クロ殿下とアリス
――――クォーツ祭壇の妻帯者用宿舎
「ねぇ……クロ」
「ん……?なぁに?アリス」
俺とアリスはめでたく結婚しここで新婚生活を送っている。とはいえふたりっきりではない。
俺の騎士であるヴェイセルはアリスのマター料理生産を防ぐ料理番として、紅消は俺のお世話係として一緒に暮らしている。
俺の執事であるセナさんには相変わらず王城を任せているものの、週に何度かは公務で王城に滞在するため王城で一緒に住んでいる……と言う感覚……かな?
それに絶えず精霊たちが遊びに来るため、とても賑やかな日々を送っている。
そんなある日のオフの昼下がりの事……ソファーにふたりで腰掛けテレビを見ている時だった。
「あのね、こないだクロの公務について行ったときにね……イヴちゃんが、久々にクロにふわもふしてもらったんだって」
「あぁ、うん。イヴには小さい時から度々ふわもふしてあげてるからね」
「……私は?」
「へ……?」
「私、お嫁さんでしょ?」
「いや……それは……」
俺は今のところイヴ以外の女性にふわもふしたことがないのである。
――――だって、ちょっと緊張するし。
「ふわもふしてくれないなら……お兄ちゃんをおしのけ……私が今日のお夕飯を作るっっ!!!」
「や……やめて~~~っ!やめてくれ~~~っ!アリス~~~っ!!!」
一応アリスのマター料理回避のため、家で過ごす際のご飯はヴェイセルが毎日絶品料理を作ってくれるのである。
……が。
「それは……シャレにならないっ!!」
ほんっとシャレにならないから!
こないだ試しに作ってみたらヴェイセルが……あのヴェイセルが……泣いていた……。
それほどまでに……危険なのである!!!
「わかった!わかった!ふわもふするからぁ――――っっ!!!」
「ならばゆる~~~すっ!」
……いや、アリス。そのマター料理は罰ゲームか何かかよ。
ひとまずマター襲来の危機は回避したわけで。
羽耳族であるアリスのふわもふしっぽをお膝の上に乗せる。
「その……何か、痛かったり、引っかかったりしたら、言ってね」
「うん、わかった」
そしてゆっくり、優しくふわもふブラシでぶらっしんぐしていく。
「……その、どう?」
「うん、なかなかいいかも……クロのもふりスキル」
何だか、アリスも緊張しているようで……変なとこ、触ってないよな……?
ついつい不安になってしまうが……。
しかし……アリスのしっぽも結構な艶……ふわもふ感……。
やっぱりふわもふを持つものとしてアリスもしっかりお手入れをしているらしい。
「アリスねーねのしっぽ、ぽふぽふ」
あ……いつの間にか俺の隣にかわいいちびわふたん精霊リヴィが顕現していた。
「リヴィちゃん、かわいいね」
「うん、リヴィもふわもふ手伝ってくれるみたい」
「そいえば……クロ」
「ん……?なした?」
「あのね……ユエお姉さま、もうすぐ出産日を迎えるんだって」
「ぐはっ!!」
ユエ姉さんは俺の双子の弟であるヨルのお嫁さんであり現在妊娠中なのである。
「レベッカお姉さまのところはかわいい女の子……エメラお姉さまのところはかわいい男の子……ウリカお姉さまのところは女の子と男の子だったね」
「う、うん」
レベッカ姉さんは俺の一番上の兄王子・アスラン兄さんのお嫁さん。エメラ姉さんはもちろん俺の実の姉で第1王女。
ウリカ姉さんは俺の3番目の兄ジェイド兄さんのお嫁さん。
「私たちはまだなのかな~」
「あうっ!そ、そだね……」
イヴはまだしもら、俺たちだけまだでした。
「エル兄さんも楽しみにしてるよ」
「いや、エル兄さんはまず独身だし」
俺たちの事より早く氷の精霊フブキさまが認めるお嫁さんもらえと思ってしまう。
……まさかあのひと、このまま独身を貫くつもりなのか!?
ブラコンシスコンに身を委ねるつもりなのか!!?
うぅ……あのひとならありえるわぁ~。
「私たちの子……だったら、人族の姿かな。それとも私と同じ、羽耳族かな」
「どうだろう……?」
「羽耳族だったら、ふわもふお願いね」
「あぁ……うん……」
自分の子だったら女の子でも……ふわもふ……する!!
大丈夫、お嫁さんのアリスのふわもふもこなせたし。親として……ふわもふはしっかりと維持するべき!!
……ちょっとかっこつけてみたクロ殿下でした。
「それとも、大鬼族だったりするのかな」
「いや、あれは俺の謎のモードだし……遺伝するとは……」
ぽむぽむっ
「ん……?」
「……!」(ドヤッ)
ぽふっ
リヴィの横には、ちょこんと仮の姿のシズメさまが顕現しており、次の瞬間俺は天人族モードに移行した。
「あぁ!そのパターンもあるよね!」
いやいや、ないよ!このパターンは、単なるシズメさまからの天人族モードサービスで……っ!
遺伝するのとは違う!
「わふわふっ!」
ん……?今度はリヴィ……?
ぽふっ!!
――――って、お次はわふたんモードに移行したぁぁぁ―――っ!!!
「あ、わふたんもありかも!」
わ……わふたんですと……!?そんな……わふたんなら、俺、すっごい溺愛しそう……。いや、その前に……。
「これも単なるモードだから……」
遺伝はしないよね……?
ぽふっ
再び、人族モードに戻りました。
「リヴィ、ちびちゃ、わふわふモード」
「……!」(まかしとけ!キラッ!!)
「え……?ふたりとも、俺たちに子どもができたらわふたんモードと天人族モードを授けるつもりなのか?」
「う!わふたん!」
「……!」(キラッ!!!)
「わぁ、じゃぁたくさんふわもふできそう!楽しみだね、クロ」
「あぁ……うん、そだね」
「ナン・ジャワ~レ、チギ~ッテ、ホウリコ~ムゾ~♪」
と、エストレラ王国伝統のポーション作成ソングを歌い始めるアリス。
「あの……それは絶対子守り歌にはしないでね?」
「え?なして?」
いや……歌詞がめちゃくちゃホラーだからだよっ!!
「クロ、リヴィ、わふわふ歌う!」
「うん、そだな。アリス、リヴィが歌ってくれるって」
「う~ん、リヴィちゃんが歌ってくれるなら、お言葉に甘えよっかな!」
「まかしとけ!わふっ!」
リヴィったら……。
「シズメさまの真似かな?」
「わふっ!」
「……!」(ドヤッ)
今日もアリスと一緒に精霊たちに癒されながら賑やかな新婚生活を送る俺とアリスなのであった。
――――
その後、ふたりが人族と羽耳族のかわいい双子の男の子と女の子の赤ちゃんを授かるのはそう遠くない話である……。




