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連行

 まるで連行されるように、このまま王宮へ連れていかれることになってしまった。

 寮に荷物を取りに行きたいと言ったら、第二王子は嫌な顔をしたけれど。

 リプトン先生が、女の子なんだから用意ぐらいはさせてあげてほしいと口添えしてくれて。

 逃げられないように、騎士の監視が寮までついてきた。


 突然いなくなったらレオンが心配するかもしれない。

 私がいなくなったら、レオンはまた体調が悪くなってしまうかもしれないよね。

 冒険者ギルドに納品してもらおうと思っていた、ハンカチとお守りの在庫をありったけ袋に入れて、男子寮の受付に預けていくことにした。


「レオン 私は王宮へ行きます。体調が悪くなったらこのハンカチとお守りを使ってください。冒険者ギルドに売らずにレオンが持っていてね(秘密のポケットに)身体に気を付けて。 ルーチェル」


 走り書きの手紙。

 男子寮の受付の人は、いつも私がレオンに手紙や荷物を渡していることを知っているので、快く預かってくれた。

 私の荷物の用意は簡単。

 マジックバッグの中に、キャンプ用品と食料は入れてある。

 それをさらに、腹巻ポケットの中に入れる。

 マジックバッグの中にさらにマジックバッグを入れることもできるのです。

 つまり、腹巻ポケットの中に、全財産を入れられる。

 

 いつか売り物にしようと思って作ってあったマジックバッグがいくつかある。

 これを売れば、数か月は生き延びることができるかもね。

 絶対に見つからないようにしないと……

 本当に、腹巻ポケットはいいアイデアだったと思う。


 まさか、戦争に学生まで駆り出されるなんて思っていなかった。

 でも、神官見習いの学生も連れていかれるぐらいだから、騎士科のレオンだって、いつ召集がかかるかわからない。

 私は死なない加護があるからいいけれど。

 このまま離れ離れになってしまうのが不安で、胸がざわざわする。


「準備はできたか?」


 騎士にせかされるようにして、寮を出た。

 手ぶらだと怪しいので、一応バッグに身の回りのものを入れて、持って出た。

 大事なものは腹巻の中だけどね。


 学園の門のところに、豪華な馬車が数台とまっていた。

 前のほうの馬車に、男子生徒が数名乗り込むのが見える。

 私はひとりだけ、最後尾の馬車に、見張りの騎士と一緒に連れていかれた。

 リプトン先生が、パタパタと追いかけてきてくれて、呼び止められる。


「ベネットさん。ご実家のほうには私から連絡を入れておきます。それからこれを……」

「なんですか? 先生」


 渡された袋の中には、何枚かの銀貨が入っていた。

 リプトン先生は、早くしまいなさいというジェスチャーをしている。


「何かあったときのために持っていなさい。私にできることはこれぐらいしかありません……ごめんなさいね」

「ありがとうございます、先生! 私は大丈夫です。頑張って行ってきます!」


 なんだか、このまま学園には戻ってこれないような予感がする。

 私、どうなってしまうんだろう。


「さきほどの刺繍入りのハンカチは、あなたがつくったのですか」


 ぼんやりと馬車の天井を眺めていたら、一緒に乗っている騎士の人がおずおずと話しかけてきた。


「そうです。授業で作ったものですが……」

「あのハンカチで、ひどいケガが治った仲間がいます。ありがとうございました」

「い、いえ……そんな。たまたまです、きっと」

「王宮ですごい噂になっていました。大聖女候補が現れたと」


 大聖女候補……失敗したなあ。

 目立たないように気を付けていたつもりだったのに。

「目立たない加護」とかも書いておけばよかった。

 魔力無限大なんて分不相応なことを願ったから、こんなことになったのかな。


 こうなってしまったからには、死なない加護というのを信じて、腹をくくるしかない。

 戦争なんて嫌だけど……聖女なのだから。

 戦うわけじゃない。人助けだ。

 騎士様にお礼を言われたことで、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いた。


 聖女らしく振る舞うことにしよう。

 そう自分に言い聞かせていると、馬車は立派な王城の門をくぐった。


 

 馬車を降りると、そこには女官が数名控えていて、来客用の部屋に連れていかれた。

 そして、なぜかお風呂に入って着替えるように言われた。

 女官たちが入浴を手伝おうとするので、丁重にお断りすると、風呂場へ案内された。


 どういうことだろうと思っていたら、王族に謁見するために、身を清めるようにと。

 あまりにも私が小汚く見えたんだろうか。

 毎日ずっと制服で過ごしていたせいか、薄汚れて見えたのかなあ。

 

 風呂場から出てくると、紺色のロングドレスに、顔を隠すベールのようなものが用意されていた。

 どうも、これが聖女の服装らしい……

 何度も教会には行ったことがあるが、こんな立派な服装の聖女は見たことがない。

 ということは、やっぱり私は「大聖女候補」とやらにされてしまうのかなあ。


 着替えているときに、腹巻きポケットの中に、持ってきた荷物を全部隠した。

 いつどこでとりあげられるか、わかったもんじゃない。

 女官に、持って来た荷物はどこかと聞かれたので、馬車の中に忘れてきたと言っておいた。

 まあ、見つからなかったとしても、学生鞄のひとつぐらい問題にならないよね、たぶん。

 

 

※ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

ちょっと今月いっぱい、本業の方が忙しいため、本格的な執筆再開は11月以降になりそうです。

少しの間待っていてくださいね。 ぽふぽふ

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