ヒメナと異世界召喚者の会
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ロザリア帝国城の迎賓室に2人の少女と1人の少年が集まっていた。
席に着いた少女……召喚聖女のヒメナは主から特別だともらった花茶を用意し、もう1人の少女召喚勇者のシロナはこの日のために用意しておいたお菓子の盛り合わせを用意する。
初めての花茶に興味津々な赤髪の召喚勇者イチルはそっとつぼみが花開いていくかのような花茶を今か今かと眺めていた。
「こうして3人で集まってゆっくりお茶を囲める日が来るなんて思いもしなかったですね」
と、ヒメナが切り出す。
「そうだな……召喚されて暫くは色々あった。そして皆、それぞれ帝国を旅立った」
とシロナ。
「……そうだね……俺も……」
そしてイチルは一瞬暗い表情を浮かべる。
「あ……ごめんね、イチルくん」
「あぁいや、いいんだよ。お互い様だと思うし」
「そうだね。お互い様」
召喚されてすぐに西方荒野に追放されたイチル、獣人族の聖女だからと牢獄に閉じ込められたヒメナ。2人の境遇は決してこの国で歓迎されたものではなかった。
こうして3人で集まって召喚された後のこと、そして今のこと。
一通り、お互いに話したところで……。
「そう考えると……私は……幸せだったのかもしれないな。1人だけ勇者として満足な部屋、食事、装備が与えられたのだから」
シロナが申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「でも……私のために怒ってくれたし、牢獄に閉じ込められた毎日私に会いに来てご飯を運んで話をしてくれたから……」
その行動すらもあの元聖女の反感を買っただろうに。
「ヒメナ……」
「ありがとね、シロナ」
「私の方こそ。ヒメナがいたから……イチルのことがあったから、どんな厳しい鍛錬にも修業の旅にも耐えられた」
それを聞いて2人が微笑むと、シロナも微笑む。
「シロナは色々な国に行ったんだよね。エストレラにも来たことはある?」
エストレラは現在イチルが暮らしている国だ。
「残念ながら……エストレラとロザリアは色々ないざこざがあったから、勇者の私は行くことができなかったんだ」
「そっか……でも、今なら……!私も今はディートのお供としてエストレラに行っているし、同じ召喚勇者のイチルも暮らしているから」
「そうだね」
「あちらでディートとお茶をしているはずだし……後でクロ殿下に聞いてみましょうか」
「それがいいかも」
今回の帝国での同窓会に合わせて、ディートも隣の部屋でお茶会をしている。
因みにいつものように……,
『別に、ヒメナと離れて寂しいわけじゃないんだからねっ!』……とディートはかわいらしい宣言をしヒメナがかわいらしいと頭をなでなでしてきたのはついさっきの話。そしてせっかくだからとディートがクロ殿下も招待したのだ。
イチルに連れ添って来たあの白銀の美しい竜ヴィオラは今回は少女の姿をしており、せっかくの3人の同窓会なのだからと遠慮し、クロ殿下たちと一緒に花茶を楽しんでいることだろう。
「あの……そう言えば……なんだけど」
「どうした?ヒメナ」
「召喚されたのって……私とシロナと……イチルと……あいつと……」
『あいつ』と言うのは勇者の資格をはく奪され、元聖女である元第2皇女と共に失墜した元召喚勇者タケルのことである。
だがヒメナもシロナもそしてイチルも快く思っていないためあえてヒメナもその名を口にしない。
「もう1人……いたような気がしない?私……シルヴァリー共和国で修業をするようになって1度だけ……皇后様に彼の行方を聞いた気がするの。行方についてはわからなかったんだけど」
「……召喚されたのは私たち女子2人に男子3人だったはずだけど」
「そこだよ、シロナ。男子の数が……1人多い。俺はあの時色々あって突然取り押さえられて、とてもそんな確認できる余裕はなかったけど……。確かにもう1人……いたような気がしてきた」
「……確かに!だが……姿が朧気で……よく、思い出せないな……」
「ランベルト殿下なら何かご存知かもしれません」
「確かにあの方ならイチルの行方についてもご存じだった」
「ディートもクロ殿下と一緒にいらっしゃいますし……聞いてみましょうか」
「そうだな……」
かくして3人は隣室で花茶とロザリア帝国の名物であるワッフルケーキを嗜んでいるであろう、皇子、王子殿下たちを訪ねるのだった。




