赤髪の剣聖VS先代の剣聖
――――その日談笑ルームでくつろいでいた俺は前にもちらっと聞いたことをヴェイセルに聞いてみた。
「そういやさヴェイセル。先代の剣聖ってどんなひとだったの?」
コイツが倒したとか聞いたような気がするのだが……?
「あぁ……その話ね」
とヴェイセルが当時のことを語り出した。
――――
「その赤髪……最近話題に上っている剣聖ヴェイセルだな……」
短い金髪にいかついコワモテ、鍛え上げられた筋肉にまばゆい聖剣を掲げる男がキッとこちらをねめつける。
「いかにも……あんたは剣聖アローワンスか」
誰もがひるんでしまいそうになるその鋭い碧眼に冷たい青の双眸を向ける青年ヴェイセルは怯みもせずに剣聖アローワンスの前に立ちはだかる。
「そうだ……俺がこの世界の剣聖アローワンスだ」
何か地球でもそんな英単語があったなぁと思い出しつつも、ヴェイセルは涙ぐむかわいらしい魔人族角の南部魔族のロリショタっ子双子を背に庇い剣聖アローワンスに向き直る。
「お兄ちゃん、このマッチョこわいよぅ」
「ふえぇ、お兄ちゃん。このパツキンいきなりぼくたちを襲ってきたんだ。こわいよう……」
かわいいショタ双子はすがるようにヴェイセルのマントを掴む。
「そいつらは魔族だ。剣聖として滅ぼさねばならない」
「あいにく俺はエストレラ人だからね。そういう魔族だの魔人族だのだから滅ぼすなんてそんなわけのわからない理屈は理解できないよ」
「く……っ!相変わらず魔族を魔人族と呼んで仲良しこよしやっているようだな。エストレラ人はっ!しかし魔族は悪っ!!そしてその双子の魔族は他人を魅了し操る魔眼……いや、邪眼の持ち主っ!!この世に混沌を招きかねないっ!!さぁそこをどけっ!!若造がっ!!」
「……だから?」
「何……だと?」
「ショタ双子が魔眼でお兄さんを誘惑してかまってアピールしてくる……最っ高にかわいいじゃないかっ!!!」
「お兄ちゃんったら!」
「ぼくたち、お兄ちゃんが大好きになっちゃったかも!」
「何を言っているんだ!?」
意味不明な剣聖ヴェイセルの演説に驚愕する剣聖アローワンス。
しかしヴェイセルは続ける。
「俺の使命は全てのショタっ子の笑顔を守ることっ!俺の聖剣は全てのショタっ子のためにふるう!」
「……な……何言ってんだ?おめぇ……」
もはや剣聖アローワンスもきょとんである。
「はああああぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
鍛え上げられたヴェイセルの剣薙ぎが剣聖アローワンスに直撃する。
だがさすがは剣聖アローワンス。一発では倒れない。
激しい剣戟が続く……。
そして……。
ガッキイイイイイイィィィィ――――――ンッッ!!!
「がはっ!!」
剣聖アローワンスが血を吐いて地面に倒れこむ。
「お父さあああぁぁぁ――――ん」
剣聖アローワンスに駆け寄る金髪碧眼の美女がキッとヴェイセルを睨みつける。
「もはやお前の聖剣は折れた。ショタっ子を泣かせた以上、剣聖の名は返上してもらう」
「……くま……」
金髪碧眼美少女は恨みの籠った目でヴェイセルを更にきつく睨みつける。
「赤髪の……悪魔っ!!!」
「だから何か?俺は世界を混沌から救った赤髪の大鬼と同じこの髪色を誇りに思っているからね。それじゃ……もう会うこともないだろう」
ヴェイセルはガクリと項垂れる剣聖アローワンスと彼の娘に踵を返し、ショタ双子ナズとユズを連れ、彼らの兄ハキの元へと無事送り届けたのだった。
――――
「……て、こういう話」
「……ヴェイセル。何か……かっこいい話のはずなのにものっそい残念だな」
「ん……?どこが?あぁ、剣聖アローワンスに美人の娘プログレッシブがいたところ?」
「いや、そこじゃないと思う。てか娘の名前プログレッシブって言うんだ」
全く、剣聖らしいことをしていると思えば相変わらずどこか残念なのがこの剣聖ヴェイセルである。
俺は嘆息すると、ヴェイセルの淹れてきたアイス抹茶ラテスペシャルを啜るのだった。




