ある意味同窓会
――――side
仲良く手を結んでロザリア帝国南部で待ち合わせていたのは2人の少女である。
エストレラ王国在住でお麩の伝道師アンジェリーナことアンジェ、それから今はしがない庶民のお麩女のフロレンティーアことフローラだ。
「お麩カレー?」
「そう!お麩カレーって言うか……カレーお麩?」
「どっちでもいいけどおいしそうね!アンジェ」
「えぇ早速行きましょう!フローラ!」
2人は早速目当ての場所へ向かう。
――――シルヴァリー共和国、某所
チャリン……
「あ、いらっしゃいませ!」
シルヴァリー共和国の冒険者たちが集う宿屋の飲み処にて給仕を務める看板娘ソフィアは、まだ夕飯時には早い時間に訪れた3人組の冒険者パーティーを迎えた。
「あの……ごめんなさい……まだ、準備中で……」
「あっちゃ~……やっぱ早いってさ」
「だから時間潰そうとしたのに……」
「まぁまぁみんな、落ち着いて」
パーティーの中の青い髪の女性が宥める。
「えっと、私たちお麩カレーが食べたくって来たんだけど……」
「あぁ……!今シルヴァリー共和国で流行っているアレですね。夕食時に出ますけど、お待ちになります?」
「え……いいの?」
「もちろんです。と言っても大体早い時間からお仕事を終えた冒険者の皆さまが来ますから構いません。今の時間は飲み物しか出せませんが……」
「ありがたいです。ちょうど喉が渇いていたので。お水をいただけますか?」
「はい」
頷くと、パーティーは空いている席に腰を下ろす。
「良かったね、リーナ」
「うん、本当に」
どうやら青い髪の女性はリーナというらしい。
早速彼らにお水を出したソフィアは再び新たな客を迎える。
「こんにちは~!今夜予約してたリンちゃんパーティーです!ちょっと早く着いちゃった~~~っ!」
「ちょっと、エジュ。そのパーティー名はいい加減恥ずかしい」
「いいじゃんっ!姐さんさいこ~!」
「こら、エジュ、デルハ。騒がない」
『は~い』
賑やかなメンツで現れたのは……人族の女性だ。シルヴァリー共和国ではあまり見ないエストレラ風竜人族の男女、そして魔族の男性だ。
「本日ご予約のリンちゃんパーティー様ですね。まだ夕食には早いですが、お飲み物ならお出しできますよ」
「それじゃぁ、おすすめちょ~だいっ!」
と、エジュと呼ばれた女性。
「はい、ただいま」
ソフィアがお薦めのマンゴージュースを出したところで、馴染みの商人たちが顔を出す。
「お待たせ~!今日もお野菜持って来たよ~、夕飯はここでとっていい?」
「もちろんですメローナさん、ザクロさん」
いつも宿屋に食材を卸してくれる商人のメローナとその夫ザクロはかつてはいろいろな土地を転々としていた。最近はシルヴァリー共和国や小国連合を中心に商売をしているため、ソフィアたちが世話になっている宿屋でも馴染みの商人なのだ。
そしてメローナとザクロにソフィアがいつものコーヒーを出し終えたところで……。
「ソフィア、ただいま」
「お帰り!お姉ちゃん」
ソフィアの姉ミシェルが依頼を終えて帰宅した。そしてふたりの女性を連れてきたようだ。
「道に迷っていたみたいで。お麩カレー目当てなんだって。ウチ、確か部屋も空いていたと思うし……」
「うん、もちろん!おかみさんに伝えてくる!えと……お水は……」
「それは私が出すから、大丈夫。こっちよアンジェ、フローラ」
「ありがと~!ミシェルちゃん!」
「ちょっとアンジェ、はしゃぎすぎ……」
とフローラがアンジェをたしなめようとした時、
そこにあり得ない人物を見つけたフローラが固まる。
「……久しぶり……」
「うん、久しぶり……」
フローラの言葉にリーナもまた目を瞬かせていたのだった。
――――
夕食時、宿屋の飲み処には冒険者たちが集まる。
ミシェルもソフィアの手伝いをしながら給仕をしていたのだが……。
急に友人のメローナに引き寄せられ飲み処の即席ステージで踊ることとなってしまったミシェルとソフィア。
おかみさんと親父さんまで楽しんどけと背中を押す。
その光景にアンジェもフローラを連れ立ち、それならとフローラがリーナを誘う。
そんな感じで町娘たちによる即席ライブのようになりながら、彼女たちはまるで同窓会のような不思議で賑やかな晩餐を過ごしたのであった。
そしてその夜、馴染みのその宿屋を訪れたSS級冒険者のシュアンは驚く。ミシェルとソフィア双子は宿屋で世話になっているからいいとして、ロザリア帝国の元皇女たちや、ルタ獣王国の元王女まで一緒にいるとは。まるで今までとは別人のように笑顔でごく普通の町娘のようにはしゃいでいる光景に暫く唖然としつつも、久々に出会った古い知り合いのザクロを問い詰めつつ酒を飲み交わしたのであった。




