もうひとりの召喚者とランベルト
――――side:ゼン
「これは特別なものでな。異世界から来た者にもこちらの言葉がわかるように変換し、異世界人の言葉もこちらの言葉に変換する。付けているうちに自然とこちらの言葉がしゃべれるようになるという便利アイテムだ」
ランベルトさんの部屋に案内された俺は早速ランベルトさんからその……ウサちゃんマスコットを首から下げた。
何故……ウサちゃん……しかも立耳タイプではなくロップイヤー風である。
「さて、私はこちらの言葉で話しているがわかるか?」
「はい。えと……ランベルト……さん?」
「……呼び方はひとそれぞれだが、万が一お前を認識できる者がそれを聞くと反感を持たれるやもしれん」
「えと……では何とお呼びすれば……」
――――と、その時ノックの音と共に部屋にランベルトさんの部下と思われる青年が入って来る。
「ランベルト殿下、報告書をお持ちしました」
彼は俺に気付きもせず報告書を届けると、再び部屋を後にした。
しかし……今のひと……。
ランベルトさんのことを殿下って呼んだよな……?
「えと……ランベルトさんって一体、何者なんですか……?」
「一応は……ここ、ロザリア帝国の第1皇子にして皇太子の地位にいる」
皇子な上に……皇太子……!!?
「その……じゃぁ……殿下って……呼べばいいですか……?」
「殿下と呼ばれることが多いが、それなりに親しい部下は様をつけて呼ぶ」
それって……。
「では……ランベルト様?」
「よろしい」
俺は右も左もわからぬこの異世界で、この帝国内で一、二を争う権威を持つ主を得たのであった。
そしてランベルト様から今回の召喚騒ぎについておおよそのことを教えてもらった。
俺たちを召喚した場にいた偉そうな女はこの帝国の第2皇女で聖女。
召喚されたのは俺の他に勇者が3人、聖女が1人。
その内勇者の処遇だが、赤髪の少年は髪の色を理由に西方荒野という規格外のモンスターが生息する恐ろしい場所に追放されてしまったらしい。
「……彼はその後はどうなったんでしょうか」
「……これは内密な話だが。とある赤髪の剣聖に依頼し西方荒野で拾ってきてもらった」
「赤髪の剣聖……?」
「あぁ……今、この世界において最強と名高い男だ。その男に頼み最も安全な場所に預けてもらった。まぁ場所についてはまだ話すことはできないが」
「いずれ会えるでしょうか」
「あぁ……時が来たらな。それまでは秘密にしてくれ」
「はい、もちろんです」
そんな大事な話をいきなり俺にしてくれるのも驚きだが、何故かこのひとは信頼できる。
そして俺のことを信頼してくれている気がした。
「でも髪の色を理由に追放なんて……そんなことがこの帝国ではまかり通るんでしょうか」
「……ゼン、お前は私の髪の色はどう思う?」
「え……っ」
そう言えばランベルト様の髪の色は暗めの色だけど、どちらかと言うと赤みがかっている。
「す……すみませんっ!」
「いや、構わん。ロザリア帝国ではこういった赤みがかった髪は珍しい。私の髪も父と母の髪色が混ざり合ったのか、突然変異なのかこんな変な色だ」
因みに父親である皇帝陛下は紫がかった銀髪、母親である皇后さまは黒髪だそうだ。
「変だなんて……そんな……」
「ふふ……この世界では大昔に伝承の勇者という英雄がいた。その勇者を討ち取ったのが大鬼の……大赤鬼の剣聖だったから赤髪を忌避する風潮のある国がある。我が帝国でも私の髪色がこんなだし赤髪の剣聖が世界的に活躍したおかげで、随分とそのような偏見が減ったが、未だにそのような思想を振りかざす者がいる」
「そう……だったのですか……」
そして白い髪の勇者と残りの勇者は第2皇女の庇護の下で鍛錬にいそしんでいるらしい。
「それでケモ耳しっぽの聖女は……」
「……捜索中だ……」
「あの……ランベルト様」
「どうした」
「俺、知ってます。彼女の居場所を。そして彼女と白い髪の勇者を助けてはもらえないでしょうか。彼女たちは……」
「……」
「いきなりこんなお願い……ダメですよね。生意気……でしょうか」
「いいや、お前はなかなか優秀なようだ、ゼン。それで場所はどこだ?」
「帝国城の地下……古い牢獄のあるあたりです。白い髪の少女は夕方くらいに食事を運ぶため、あのケモ耳しっぽの少女の元に足を運んでいるようです」
「……ディートが度々忍び込んでいるあそこか」
「ディート……とは?」
「……弟だ」
――――と言うことは同じ皇子……ってこと?
「ディート殿下……ですか」
「あぁ、この帝国の第4皇子。第2皇女とは同母で同い年だが、ディートが早生まれでフロレンティーナが遅生まれだな」
第2皇女の名前はフロレンティーナって言うのか。
それにしてもディート殿下ね……。忍び込んでるってことはやんちゃっ気のある殿下なんだろうか……?
「私は急ぎ2人の救出の準備にかかる」
「……!」
2人……。
つまり、白い髪の少女も、ケモ耳しっぽの少女も助けてくれるということ……。
「ありがとうございます!」
「礼は無事救出してからだ。お前は先に地下へ行け。彼女たちに何かあっては困る」
「……!わかりました」
「念のため、武器を持っていけ。使えるか?」
「……俺は、素手でしたら。一応、空手は嗜んでましたから」
「そうか……では魔法除けの短剣を預ける。ここは魔法の存在する世界だ。何かあれば使うように」
「……はいっ!」
そりゃ、魔法のウサちゃんがあるくらいだ。普通に魔法はあるよなぁ。
俺は早速地下牢へと駆けた。




