表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロ殿下と剣聖ヴェイセル【伏線大回収祭編】  作者: 夕凪 瓊紗.com
後夜祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/55

小国連合MIX


――――side:小国連合短編集


玉仙(ぎょくせん)さまのツボ】


「玉仙さまのツボって一体何なのかしら?」


「そうだよね、気になるよね。玉仙さまのツボ」

サンダ島の精霊の社ではコタツを取り囲んでコタツ会議が催されていた。

いや単にコタツに入ってお茶を飲みながらミカンを食べているだけなのだが。

ついでに玉仙さまとはサンダ島の守護精霊で玉鋼の精霊である。

下半身を蛇体にも変えられるが普段は不機嫌でクールな青年の姿を取る。


「でも気になるのよ。あの玉仙さまが……」

ずずず……と湯飲みを啜りながら精霊の社の司祭の母である浅葱が一息つく。


「私も……玉仙さまのツボ、気になります。やっぱり対の精霊ですし。玉仙さまのツボ、もっと知りたいです」

と小国連合地域の森の精霊ナズナ。因みに玉仙さまの対の精霊。


「それでは聞いてみてはいかがでしょう?」

あの玉仙さまでさえ大人しく言うことを聞く、混沌の精霊煌夜(かがや)が微笑む。

混沌の精霊は小国連合全体の守護精霊でもある。


「大人しく答えるかしら、あの玉仙さまが」

と浅葱。


「ぼくが聞いてもいいけど……答えてくれるかな」

玉仙の選んだ御子であり司祭の翠仙(すいせん)が思案に暮れる。

因みに頬には玉仙の選んだしるしである蛇の鱗が浮かんでいる。


「大丈夫ですよ。私たち精霊は自らの御子を我が子のようにかわいがっていますから。ほ~ら、こうやって~。ふふふ」

煌夜はそう言って自らの義息子白夜(はくや)をぎゅむっと抱きしめる。

白夜はサンダ島の精霊の社でかわいがられる皆の弟的存在で、精霊の社の司祭の翠仙の父の厳つい武将鳳仙ですら骨抜きにしている短めなガゼル角の少年だ。

因みに煌夜は長めのガゼル角を持っている。


「んもう、お父さんったら」

抱きしめられながら恥ずかしがる白夜だが、かわいらしく嬉しそうに微笑む白夜に、コタツを囲むコタツ会議議員たちの心はキュンキュンである。


「ふふふ、次は伊夜(いざや)お兄ちゃんの番です」

と煌夜の抱擁から解放された白夜は、お次は伊夜にぎゅむ―――っとされてはにかむ。

伊夜は半鬼半精霊ではあるが、煌夜にとっては息子同然で白夜を実の弟のように愛でている。さらには煌夜と同じ長さのガゼル角を持つ。


『ぐはっ』

もはや彼ら彼女らの心は白夜くんにでれっでれな親バカモード全開である。


「よし、聞きなさい!翠仙!」

と司令官・母浅葱がエースパイロット息子・翠仙に命じる。


「うん、母さん!!玉仙さま!!」

翠仙が呼ぶと暖簾の向こうから玉仙が現れる。


「何だ?我が御子よ」


「あの……玉仙さまのツボについてお聞きしたいんですが……」

アンニュイモードの玉仙だが翠仙に呼ばれると少し嬉しそうだ。


「む……?我のツボについて……?」

「そのツボ、一体何が入っているんですか?」

と、翠仙は玉仙が大事そうに抱えるツボを見やる。


「あぁ……これか……見よ」

と玉仙がツボの中身を翠仙に見せる。何だかいつも以上に嬉しそうである。


「これって……」


「うむ……新しく我が家にやって来た……」


「アオダイショウさん!」

そのツボの中では本物のアオダイショウがすーすー寝息を掻いていた。


「そろそろ冬眠の時期だからな……それまで見守ってやろうと思って」


「まぁ玉仙ったら。お友だちができて良かったですね」

と煌夜。蛇友だちである。


「んな……っ!そんなんじゃ……でも……うん」

そんなデレる玉仙も珍しい。珍しい玉仙の表情を見てコタツの周りが和やかなムードに包まれる。


「アオダイショウさんがお家にいついてくれるのは、縁起がいいのよ?早速歓迎しなくちゃね」

と浅葱。


「……うむ」

そう答えた玉仙も満足げだ。大蛇の姿の玉鋼の精霊を祀るサンダ島では、蛇は吉兆の兆しとしてありがたがられるのが慣例である。


【玉仙さまのツボその2】


「玉仙お兄ちゃま~なのれす~」

「うぅむ……何だ……我は今、我が御子のお膝枕で忙しい……」

と、コタツでお饅頭をはむはむする翠仙のお膝に頭を乗せていた翠仙は、対である森の精霊ナズナの仲間である森の精の顕現に眠たそうに頭を上げた。

しかし不機嫌そうにはならないのは玉仙も対の精霊のことは気に入っているし、その仲間の森の精にも優しいからである。


「見て見て、なのれす?」

「うん?」

玉仙の脚のあたりでじゃれてくるひとりの森の精。

それは玉仙と同じ蛇のしっぽをもつ森の精さんだじま支部隊のひとり……ささである。

だがいつもと違うのは……。


「おしょろい、なのれす?」

そうささは玉仙と同じ色の蛇体を模した蛇さん着ぐるみパジャマを着ていたのである。


「……」


「わぁ、ささちゃん、かわいい」

と、翠仙が感嘆の声を上げる。


「ふふ、お饅頭あげる」


「わ~い、なのれす~」


「ねぇねぇ、見て見て、なのれす~」


「わたちたちもなのれす~」

と続いて現れたのは同じく森の精さんだじま支部隊の隊員さゆちゃんとさふちゃん。

このふたりは人族の姿なのだが、本日はささちゃんとおそろいの蛇さん着ぐるみパジャマに身を包んでいる。


「わぁっ!おそろいだね!」


「ふふふ、森の番人さんに作ってもらったんですって」

そこへ玉仙の対の精霊であるナズナが顕現する。


「わぁ、よかったね~。ふたりにもお饅頭あげる」


『わ~い、なのれす~』


お饅頭を一通りはむはむした森の精たちはその愛らしい蛇さん着ぐるみパジャマで玉仙に群がる。


『玉仙お兄ちゃま~あしょんで~なのれす~~~』


「ぐはっ!!」


「ぎょ……玉仙さま?」


「まぁ、玉仙さまがおめずらしい」


『……玉仙お兄ちゃまなのれす???』


「めずらしく玉仙さまのツボに入ったみたい」


「ですね~」

翠仙とナズナは互いに顔を見合わせ微笑んだのであった。


【煌夜さまの過保護】


「ただいま~」

サンダ島の学舎から帰宅した白夜が居間に飛び込んで来る。


ナキ島から移住しサンダ島の学舎に通い始めた白夜。ナキ島ではその角のせいで迫害されたが、サンダ島では精霊の血族の証を持つということで学舎ではすっかり人気者だ。


もともとサンダ島は玉仙に選ばれた御子の証である翠仙の左目の鱗のような特徴を持つ子どもは吉兆の証としてありがたがられる。


そう言う背景もあって白夜も島の大人たちからありがたがられ、そのかわいらしさから溺愛されつつ子どもたちからも受け入れられているらしい。


「お帰り、白夜」

「あ、父さん。次は俺」

と居間に飛び込んだ瞬間、白夜のお父さん煌夜が白夜をぎゅむっと抱きしめる。

そして次は次はと白夜のお兄ちゃん伊夜も駆け寄る。


玉仙もかなりの御子バカだが、それ以上と言っていいのが白夜の父兄である。


「あぁ……学舎に行っている間白夜に会えないのは寂しいです」


「うん、俺も」


「お父さん……伊夜お兄ちゃん……!」


「……と言うか精霊なんだから別に良くないですか?精霊は歓迎されるものですし学舎とは言え、精霊の来訪は歓迎されてしかるべきです」

とサンダ島精霊の社の精霊士にしてサンダ島のマッドヒーラー代表の扇。


「……!じゃぁ、私も学舎に同行します!」

「俺もいい?父さん」


「いや、待って!それは父兄参観の時だけだから!」

と、慌てて翠仙が止めに入る。


「ウチの玉仙さまも父兄参観の時何故か顕現してたけど……その時だけにして!!」


『え~~~ついてく~~~っ』

と、不満顔の父兄たち。


「せめて隠形していって!」

と、翠仙が付け加える。


「じゃ、隠形してついて行きましょう。伊夜もできますものね」


「あぁ、父さん」


「んもう……恥ずかしいよ~~~」


「それじゃぁ……1回だけ。1回だけね?」

と、翠仙。


「では、1回だけ」


「そうだな。父兄隠形参観だ」

と、早速白夜の学舎への隠形参観に盛り上がる父兄たち。


「……ん……我の時もそうだった」


「あぐ……っ」

先ほどからずっと翠仙のお膝の上に頭を乗せてくつろいでいた玉仙がぼそっと呟いたのだった。


「あぁ、実体験でしたか」


「いや、その時も言い出しっぺは扇さんでしょ!!?んもうっ!!」

久々にめずらしく取り乱してしまった翠仙だったのであった。


【過保護No.1決定戦】


「全くあなた方は隠形して学舎にまでついてくなんて……」

告げたのは冬代だ。

自らの御子である雪代がサンダ島精霊の社の翠仙と白夜に会いに遊びに行ったついでに付き添ってきたのだ。

因みに雪代も冬代もネズミ耳しっぽを持っており、雪代のネズミ耳しっぽは彼の御子である証でもある。

ついでに括りで言うと獣人族ではなく人族である。


そして精霊たちの親バカ全開にそっと嘆息した。


腕を組む冬代の目の前には煌夜がにこにこしながら、伊夜が微妙な顔をしながら、玉仙がむすっとしながら正座させられていた。


「では、冬代はついて行ったことがないのですか?」

と、煌夜が切り出す。


「何故、ついて行く必要があるんですか」


「だって、心配だろう。虐められていないか、とか……お友だちと仲良くできているのか、とか……」

と、伊夜。


「我の翠仙に手をだす輩は……一匹残らず屠る……っ!!」

「やめなさい、玉仙。そんなことをする輩にあなたが手を出したら大事ですよ」


「冬代だって雪代について来たじゃないか」

と、不満げに玉仙が口をとがらせる。


「あぐ……っ!それはあなた方が親バカすぎて……いつもはくっついてきていない」


「だがもし虐められていたら、どうする!?」

煌夜にめずらしく熱が入る。ナキ島では白夜が迫害されたとあってそういう心配も分からなくはない冬代なのだったが。


「そう言うのは……父親の月代に任せていますから……」

月代はゴソ島の精霊の社の現司祭を務めている雪代の父親だ。


「白夜のお父さんは私ですが?」

と、煌夜。


「うぐ……っ!で……でもですね……人間同士の問題なんですから……」


「まぁ……ウチでは扇に任せれば安泰だが……」


「扇殿はマッドポーション持って追っかける派でしょ?後で浅葱殿に怒られているのを知っているんですから」


「……」

それを聞いて玉仙は渋い顔になる。

割ととっつきにくそうな玉仙だが、かわいい翠仙のことになると扇と一緒に結託してやらかすことも少なくない。


その度に普段は激怒すると恐ろしい玉仙が扇と一緒に浅葱の前で正座させられるのである。


「とにかく限度というものがあるのです」

「では……どうしろと?」

煌夜が冬代を見上げる。


「……我が子を影ながら見守ってこそ親の鏡というもの。あんまり執着しすぎると……反抗期に苦い思いをしますよっ!!!」

※あくまでも冬代の個人的な所見ですので個人差があります。


「はぅっ!!」

「ひぐっ」

その言葉に煌夜と伊夜が息を飲んだ。


「……」


「何故、黙っているんですか。玉仙」


「……別に」


「あぁ……あなたも経験者でしたか」

「そういう、お前もだろ?」

と、その言葉を逆手に取る玉仙。


「ぎく……っ」

そう、苦い顔をする冬代も珍しい。


「ひょっとしてあの月代さんがですか?」


「あぐぐ……っ」


「ひとは見かけによりませんねぇ。まぁまぁ、皆さん、親バカ仲間ということで」

と、にこにこ顔の煌夜。


「わかったのでしたら経験者の忠告はしっかり聞きなさい」


『は~い』

のほほんと返事をする白夜の父兄なのであった。


【森の精ごそ島支部隊】


「雪代ちゃん、またお膝まくらなのれす~」

前回、白夜や玉仙の膝枕を見て以来膝枕をいたく気に入った森の精ごそ島支部隊のみこが本日も雪代におねだりに来る。

因みにネズミ耳しっぽのちびっ子(ただし緑)。


「いいよ。おいで」

「わ~い、なのれす~」


「みこちゃん、かわいい。同じネズミ耳しっぽだし……まるで妹みたい」


「みるもなのれす?」

「みうもなのれす?」

と、そこに他の森の精ごそ島支部隊員のみるとみうもやって来る。

みるとみうもみこと同じくネズミ耳しっぽだ。

※もちろん緑。


「みるくんとみうくんは、弟ね。ふふ……私、ひとりっ子だったから妹と弟ができて嬉しいな」


「はうぅ~、雪代ちゃんはみこたちのお姉ちゃまなのれす?」

「うん、お姉ちゃん……ふふふ、何だかいい響きだね」


『わ~い、お姉ちゃまなのれす~』

喜ぶ森の精たちを微笑ましく見守る雪代なのだったが不意に森の精霊であるナズナが顕現する。


「雪代ちゃん」


「ナズナさま?いらっしゃい」


「お邪魔します。あのね……?」


「何か……あったのですか?」


「雪代ちゃんはみこちゃんたちのお姉ちゃんになったので私たち小国連合地域のすべての森の精たちのお姉ちゃんに就任してしまいました」


「へ……?」

これこそが森の精たちの世界樹のリンクシステムである。


「因みに白夜くんも私たちのきょうだいですね」


「白夜くんも……じゃぁ、ナズナさまも……ナズナお姉ちゃん……?」


「そうなります」


「兄弟姉妹がたくさん……あ、翠仙お兄ちゃんは?」


「白夜くんと雪代ちゃんのお兄ちゃんならば……あと、伊夜お兄ちゃんもですね」


「わぁ、皆、兄弟姉妹……楽しいね」


「えぇ。皆一緒で楽しいです」

世界樹のリンクシステムの一大ネットワークの拡大という結構な大事に発展しているはずなのだが……ふたりはのほほんと微笑むのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ