍵を掛けていたし。


 サングラスは壁に当たった衝撃で壊れていた。

 右のレンズがメガネのフレームから外れている。


 「ああっ!!壊れちゃったよー うぅ、高かったのにぃ……」

 一万もしたのよっ!! 遊ぶ前に壊しちゃったじゃないのー しょっくー

 むー、誰も居ない部屋の真ん中で昼間から見知らぬ誰かの幻を見るなんて……


 疲れてるのかな?


 そう思いながら右レンズが外れて素通しとなったサングラスを手にとり、未練がましくフレームを眺める。壊れてしまったからと言ってこのまま捨てるのも惜しい。

 悔しいからもう一度掛けてみた。


 再びあたしの目の前に現われた謎の人物。今度はハッキリと目に捉えられた。

 左のレンズ越しはもちろん、素通しの右目でも消えずに見える……

 銀の髪、青い目、真白い卵型の小さな顔、それはまるで氷で出来た魔性の人形。


 「ぎゃぁぁぁああああああああああっっーーーーー!!」


 今度こそ、あたしは悲鳴を上げた。

 あたしの人生で初めて上げた本気の悲鳴だったと思う。




 どれくらい時間が経っただろう?

「そろそろチュートリアルを初めても宜しいでしょうか?」

 その声で我に返った。 ん?チュートリアル?


「……えっと、あんた、ゲームのキャラクター? もしかしてこのサングラスの?」

 そう言いながらサングラスを外すと、目の前の人物は見えなくなった。

 もう一度掛けなおすと、また目の前に現われる。


 ……おっけー。

 レンズの無い素通しな右目からでも見えるのは謎だけど、サングラスを掛けると見えるようになるのダケは判った。

 目の前にスラッと立つ人物は、ゲームのキャラクターに相応しい物凄い美人さんだった。

 服は古風な……なんというか、お色気たっぷりの《くのいち》風というか、そんな感じ。


「もうお分かりになりましたね? そのサングラスはARMMO形式のオンラインゲーム《Unreal Ghost Online》略してUGOを遊ぶためのツールとなっています」

「ウゴ? つか、そもそもゴーストなのにアンリアルってどうよ?」


「UGOのゴーストは大きく2種類存在します。貴女が《霊》と呼ぶ実在する霊魂と、サングラスを通した時だけ見ることが出来る《虚霊》と呼ばれる実際には存在しないけれど、ネットワーク上のUGO世界にだけ存在するヴァーチャルな霊魂です」

「この世に存在しない、虚霊? ……って霊って実在するんかい!?」


「はい、存在しますよ。そしてそれら2種類のゴースト達は普段は目に映りませんけれど、このサングラスを掛けることで見ることが出来ます。UGOはそう言った虚実の狭間に居る存在を操って戦うゲームなのです。リアルとバーチャルの狭間なのでアンリアルなのですよ」

「見えない者を見る……だから拡張現実AR(Augmented Reality)表示なのね……」


「御理解頂けたようですね。私は貴女が初期保有する《守護霊》と呼ばれる存在です」

「守護霊?」

「はい、名前は《ザ・シャペロン》と言います」


「それ名前と違うじゃん。職業? 名前はユーザーが付ける事が出来るの?」

「ええ、可能ですよ。名前をお付けになられますか? では、どうぞおっしゃって?」

 目の前の人物はそう言うと可愛らしく小首をかしげ、あたしの返答を待つ。


「おっしゃって?妙な言葉使いのNPCね、ふふ。 じゃぁ……《レイディ》で」

「承りました。 レイディです、幾久しく宜しくお願い申し上げますわ」

 両手を前に、綺麗にお辞儀をする守護霊レイディとあたしはこうして出会った。




「それでは最初に、貴女が受け取った『期間限定キャンペーン虚霊配布券』を使用して、虚霊を召喚して頂けますか?」

「何それ?知らないよ? サングラスの箱にはそんなの入って無かったよね?」


「そんなハズ無いですわ。貴女がこのUGOを知るキッカケとなった人物から、贈り物として受け取っていたはずですよ、このくらいのカードです。思い出してくださいな」

 あたしが知らないと言うと、レイディはちょっとあせった風に言葉を返す。


 UGOを知ったキッカケの人物……ネトゲで知り合った彼女……《肉球ぷにぷに君》?

 そう言えば、このゲームを紹介してもらった時、何かを渡されたような……

 って、あれはネトゲの中での出来事だよ?


 いや待てよ? そういや、机の上に置いてあった謎のカードがあったような……

 あれはどこにしまったっけ?

「これかっ!?」

 なぜか捨てずに机の中へ放り込んでおいた変な記号が書かれたカード。


「ホッ、良かったです。ソレが無かったら何のために私が此処に居るのか、存在理由が無くなってしまいますから。ソレは通常のUGOスターター・キットには含まれてはおりません。それを貰ったのは今のところ貴女だけなんですよ」

「……つーと、何かね?あんたはこの配布券に用事があってココに来たわけ?」


「はい、その券は貴女が《肉球ぷにぷに君》と呼んでる異世界神からの特別な贈り物。通常の虚霊とは異なる、特殊な虚霊を召喚する神宝の一種です」

「……ハィ!? ぷにぷに君が神? アレが?」

 あたしは、何いってんの?コイツ、と生暖かい目でレイディを見る。


「あの高貴なお方は、私が仕えるこのUGOのシステム管理者《創生神シータ》様とは何かと衝突というか、お互いの業務妨害と言いますか、トムとジェリーみたいな悪戯をやり合う困った間柄のお方でして……」

 高貴ぃ!? ぷにぷに君がぁ? あのはっちゃけたキャラクターからはとても縁遠い言葉の気がするけどなぁ。

「って、《Unreal Ghost Online》は神サマが運営してんの!?」


「はい、そうです。そして、あのお方から押し付けられた今回の厄介事がその券に封じられた虚霊なのです。私は貴女の守護霊であると同時にその虚霊を監視する役目も仰せつかっています」

「はー、だからシャペロン(付き添い人・監視人の意味)なんだ?」


「そういう事です。もしその券が無かったなら、私じゃない他の誰かが貴女の守護霊となっていたことでしょう」

「あたしも、どうせ守護霊となってもらうなら貴女で良かったわ。ラッキーね」

 そういうと、レイディは薄く微笑んだ。




「んで、どうやってこの券を使えばイイのさ?」

「手に持って念じれば良いのですよ」

 こうかな?


「……なにも起きないよ?? なにか変わった??」

「……なるほど。これはまた厄介な虚霊ですこと…… では、鏡を御覧になって?」

 鏡?

 あたしは姿見に自分の全身が映るよう移動する。

 それを、目にしたとたん、




 「うっ……ぎゃぁぁぁああああああああああっっーーーーー!!」


 今度こそ、あたしは失神した。

 薄れ行く意識で幽かに思った。

 オトメに、これは無いヨ


 …… black out ……



たしかに設定は流用したけれど、眼鏡ネタまで一緒だったとは書き終わってから気付いたよ。

どんだけメガネ好きなんだ?わたしゃ。


自分は小説の修行のために投稿しているのではなく、好きなものを書く、というのが原動力です。

そのため、ストーリーを批判されても直す予定も無く行き場がありませんので、スルーして頂くのがお互い楽な道だと最初に申し上げておきます。

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