セシリーとキュオネー
――――その日俺は休憩がてら、テレビを見ていたのだが。
『エストレラ王国の皆さ~ん!エストレラ王国のアイドルリポーター・セシリーです!本日は西部辺境がクォーツ州ラズーリ領に来ています!そして今回は南部連合王国からスペシャルなゲストをお招きしました~~~』
え?セシリーさん、ラズーリ領に来てたんだー。
『どうも~!エストレラ王国の皆さ~ん!南部連合王国でアイドルリポーターを務めております……キュオネーで~すっ!!よろしくお願いしますねっ!!』
きゅ、キュオネー!?いつの間にエストレラまで来たの!!?キュオネーと言えば南部連合王国で出会ったリボンがトレードマークのかわいい女の子である。
その番組の名は……【セシリーとキュオネーの~エストレラ王国西部辺境周遊旅行~】!!!
『きゃぁっ!キュオネーちゃんったらかわい~ぃ!南部連合王国では歌手活動も行っているのよね……!』
『はい!僭越ながら……!』
『今流れているBGMもキュオネーちゃんの歌なんですよ~!うん、魂に響くようなステキな歌声です!』
テレビ番組の冒頭にはいささか不釣り合いな感じのするキュオネーの力強い歌唱力とこぶしの効いたいつかのテーマソングである。
そう……キュオネーは南部連合王国の歌って踊れるアイドルリポーターなのである。
『えへへ、憧れのセシリーさんに言っていただけるなんて光栄です~~』
『まぁっ!私が憧れ……?』
『はいっ!!エストレラ王国のアイドルリポーターといえばセシリーさんです!私の故郷の南部連合王国桃雲県では一部エストレラ王国の放送が入って来るんです!そこでセシリーさんの中継を見て私もアイドルリポーターになって、南部連合王国の国民の皆さんを元気づけたいって思ったんです!』
へぇ……南部連合王国の一部ではエストレラ王国の放送が見れるのか。キュオネーは南部連合王国各地を飛び回っているが実家は桃雲県らしい。
桃雲県とはエストレラ王国東部から海をまたいだ先にある南部連合王国の県のひとつである。
『まぁ……っ!キュオネーちゃんったら!かわいいっ!!んもう、私のことはセシリーお姉さまって呼んでいいわよ?』
『……っ!セシリーお姉さま!』
『きゃぁ!いい響きね!ここ、クォーツ州では年上をアニキやお姉さんと呼んで年下を弟や妹と呼んで兄弟姉妹のように親しくする慣習があるんですって!』
『まぁ、ステキです!セシリーお姉さま』
『うんうん、やっぱりいいシステムだわっ!!』
まぁね。それで一層親しくできてる気がするし。
最近では王都にある王立エストレラ学園でもクォーツ寮が発端となり、踏襲されている文化だ。
『じゃぁ早速、ラズーリ名物を紹介していくわねっ!』
『はいっ!楽しみです!!』
『あ、因みに今流れているBGMは……私が昔歌っていた歌ですよ~!えへへ、ちょっと恥ずかしいです』
『そんな!とってもいい歌です!私、CD買いました!!』
『もうっ!さすがは私の妹ねっ!!』
てか、ええぇぇぇっっ!?セシリーさん!?何となく聞き覚えのある歌声だと思ったらまさかのセシリーさんも歌ってたの!?
『まずは……こちら!ラズーリ領と言えばラズーリ温泉!その名物でもある温泉まんじゅうですっ!!』
『はむはむ……んんっ!!甘いあんこと、外側のほろ苦黒糖生地の相性が抜群です~~~っ!!』
『でしょでしょ~~~?他にもクォーツ州にはご当地ならではの温泉まんじゅうがいっぱいあるのよ~~~っ!!』
『はうぅ……!それも気になります~~~っ!!』
確かにアメシスタ小領での温泉まんじゅうはいもあんだったなぁ。そしてアメシスタ小領はクォーツ州に属しておりクォーツ領の一部である小領と言う括りに入る。
ついでにそこにはかわいらしい小学生サイズのご当地精霊……温泉の精霊コンビがいるぞっ!!
ここ、クォーツ領の温泉まんじゅうは温泉まんじゅうではなくいももちである。
なんでやねん。
『お次はこちら!ラズーリ産スルメせんべいです!』
『わぁっ!!スルメのだしが濃厚で……っ!!おせんべいもパリッパリ!おいひぃれす~~~』
そ……そのスルメって魔人族の角で収穫したスルメか……?
『あと……今西部辺境で流行っている……タイタン産タコを使ったタコ焼きもおすすめよ~~~っ!!』
おぉ……っ!!タコ焼き!!無論、タコの産地エストレラ王国北部タイタン領でもすっかりおなじみのタコ焼きとなったが、俺が暮らすクォーツ州を含む西部辺境全域でも流行っている。
最近では他地域でも流行り始めたのだとか。ただ、焼く技術が大変なんだよな。その技術が……なしてか魔人族は得意だったっ!!!
その達観したタコ焼きさばきはベテランのタコ焼き職人そのものであるっ!!
『はふはふ……っ!!おいひぃ……!この中に入っているぷりっとしているのが……タコですかね……?初めて食べましたがおいひぃれす~~~』
『でしょでしょ~~~?中でもラズーリのタコ焼きは絶品なのよ~~~』
『はうぅ~~~病みつきになりそうです~~~
私もタコ焼き焼き機、一機買って行こうかな~~~』
(テロップ)【キュオネー、一機お買い上げ】
あ……買ったんだ。結局。
『それにしても……やっぱりラズーリ領は魔人族の方が多いですね~』
『うん。魔人王城があるくらいだからね!キュオネーちゃんは、魔人族はどう?』
『魔王様たちとは一風変わった角を持っていて新鮮ですね~』
『私もこの間、西方魔王国を訪問して西方魔王のベルタ陛下や西方魔族のアリーちゃんを取材したんですよ~~~』
そう言えばそんな番組もやってたな……。
『キュオネーちゃんも魔王様の取材を?』
『いえ、その時は取材ではなくお会いしただけだったんですが、東方魔王様はかっこよくて強そうで北部魔王様は髪がさらっさらでとってもキレイなお方でした!今度はセシリーお姉さまみたいに取材させていただきたいですね~』
その2人にあった件も今考えればすごいことだけれど、その取材をしたいというキュオネーもすごい。
そんなこんなで続いたセシリーさんとキュオネーの周遊旅行。そろそろエンドロールだ。
『それでは皆さん、また見てくださいね~』
『エストレラ王国の皆さ~ん!これからもキュオネーをよろしくお願いしま~す!!』
……最後のBGMはキュオネーソングだった。
「まさかキュオネーがこっちに来てたなんて……」
「クロ、これからセシリーさんとキュオネーちゃんとクリスタに行くから一緒に行こうか?」
え……?今、ヴェイセル……何て?
「取材が終わったから今日はオフなんだって。俺、南部連合王国からの移動も頼まれたからさ、それつながりで久々にクロとも会いたいって」
「えええぇぇぇっっ!!?」
それも驚きだが……キュオネーの南部連合王国からの移動は便利なヴェイセルのゲート魔法だったらしい。




