親友の正体。
「我らから奪った薬を摂取した女はみつかったのか?」
「まだだ。」
「何をしている。私が代わってやろうか?相変わらず遅いんだ貴様は。」
「黙れ!」
「まぁまぁ、落ち着け。
知っているとは思うが、水が何者かにやられた。一大事だ。我ら4人いた、体外に干渉できる能力者の内、一人がやられたと言う事は、敵は何らかの体外に干渉できる能力者の可能性が高い。
恐らく探している女が、その能力者。
ここで揉めている場合ではないぞ。」
「ちっ。」
「分かっている。すぐに探し出して、
消す。」
そう言うと、男は立ち上がり、退室した。
「おい!あんたはいつもあいつに甘い!甘やかすな!」
「まぁ、いいではないか。
お手並み拝見といこう。」
「そうかよ。私は帰る!」
黒頭巾の3人の会議は終わった様だ。
その頃。
「おい!玲夢!起きろ!」
「ムニャムニャムニャ。」
「頼む〜!起きろ〜!朝まで弱いのかよこいつ〜!」
倫は、玲夢を必死に起こそうとしている。
「お前!起きないと良からぬ事するぞ!」
玲夢は、目がパッチリ開き、すぐに体を起こした。
「どんなけ警戒してんだよ。
悲しくなるわ。」
「お前の事は信用しているが、
私が起きない事を理由にできる状況にする事は、
危険だと分析した。」
「もう、いいわ。
昨日寝ちまったから、色々伝えないといけない事がある。
しっかり聞け。」
「分かった。いいぞ。」
「俺は仕事に行く。
お前は留守番だ。
緊急事態以外は、絶対に家から出ない事。
朝ご飯と昼ご飯は作っといたから、温めて食べろ。
あと、連絡は入れといたが、俺の親友が帰ってくるかもしれないから、なるべく俺の部屋にいろ。
以上。分かったか?」
「至れり尽くせりだな。
母親の様だ。
感謝する。」
「お前が至らないからな。
反省しろよ。」
「反省する。
申し訳ない。」
「そんなに謝らなくてもいいよ・・・。
あと、お前、これ使えるか?」
「バカにするな。
電話くらいかけられる。」
「良し、じゃあ、これ持っとけ。
俺の会社用の電話番号をここに入れてあるから、何かあったらすぐ電話しろ。
あと、GPS機能を付けてるから、必ずポケットに入れとけ。さらわれたりした時のためだ。」
「分かった。」
「じゃあ行ってくる。」
「待て!・・・・・
いってらっしゃーい!お仕事頑張ってね!」
「何だよそれ。」
「しっかり稼いでもらわないと牛丼が食べられないからな。サービスだ。」
「あっそ。お望み通りがんばるよ。」
「あぁ。頼む。」
バタン。
倫は会社へ向かった。
カチカチカチカチ。
時計の音が鳴り響く。
玲夢は暇を持て余していた。
「まずい。する事が無い。
これでは私は倫に飼われているペットではないか。何かする事はないか?
無いな・・・。」
倫のベッドで横になり、独り言を言っていると、ドアが突然開いた。
「外に出してやるよ。」
玲夢は、ベッドの上に飛び起きた。
「誰だ。」
「俺か?俺は倫の親友だよ。」
「荒川翔太・・・か。」
「そうだ。」
「倫は仕事に行っている。
私は、倫にかくまっ・・・いや、倫の彼女だ。」
「そうか。立花玲夢。」
「何故私の名前を知って、うっ。」
翔太は、玲夢に何かをした。
それが何かは玲夢には分からなかった。
遠のく意識。
脳裏には、倫の顔が浮かぶ。
「倫・・・・すまない。」
「女が家にいると聞いてまさかとは思ったけど、まさかだったな。
こいつが水を?大した事無いじゃん。」
翔太は、玲夢を抱えると、
家を後にした。
倫は、GPSを見ながら仕事をしていた。
「おい!」
倫が立ち上がると、回りの社員の視線が集まる。
「なんだ?うるさいんだよ。」
「すっ、すまん。」
倫は、一度座る。
(あいつあれほど外にでるなっていったのに!手間かかる上にお転婆娘かよ!
まっ、待て。これ、動き早すぎないか?車?いや、車なんてもんじゃないぞ。
まさか!)
倫は立ち上がり、急いで会社を出た。
「GPSは?どんどん離れていきやがる!急がねーと!・・・やった事ないけどいけるか?!・・・透明化、軽量化、筋肉強化・・・腕よ!翼になれ〜!
おぉ!翼だ!飛っべ〜!!!」
倫は高速で走り、翼をばたつかせる。
「おぉ!飛んだ!飛んだぞ〜!
もっと早くすれば良かった!最高〜!
いゃ、いかんいかん。今は玲夢を追いかける事に集中だ。」
倫は風に乗り、高速で玲夢を追いかける。
「もうすぐだ。もうすぐ追いつく!
いた!相手も空とんでやかる!
待て!!!って・・・翔太?!」
倫は、透明化を解いた。
「倫・・・・お前、まさか?」
「お前こそ・・・。なんでお前が玲夢をさらうんだよ!」
「倫・・・引いてくれ。
お前の事は誰にも言わない。
頼む。」
「翔太。それはできない。
俺は、玲夢が好きなんだ。」
「じゃあ、諦めろ。
お前がこの女に執着すれば、
俺はお前を殺さないといけなくなる。」
「それでも・・・それでも玲夢は俺が守る!」
「いてー!!!」
目覚めた玲夢が、翔太の耳を噛みちぎった。
翔太が動転している隙に、玲夢は翔太の体を蹴り、翔太から離れた。
「ダメだ。落ちている。
このままでは死んでしまうな。」
急降下する玲夢を倫は受け止めた。
「お前無茶しすぎ!」
「私の分析通りだ。お前は私を助けてくれると思っていた。
ただ・・・まだ落ちているぞ?
大丈夫なのか?」
「お前を受け止めるのに、翼を腕に戻したから、飛べないんだよ!」
「では、私達はここまでだな。」
「死んでたまるか!俺に全力でつかまれ!腕と、足も巻きつけ。」
「お前、最高のご褒美になるな。
牛丼連れて行けよ。」
「マジで落とすぞ!早くしろ!」
玲夢は、全力で、倫に絡みつく。
「翼!頼む!早く!」
バサっ!
地面スレスレを倫は飛び、地面に着地した。
玲夢は、地面に立ち、少し笑っている様に見えた。
「あー!!マジ死ぬかと思った!」
「倫、良くやった。」
二人が地上で騒いでいると、
翔太が下りてきた。
「おい!女!お前はここで始末する!」
耳から血を流し、翔太は怒り狂っている。
「翔太、悪いけどお前がこいつを殺すつもりなら、俺はお前を・・・。」
「倫!そいつの正体知らないのか?
騙されてるんだよ!お前は!」
「何がだ!俺もお前の事騙してたけど、
お前も俺を騙してたんだろ?」
「倫、わかってくれ!俺は、政府の能力者集団の四天王だ。
昨日、四天王のうちの一人がその女にやられた。そいつは、レジスタンスの一人で、政府から奪った薬を使った能力者だ!」
「翔太、お前!
こいつの事知ってんのか?!」
「今言った事とそいつの名前くらいしか知らない。」
「レジスタンスは?
レジスタンスってなんだ!
どこにいる?
この能力は何だ!薬は誰が作ってる?」
「知ってたら、とっくに始末してる。
薬については政府も余り分かってない。
むしろ、そいつらレジスタンスの方が、
薬の事は知っている様だ。
そんな事よりその女を渡してくれ!」
「翔太・・・見逃してくれ!頼む!」
「できない!」
倫は、翔太から逃げようと走り出した。
一瞬で翔太は倫の前に回り込んだ。
「倫すまん!」
「ぐはっ!」
翔太は、倫に何かした。
倫は腹を押さえながら、後ろにふっ飛んだ。激痛でのたうち回り立てない。
「女!俺の耳を返せ!」
「知らん。吐き捨てた。自分で探せ。」
「ふざけるな!
・・・もういい。死ね。」
翔太は腕を振りかぶる素振りをする。
倫は動けない様子だ。
「待て。私はそのレジスタンスとやらに何故いたのだ?何故薬を使ったのだ?
冥土の土産に教えろ。」
「まさか。さっきから気になっていたが、お前、記憶がないのか?」
「そうだ。私は自分が誰なのかぐらい知って死にたい。」
「いいだろう。俺の知っている事は教えてやるよ。」
俺たちは、新しい薬を手に入れ、政府機関へ船で向かっていた・・・。
「敵襲!敵襲!レジスタンスです!」
「何?奴らから攻めてくるなど、初めてではないか!」
「おい!水!看板にでろ!船の上ではお前が一番有利だろ!」
「了解だ。」
水の男は、看板にでた。
回りには、船が数隻。
すでに船内に数人が侵入している様に見えた。
その数人の中に玲夢はいた。
水の男は、看板から飛び降り、海面に立った。
男の足元からは、鋭利な水柱が複数現れた。
水柱は、回りの船に突き刺さり、船は爆発する。
逃げる手段を奪った水の男は、
看板に戻った。
玲夢は、お目当ての物を抱え、数人で看板に出たが、絶望した。
「船が・・・無い。」
レジスタンスはほぼ全滅。
看板にでた数人は、船の先端へ追い詰められた。
「玲夢さん!薬を!玲夢さんが打って下さい!」
「でもこれは!」
「敵の手に渡るよりその方がいい!ぐはっ!」
水柱が男の胸を貫いた。
「は・や・・く。」
「あー!!!!」
玲夢は、薬を自分の腕に打った。
意識が遠のき、倒れる。
バシャーン!
倒れた先は、床ではなく、海だった。
「どうだ?これで俺の知っている事は全てだ。お前の逃亡を許した水は、責任を問われお前を探していたが、まさか返り討ちとはな。
お前は何の能力者だ?」
「私は大した能力ではない。」
「まぁもうどうでもいい!もう死ね!」
翔太は腕を大きくふる。
ばぃ〜ん。
玲夢を守る様に、前に立った倫の体が振動した。
「倫?!まるでゴム・・・。
何だその体は?
お前、翼が生えるだけじゃないのか?
しかも何故あの攻撃を受けて立てるんだ?!内蔵がめちゃくちゃになってるはずだぞ。」
「・・・能力・・・エアー。
副作用、呼吸・・・。」
「なっ、なんで俺の能力を?!」
「悪いな、翔太。お前といた時間は一生の思い出だー!」
倫は、特大の翼を構築し、
全力で翔太に向かい羽ばたく。
強風が起こり、翔太を襲う。
強風は、はるか彼方へ翔太を吹き飛ばした。
「翔太ぁー!!!!」
倫は、涙交じりに叫んだ。
そして、膝から崩れ落ち、
うずくまる。
「翔太・・・ごめん。ごめん。」
玲夢は、後ろから倫を抱きしめる。
「倫、大丈夫か?
あいつは、まだ生きているだろ?
今のうちに逃げよう。」
「玲夢、逃げる必要はないよ。」
「何故だ?お前はあいつと戦いたくないのではないのか?」
「あいつ・・・翔太は・・・多分死んだよ。」
「何故だ?やつの能力なら吹き飛んたところで死なないだろ。」
「翔太の副作用は、呼吸だった。
恐らく、空気を操れる変わりに、呼吸を常にしていないといけないといけない体になってるはずだ。
お前を背負って高速で移動しているときは、空気の膜みたいなのを作ってしのいでたんだろう。
今の俺の風圧なら、恐らく翔太の呼吸は数秒間止まったはず。
俺の仮説が正しければ、あいつは・・・。」
「そうか・・・だか、私顔負けの分析だな。」
「お前の能力、少し真似たんだ。」
「なるほど。便利な能力だな。」
「玲夢、これから大変になるぞ。
多分、俺たち二人は追われる。
一度家に帰って身支度を整えよう。」
「どこに行くのだ?」
「とりあえず、キャンプだな。」
「外で寝るのか?」
「あぁ。死ぬよりましだろ?
急ぐぞ。会社辞めて、部屋も解約するからな。」
「巻き込んで申し訳ない・・・。」
「いいよ。俺がしたくてしているから。」
倫は、翔太の事を考えない様にしている様子だったが、目に見えて落ち込んでいる。
「倫、待て。」
前を歩く倫を玲夢は呼びとめた。
「何だよ?」
倫が振り向くと。
「えっ?」
玲夢は、両手の掌を倫の顔に当て、
背伸びして口づけをした。
時が止まる感覚・・・。
倫は目を閉じた。
数秒間、玲夢は、何かを感じた。
玲夢は、ゆっくりと倫から離れると、
微笑んだ。
倫は、玲夢を見つめ、驚いた顔をしている。
「おっ、お前・・・。」
「お前は、親友を手にかけてまで、私を守ってくれた。一度だけの特別サービスだ。」
「いや、キスもだけど・・・。
今、お前・・・笑ったよな?!
笑った!絶対笑った!!」
「私が笑った・・・のか?」
倫は落ち込んだ表情が一変し、
嬉しそうにしている。
倫のその様子を見て、玲夢はまた微笑んだ。
「あっ!まただ!!
玲夢が笑ったー!」
「倫、ありがとう。」
「良かったな!」
「あぁ。」
玲夢を抱き抱えなが、倫は家に急ぎ向かっている。
「なぁ、玲夢。なんで笑える様になったのか自分で分かるか?」
「恐らくだが、お前に抱き抱えられながら落下した時、私は、生を諦めた。
だが、お前が助けてくれて、地面を踏んだ瞬間、何か変な感覚があった。
恐らく、生きていられた喜びだろう。
その時、少し口角が動いた気がした。
きっかけは、それだろう。」
「なるほどな。
やっぱり、感情の動きが、お前の心を蘇らせるきっかけになるみたいだな。」
倫は、急にたちどまった。
「玲夢・・・じゃあお前・・・俺とキスできて嬉しかったって事か?」
「恐らくそうだな。
お前にキスした時とお前が喜んでくれたとき、胸の辺りに感覚があった。
それが嬉しいという感情だろう。」
倫は玲夢を抱き抱えたまま、
玲夢を見つめる。
「待て、倫、恐らくそれは契約違反だぞ。特べつ・・・。」
問答無用で、倫は玲夢にキスをした。
玲夢は、一瞬不満そうにしたが、
倫を受け入れ、目を閉じた。
玲夢が倫の首に回していた腕に、
少し力が、こもり、
二人の時間が止まる。
周りの雑音の一切が遮断され、
二人の世界へ誘われる。
倫がゆっくりと離れると、
玲夢はまた少し微笑んだ。
「どうだ?」
「恐らく・・・私は喜んでいる。」
「そうか。
俺、何があってもお前の事守るから!」
「あぁ。頼む。」
玲夢は微笑んだ。
玲夢の笑顔が、親友を手にかけた倫の心を少し救ってくれた。