もうひとりの召喚者
――――side:???
これは一体どうなっているんだろう。いきなりわけのわからない場所に連れられてきたかと思えば偉そうな女が叫んでおり、赤髪の少年が捕らえられ、白い髪のボーイッシュな少女が偉そうな女に食ってかかっている。
そしてその後ろではケモ耳しっぽの少女が赤髪の少年と共に捕らえられていた。
さらにもう1人の少年が偉そうな女と一緒にゲラゲラと笑っている……。
この異様な光景は……何なんだ……。
そして赤髪の少年とケモ耳しっぽの少女が連れていかれ、白い髪の少女は偉そうな女と少年と一緒にこの場を後にした。
……えと……俺は?
昔から空気みたいなやつだと言われていたけれど……素通り?
皆、俺に気が付いていないのか……?俺は……確かに今、ここにいる……。
それなのに……。
はぁ……これからどうしようか……?
残念ながら言葉がいきなりわかるというチートスキルは無いようだった。
多分、ここは異世界だ。
そして俺は召喚された……それで間違いはないだろう……。
それとも連れていかれたあの赤髪の少年とケモ耳しっぽの少女を探そうか……?しかし一向に彼らは見つからない。
不服そうに鍛錬に打ち込む白い髪の少女を見かけたが、その表情に悲愴なものを感じてしまい声をかけることを躊躇してしまった。
彼女のしゃべっている言葉はわかる。彼女は同じ日本人だ。言葉は通じるけれどとても話しかけられるような雰囲気ではない。
そしてあの偉そうな女と少年も見かけたが、あの少年の言葉は何故かわからないし……あの偉そうな女は……何か苦手だ。
俺は仕方なくその場を後にした。食料には困らなかった。誰も俺には気が付かないから厨房で少し食料を拝借……。
でもあまりやると食料が頻繁になくなると騒ぎになりそうだ……。
木の実でも採って食べようかな……?幸いここは異世界でおなじみのモンスターみたいなのは出ない安全な場所らしい。
そうした生活を繰り返して、一体何日経っただろうか……?
食べ物には困らないが夜は困った。寝ようにも場所は床しかない。
それにいつの間にか蹴り飛ばされたりしないよう、だだっ広い城のようなここの隅っこで適当に見つけた布を被って寝た。
城の中とは言え……ここは、寒い……。
何日こんな生活が続くんだか……。
ただあの白い髪の少女に話しかければ済むのかもしれないが……どうしてもその勇気が出せなかった。
そうして、何日……いや、何十日と色々な場所を探索して歩いた。
時には日中白い髪の少女を眺めていたこともある。その少女がひと気のない地下に向かって行き、そこでもう1人のケモ耳しっぽの少女と邂逅しているのを見つけた。
ケモ耳しっぽの少女は満足な食事も与えられず、こんな牢獄に閉じ込められていたんだ……。
白い髪の少女は首から下げたクマちゃんマスコットをケモ耳しっぽの少女に渡し、話し……そしてまた、白い髪の少女にクマちゃん返して、話をする。
どうやらあのクマちゃんは通じない言語を理解させるようなアイテムらしい。……しかし何故クマちゃん……?
俺にもあれがあれば便利なんだが……。それにしても、こんなところに閉じ込められているなんて……。
俺がどうにかできればいいんだけど、どうやって……?
何か武器を探そうと、城の中を探索していた俺は、不意に声をかけられた。
俺に……声をかけるひとがいる……?
振り向くと、そこにいたのは厳格そうな顔をした赤毛の青年だった。
しかし何と言っているのかはわからない。
「あの……俺……わからないです」
一応日本語で言ってみたのだが……通じるわけないよな……。
俺の言葉を聞いて一瞬驚いたような表情を見せた青年はゆっくりと口を開く。
「……これで、言葉がわかるか?」
「……!」
目の前の青年はゆっくりと俺の慣れ親しんだ言語を口ずさんだ。
「あなたも……日本から来たんですか?」
召喚者……なのか?しかしそれにしてはその見た目や格好は……。
「いや……私は……転生者だ。尤も色々と都合があって公にはしていない」
「転生者……」
「私はランベルトだ。お前、名は」
「……ゼンです……サガラ・ゼン」
「そうか、ゼンと言うのか……。さて、内密にしておいた私の秘密を知ったんだ。お前は私についてきなさい」
「うぐ……っ」
意図せずしてこのランベルトさんの秘密を知ってしまった俺はこれ以上独りでいても手詰まりなので大人しくついていくことにしたのだった。




