光の精霊士の宿命
――――その日、俺は衝撃を受けた。
「じゃ~んっ!クロ、見て見て!」
「ヨル殿下の初マッドポーションだよっ!!」
堂々とキラッキラした目でマッドポーションを見せびらかしてくるヨル。さらに一緒にキラッキラした目でそのマッドポーションを讃えるアリス。
つ……遂にヨルも……っ!ヨルにまであの恐ろしいマッドヒーリング班が浸食してしまったぁ――――っっ!!!
まぁ……何せクォーツ祭壇の光の精霊士長フィンさんがマッドヒーリング班の首領だもん。おのずとこうなるはずである。というかエストレラの光の精霊士たちは全員加入しているんじゃないかと思うほどマッドヒーラーだらけだ。
最近では小国連合にも波及しているらしく、紅消と一緒にマッドヒーラー交流を続けているらしい。
「紅消さん直伝だよっ!」
「素晴らしきマッドポーションが出来上がりました」
嬉しそうなヨル。そして満足げな表情を浮かべる紅消。
「うぐおおぉぉっっ」
俺は……俺は……どうすればいいんだ。双子の弟の初めてのマッドポーション。褒めてあげたいが……でもそれマッドポーション!!
「因みにどんな効果があるマッドポーションなの?」
「えっとね……ほ・れ・ぐ・す・り」
とヨル。
「え……それ、何に使うの?」
惚れ薬ってマッドポーションだったんだ。勉強になるなぁ……。
……じゃなくって!!何のためにそれを!?婚約者のユエさんとはラブラブだから惚れ薬なんていらないと思うんだけど……?
「これがあればクロともっと双子の絆が深まるよ?」
いや、双子の絆を深めるのに惚れ薬って必要なのか?
「だから是非飲んでほしくって……!」
いやそんな目で見つめられても……!マッドポーションな時点で絶対飲みたくないよぉっ!!うわああぁぁぁ――――んんっっ!!ヨルがマッドヒーラーの階段を着実に昇り始めてるよぉ――――っっ!!!
「――――ったくクロ殿下ったら。しゃぁねぇなぁ」
とそこにギョクハンアニキがやって来る。
「没収」
素早くヨルの手からマッドポーションをかすめ取るギョクハンアニキ。
「ああぁぁぁっっ!!ギョクハンアニキ!!」
ヨル、めちゃくちゃ悔しがっている。ヨルはすっかりクォーツ州民のアニキ、お姉さんシステムに順応し、華麗にアニキやお姉さんと呼んで彼ら彼女らからかわいがられている。
因みに弟妹たちからは俺と同じような感じでヨル殿下お兄ちゃんと呼ばれている。
「それにこんなもんなくてもクロ殿下はヨル殿下のこと、大切に想ってんだろ?」
「はうっ!それは……」
「そだよ、ヨル。俺にとってヨルは唯一無二の双子の片割れなんだから」
「うん……っ!クロったら、嬉しいっ!」
がばっと抱き着いて来るヨル。
よかったぁ……これでヨルがマッドヒーラーの道から外れてくれるだろう。
健全なヒーラーにもど……。
「それじゃぁ、次はねばねばマッドポーションにしてみる?」
とアリス。
「しびれまひマッドポーションもいいですね」
と紅消。
何で同じ意味のしびれとまひ重ねたよ。効果2倍ってこと……?
「うんっ!次もステキなマッドポーション作るからねっ!」
めちゃくちゃ笑顔のヨルがウキウキしながらアリスと紅消と、再びマッドポーション作りに向かって行く。
「ぎょ……ギョクハンアニキ……?」
「諦めな。俺たちにできることは奴らが暴走する前に止めること。マッドヒーラーの道に進んじまったらそれを真っ白なヒーラーに戻すことは……不可能だ」
「ぐっはああああぁぁぁっっ!!!」
「ま、司祭になった以上クロ殿下も頑張れよ?」
う……うん……。
そだね……。
早くギョクハンアニキやシェル司祭様みたいにマッドヒーラーを掌の上で転がせるようにならなくては。双子の弟のマッドヒーラーへの転身に心の中で嘆きつつも、志を新たにした俺だった。




