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学園生活スタート

 いよいよ学園生活が始まりました。

 学園生は全員制服です。

 爵位によって差が出ないように、一応配慮されているみたい。

 ただし、自宅から通学するか寮に入るかは自由で、貴族の女子生徒はほとんど自宅から通学。

 寮に入っているのなんて、魔術科では私ぐらい。

 高位貴族のお嬢様は、食堂のご飯を食べたりしないようだ。

 昼休みになると、侍女を連れてどこかで食事をしているみたい。


 授業は午前中が座学で、一般教養や教会の教えを学んだりする。

 午後からは実技や選択科目の授業。

 私はせっかくだから、めいっぱい選択科目をとった。

 勉強する気まんまんです。奨学生だから、やる気を見せないとね。

 

 例えば、魔力の少ない人だと、実技は「祈り」だけだったりする。

 男子は結界か治癒のどちらかを選択している。

 お札に祈る仕事は、魔力の少ない聖女の仕事なんだそうだ。

 同じクラスの女子は「治癒」か「祈り」のどちらかを選択しているけれど、私は両方とった。

 

 それと、結界の授業も一応とった。

 なるべく実力は見せずに、知識だけは得ておきたい。

 この先何があるかわからないし。

 高位貴族と違って、護衛を連れているわけじゃないから、自分の身は自分で守らないとね。


 クラスの女子がほとんど選択しているのは、刺繍の授業。

 貴族女子の嗜みというか、嫁入り修行の一環として、刺繍はポピュラーなのです。

 一般的には家門を刺繍したり、花や鳥の模様を刺繍したりすることが多い。

 でも、ここは聖女クラスですから。

 なんと魔方陣を刺繍するのです。

 これは戦争に行く家族に、お守りとして渡したりするんだそうだ。

 

 聖女が作ったものは効能があるということで、教会で売られているんだって。

 良いことを聞いた。

 これができるようになれば、アルバイトになるよね。

 うん、真剣に練習しようと思う。

 

 今日は一番簡単な癒やしの魔方陣を刺繍する。

 まず、白い綿のハンカチに、直径十センチほどの丸いスタンプを押す。

 このスタンプの図柄が癒やしの魔方陣で、一般的なスタンプは学園や教会で売っているらしい。

 もっとも、スタンプだけでは効果がないので、これを買うのは聖女だけだよね。

 インクは仕上がってから洗うと消えるそうです。

 

 あとは、好きな色の糸でその図柄を刺繍していくだけなんだけど、縫っている間は雑談や雑念禁止なのです。

 癒やしの祈りを捧げながら刺繍をする。

 他の人が縫っているのを見ると、魔方陣がほのかにポワっと光っていて、幻想的な光景だ。

 ただ、ひたすら、無言で刺繍をする授業。

 私は前世でもハンドメイドが好きだったので、この授業は結構楽しい。


 できあがった人は手をあげると、リプトン先生がチェックしにきてくれる。

 私も、「配色がキレイですね」と褒めてもらった。

 余裕のある人は、魔方陣の隣に花やリボンの刺繍をしたりしている。

 今度時間のあるときに、図書室で手芸のデザインの本を探してみようかな。

 

 できあがったハンカチは、持って帰って家族や婚約者にプレゼントしていいんだそうです。

 私はあげる相手がいないけど、記念すべき最初の作品だし。

 自分用に使おうと思う。

 

 教壇のところに箱が置いてあって、不要な人は騎士団に寄付するんですって。

 何人かの人は、その箱の中に入れていた。

 やっぱり聖女を目指す人って真面目だなあ。

 私はこのハンカチがどの程度効力が続くのか、自分で知っておきたいので、しばらく持っていようと思う。

 今はポケットの中に入れているけど、ほのかに温かいような気がする。


 午後の実技の授業が終わると、それぞれ自宅に帰るだけで、どこかに遊びに出かけたりする人はいないようだった。

 そばにいる人に軽く挨拶をして、みんなあっさりと帰っていく。

 もっと貴族令嬢とのお付き合いって大変なのかと思っていたけれど、他人には関心がないという感じで気楽だ。

 私なんて男爵令嬢だから、むこうから声をかけられない限り、誰とも話すことがない。

 相手の身分がわからないから、うかつに話しかけられないんだよね。

 

 まだ夕食には時間が早いなあと思いながら、帰り支度をして。

 窓から見えている、騎士科の訓練をぼんやりとながめる。

 木刀のようなもので、二人一組で剣の稽古をしているようだ。

 

 革の胸当てのような防具をつけているけど、木刀で殴られたらそれなりに痛いだろうなあ。

 しばらくながめていると、訓練が終了したのか、道具を片付けて帰っていくようだ。

 しかし、女子と比べると、男子の方が階級意識が強いように見える。

 偉そうにしている男子は、道具を放り出して帰っていくし、それを拾い集めて片付けている人もいる。

 まあ、つまり、放り出した方が身分が上で、拾い集めている人が下っ端ということね。

 女子は今のところ、そういう差別みたいなことはないからよかったけど。

 

 騎士科なんてところにいる人は大変だなあ。

 ひとりで重たい荷物を引きずるように運んでいる、少し華奢な生徒が気の毒になった。



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