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結界の授業

 さっそく、寮の生活用品を売っているお店に行って、ハンカチを何枚か仕入れた。

 授業に使うものだから、刺繍道具やスタンプも売っている。

 学園にいれば、お金を使うことはあまりないけれど、いずれは隣国にも行きたいから、お金は稼げるだけ稼いでおきたい。

 レオンがお守り札も人気があると言っていたから、それも作るといいよね。

 

 前世の神社で売っていたお守りのような形の袋を作って、その中に小さい魔方陣の札を入れるようにしよう。

 鞄などにぶら下げられるようにしておけば、便利だよね。

 それ用に白い綿の布とリボンを多めに買っておく。

 作るのにたいしたお金がかからないのがいいな。

 見た目より効能よね、こういうのは。

 

 夕食の後、寮に帰って教科書を見ながら、ハンカチに癒やしの魔方陣を描いた。

 寝る前に二枚仕上げることができたから、一週間に十枚ぐらいは作れるな。

 明日の晩は、お守り袋を作ろう。



 翌日、午後の実技は結界の授業だった。

 女子で結界を選択しているのは私だけ。

 あとは、神官候補の男子が三人。四人だけの授業だ。

 

 結界を使える人は戦闘に参加しないといけないので、女子は皆嫌がっているけど、私はこの結界魔法が気に入っている。

 なんといっても、格好いいの!

 空中に両手で円を描くようにしながら、魔方陣を思い浮かべて祈る。

 そうすると、目の前に物理結界を張ることができるのです。

 これぞ魔法使い!というような格好よさ。

 空中に大きな魔方陣が浮かび上がったときには、感動した。


 物理結界というのは、剣とか矢などを防ぐための結界で、弾力がある透明の膜を張るようなイメージだ。

 まさに、戦争とか魔物退治とかで役立つんだろうな。

 この結界を自由自在に、いろんな形に張れるように練習する。

 たとえば盾のように目の前の攻撃を防ぐこともできるし、ドーム状に結界を張れば、どの方向から飛んでくる攻撃でも防ぐことができる。

 ドーム状はちょっとコツが必要で、最初は難しかったけど。

 自分の真上に魔方陣を出して、そこから包み込むように円錐型の結界を張ると、うまくいった。

 最初にできたときは、三人の神官男子がパチパチと拍手をしてくれた。

 ちょっと驚いたような顔をしている人もいるから、これ以上は頑張らない方がいいよね。

 多分、この三人も私よりは身分が上だし、目立つとロクなことなさそう。

 だいぶ、コツはつかんだので、後は自力で練習したらいいよね。


 少しだけ世間話をしたけれど、神官を目指している男子は、家が神官の家系なんだそうだ。

 嫡男だけは家を継いで、後の兄弟は教会で働くように育てられるらしい。

 つまり、この人たちは次男とか三男とかなんだろう。

 自分自身の周りに結界を張ることができるようになると、次の授業では他人の防御を手助けする練習をするらしい。

 その時には、騎士科の人と合同で訓練するようだ。

 まあ、戦うわけじゃなく、防御の手助けだから危なくはないと思うけど。

 騎士科と合同になったら、もしかしたらレオンに会えるかな、とちょっと思った。


 ◇


 数日後、ハンカチ十枚と、いくつかのお守り札が仕上がったので、レオンの寮の受付に預けにいった。

 学生証を見せて、中身はハンカチと癒やしのお札だと言ったら、すんなり預かってくれた。

 聖女が騎士の人に渡すのは不自然じゃないよね。

 そして、また一週間が過ぎた頃、レオンから連絡があった。

 

「直接話したいから、午後の授業が終わったら中庭で待っている」

 

 そう書かれたメモが、寮に届けられていて。

 たぶん、さっそく冒険者ギルドに行ってきてくれたんだよね。

 ハンカチ、いくらで売れたんだろう。

 考えたら、レオンはこの世界に来てから、最初のお友達だ。

 気軽に話せる相手ができただけでも、なんだかうれしい。


 授業が終わって中庭に向かうと、レオンは木刀を振って訓練をしていた。

 私の姿を見つけると、大きく手を振りながら笑顔で歩いてくる。

 

「お疲れ様。熱心に訓練しているんだね」

「最近、身体の調子がいいんだ。これのおかげかな?」

 

 レオンはポケットから私があげたハンカチを取り出して、ひらひらと振ってみせた。

 

「まだ、効果続いているみたいだぜ。あれから結構時間たってるのに、すごいよなあ」

「すごいかなあ? 練習で作ったやつなのに」

「持っていったハンカチ、ギルドで評判よかったぜ。一枚につき銀貨一枚で売れた。ギルド長が腰痛に効いたって言ってたよ。お守りの方はひとつ銅貨五枚。刺繍の方が手間がかかってるだろ?」

「うん、思ったより高く売れてうれしい!」

 

 父が路銀にくれたのは銀貨三枚だった。

 感覚的に銀貨一枚は一万円ぐらいの価値のような気がする。

 普通の宿に一泊して、食事をできるぐらいの金額だ。

 

 ハンカチ一枚が一万円と想像したら、結構いい値段だよね。

 お守りの方は、紙に魔方陣を書いて、小さな袋に入れただけだし。

 コストなんて安いもんだし、刺繍もしなくていいから、お守りを量産するのもアリかな。

 ふたつで銀貨一枚だしね。



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