もうひとりの召喚者と不思議な瞳
――――side:ゼン
ランベルト様に拾っていただいてから数年が経った。今日はかつてロザリア帝国で召喚された召喚勇者のシロナ、召喚聖女のヒメナが赤髪の召喚勇者を招いてロザリア帝国城で同窓会をするらしい。気軽に彼らが帝国城を訪れ、同窓会をできるとは思ってもみなかった。
やはり第2皇女が追放されて暫く経ち、赤髪の勇者の情報が開示されたことも理由としてはあるだろう。
彼らの同窓会会場の隣の部屋ではヒメナの主のディートハルト殿下、そのご学友であるエストレラ王国第4王子のクロ殿下を招き花茶やワッフルケーキを楽しんでいるんだとか。
俺もランベルト様の奥方様に手作りのものをいただいたけどなかなかおいしい一品だった。また食べたいな……。
そう言えばランベルト様の奥方様ってたれ耳の兎耳……つまりはロップイヤー風だ。すっかりこちらの言語が理解できるようになった俺だが、あの日ランベルト様にもらったロップイヤーウサちゃんマスコットはお守りにと今も身に着けている。
ランベルト様はやっぱりロップイヤーがお好きなんだろうか。まぁクマちゃんバージョンもあったわけだし、必ずしもロップイヤーじゃなくてもいいんだろうが。それでも立ち耳のウサちゃんではなく、敢えてロップイヤーウサちゃん。
や……やっぱり確実に好きなのだろうか……?ランベルト様っ!!
まぁともかく同窓会の件だ。俺は彼らとは疎遠だったけど、一応元気な顔を見るくらいはしてこようかと思って帝国城の回廊を進んでいたんだが……。
「あの……」
青空の色をそのまま映したかのような不思議な目が俺をまっすぐ見つめていた。この感覚は久々だ。まるであの日ランベルト様に出会った時のよう。そしてディートハルト殿下のあのキレイな紫のまんまるい瞳を思い出す。
「えと、このお城のひとですよね」
「……」
「あの……?」
は……っ!つい、見入ってしまった……。
「は……はい、そうですが」
即座に意識を元に戻す。
「えっと、お手洗いを借りたら……迷ってしまって……あの、ディートとお茶をしていた迎賓室に行きたいんですけど……」
「……」
ディートハルト殿下と……というとやはりこの方は。
「ご案内します。クロムウェル殿下」
ディートハルト殿下のご友人のエストレラ王国第4王子クロムウェル殿下だ。
「あ、はい。クロでいいです」
「……」
確かそう言う愛称で呼ばれていたな。元第2皇女がエストレラのロンド州で問題を起こした際、俺は赤髪の剣聖が開いたゲートの向こうに待機していた。
捕らえられた元第2皇女やその仲間を連行する手伝いをしていたのだ。その時にこの不思議な瞳の王子と赤髪の剣聖を見た。
まぁ赤髪の剣聖は度々ランベルト様の元を訪れているから知っているけれど、ランベルト様を呼び捨てにしていたりディスったりしているすごいひとだと思う。
それに関してランベルト様は『それも中々新鮮で面白い』と笑っていたから一体どんな関係なのか謎だけど。
「はい、クロ殿下」
「あの……あなたのお名前は?」
「……ゼンと申します」
「ゼンさん!俺、ゼンさんに会えて良かった。周りに誰もいなくって、焦ってしまって」
「えぇ、この紅消、迂闊でございました」
「……っ!」
その時響いた声にハッとする。何だ……このひと。まるで気配がなかった……?
それにその黒ずくめ……忍者なのか……?
「でも城のひとに会えたし、俺もよく覚えてなかったもん」
「……あの、その方は」
「俺のお世話係の紅消だよ」
「どうも」
え……お世話……係?とてもそうは見えないんだけど。どう見ても忍者とか暗殺者のように見える。エストレラではこれが普通なんだろうか……?
「……ど、どうも……あの……こちらです」
しかしひとまずディート殿下の元へとご案内することにした。俺の目的地もその隣の部屋だ。
迎賓室まで案内すると、中にはディートハルト殿下、その従者のイェリク殿、赤髪の剣聖殿、そしてご友人だと思われる少女が待っていた。
「やったぁ!やっと見つけた!」
「遅いと思ったら迷っていたのか?全く……」
悪態をついているようなディートハルト殿下だが、あれは心底心配しているセリフなのだと以前ランベルト様がおっしゃっていた。そう考えるとかわいらしいお方だと思う。
「それならそうと呼んでくれたならすぐ迎えに行ったのに……」
と、赤髪の剣聖殿が言う。
「それは何か悔しいから……でも城のひとに案内してもらったし」
と、クロ殿下がこちらを振り向く。
「何だ、ランベルト兄上の従者か」
「……ディートハルト殿下、やはり俺をご存じで?」
前もそう言ってすごい見つめてきたツンツンとかわいらしい皇子殿下。
「いつも、ランベルト兄上の傍に控えているだろう。そりゃぁ覚えるぞ」
やはり驚くなぁ。クロ殿下だけではなくディートハルト殿下も当たり前のように俺を認識してくれているのだ。
「ありがとうございます」
「ふん……優秀な従者だからな。兄上も安心だろう」
「もったいなきお言葉です」
そう言って微笑んだ時迎賓室の続き扉が開き、召喚聖女のヒメナが現れた。
「あの、ディート。ちょっと聞きたいことが……あっ!」
その瞬間ヒメナはあの時のようにその双眸でじっと俺を見た。
認識されたのはあの時以来、一度もなかったはずなのに。そしてあとに続いて来たシロナと赤髪の勇者も一様に俺をまっすぐ見ている。
……どうしてだ?
けれど何となく、今隣にいる不思議な瞳の王子たちの効果なような気がしてしまう。ランベルト様から色々と話を聞いてはいるけれど、本当に何か不思議な力を持っていそうな方々だ。




