ソードさんの正体①
――――ある日のこと。
俺は西部辺境のローカル雑誌を読みつつふと思い出す。
「あのさ、ヴェイセル」
「ん、どうしたの?クロ」
「そういやさ。ソードさんって結局一体全体何者なの?」
「う~ん……ウチの異父兄の父親で父さんの騎士で剣鬼で……コーラルディーナ女王陛下を振った男?」
「まぁその通りなんだけど。その……何と言うか身体に穴が開いたと思ったら一瞬にしてふさがったし……」
そう告げた時背筋がゾクリとする。このゾクリは……。
「やぁクロ殿下。私に興味があるのかい?光栄だよ……ふふふ……」
「むっぎゃあああぁぁぁっっ!!?」
な……なしていきなりソードさんが出現するんだよ!?
「私のことが気になるんだろう?」
「ふ……あう……はい……てかあの奇術は何だったんですか?」
「しょうがないなぁ。今は伏線大回収祭中だから特別に教えてあげよう」
「わぁっ!サービスいい!!」
さすがは伏線大回収祭!!
「ヒントは君の紅消くんかなぁ?」
「紅消?」
「クロ殿下、恐れながら」
その瞬間、しゅたっと紅消が現れ俺に顔を近づけるソードさんから俺を離して後ろに庇う。
「おやおや、相変わらずの過保護だねぇ」
「いや、ソードさん。ウチのクロを誘惑するのは禁止です!」
いや何言ってんのヴェイセルは。安心しろ。そんなことを目論んでいるのはお前だけだ。
「ふふふ、そう言うことにしておこうかな?」
いやしないでください。ソードさんまで変態キャラ認定になりますよ?
「それにしてもヒントが紅消って……あぁ三つ子?」
「僭越ながら、クロ殿下。三つ子は違うかと。3兄弟のはずですが年齢はバラバラであった気がします」
そうなんだ。ソードさんには前カンナギ公爵と、最恐の弟さん(ナユさん、チェレンくんの父)という兄弟がいるはずだもんな。
「そう言えば紅消って自己修復ができなかった?」
「えぇ。私のスキルです。恐らくこの変態剣鬼も、そのようなスキルを持っているものかと思われます」
わぁ……紅消ったらついにソードさんを変態剣聖と同じ括りに入れてしまった。
「そうそう、その通り。私のジョブは剣鬼、そしてスキルは再生。効果は紅消くんと同じような感じかなぁ?どんな傷を負っても再生する……それが私だ。どんな攻撃を仕掛けたところで無傷で再生する……最強だろう?」
「でも傷を負ったら痛いのは同じでしょ?」
「……」
「だからいくら再生するって言っても、無茶はしちゃダメですよ」
「やれやれ、君と同じことを言った女性がかつていたけれど。また同じ言葉をもらえるとは何の因果かね」
「それって……」
「ふふ……あいにく、結婚前に逃げられてしまったけれどね」
それってもしかしてヤタさんとヴェイセルのお母さんの紅花さん……?
「それじゃ。私は早速我が愛しの主の元に還るとしよう。じゃぁね、クロ殿下御一行。今度また勝負しようね、ヴェイセル~~~」
「えぇ~ソードさんとやると疲れるからやだ~」
「えぇ~~~?」
渋るソードさんだが……。
「そ、それは……ヴェイセルが怪我するからダメです!!」
「おやおや、クロ殿下は手厳しい」
そう言ってひらひらと手を振りながらソードさんは去っていく。
「それにしてもクロったら、お兄さんのことを気にしてくれるなんて嬉しいっ!!」
「こらひっつくな!それに紅消……」
「はい、クロ殿下。オラ、ヴェイセル。ここからは私のターンだ。離れろ」
「ぐえっ」
いやまぁそうだけど強引だな?そんなところも息が合ってるんだけど。
「あの時……俺のために怪我しただろ?」
「不覚ながら」
「痛い思いさせちゃってごめんな」
「いえ、主のために傷を負うのはお世話係の務め」
お世話係は違うと思うけど、それでも。
「それでも紅消が痛い思いをしたのは変わらない。ごめんな……そしてありがとう」
「クロ殿下……!もったいなきお言葉。一生ついて行きます!」
「うん、ありがとっ!」
「あ、ずるい~~~!俺も~~~っ!!」
ヴェイセルがむーっと唇を尖らせる。
「はいはい、わかったよ」
今日も相変わらず俺たちクロ殿下パーティーは賑やかだ。