エル殿下とヒュイ
――――side:エストレラ
それはディートが侍女に迎えたヒメナと共にエストレラ王立学園に向かう少し前のことである……。
「それでヒュイはどう思う?ロザリア帝国第4皇子くんのこと」
問うのはクロ殿下にエル兄と呼ばれているエルヴィスだ。
「そうだなぁ……なかなか面白い子だと思うよ?」
エルヴィスの異母弟であるヒュイが答える。
「あれが計算によるものか、それともたんなる偶然か……」
「ヒュイは間違いなく計算だよねぇ」
「そうだね。でも父さんの場合は計算と言うより好き勝手やっているだけだからねぇ。世の中には計算するより好き勝手やった方がうまく運ぶ者もいる」
「へぇ……同じタイプだと思っていたけれど……興味深いね」
「因みに、エル兄さんは腹黒計算型」
「何で腹黒つけたの?ヒュイ」
妙に笑顔が際立つエルヴィスに構いもせず、ヒュイは続ける。
「ところでエル兄さん。暗部は例のこと、調べてくれたかい?」
「あぁ……確かに、あの日エストレラについて来た侍女、護衛の一部は第3王妃側……いや第5皇子派が混ざっており、あの一件ですべてが第4皇子の傍を離れている」
「まぁ恐怖で使い物にならなくしたのはエル兄さんだけど、彼は見事にその第5皇子の手勢を退けたわけだよねぇ」
「……ほんと、何で他の奴らは使い物にならなくなったのに平然としているんだか……」
「勢いの違いじゃないかい?」
「いや、あれは完全に他人の話を聞かず突っ走るタイプだよね」
「エル兄さん、何でぼくをそんなに見つめるんだい?照れるなぁ」
そうヒュイが苦笑する。
「ううん。盛大にディスってみたんだけど」
答えたエルヴィスの顔は恐いくらいに美しい。
「ははははは!」
「それにあの一件を理由にイヴへの第5皇子の求婚も断った。ロザリアとしては関係修復のための手だったようだけど。……そもそも妹を嫁にやるつもりはないけど」
「やれやれ、イヴ姫殿下の将来の伴侶は大変だね」
「いや、イヴは誰にもやらない!」
「シスコンはそれくらいにして……その後イヴ姫は第4皇子と仲直りしてすっかりお茶のみ友だちになっちゃったからねぇ。本当に第5皇子は面目丸つぶれだね」
「そこら辺はよくやったと褒めてやってもいい」
ふふんとエルヴィスが鼻を鳴らす。
「ふぅん」
その様子を苦笑しながらヒュイは眺めていた。
「すごく気に入らないが花茶の選定については天才的だし何よりイヴが花茶で喜んでいる!!」
「まぁ、ティーバイヤーよりもいいものを持ってくるからね。彼は」
「く……っ!でもイヴはやらん!」
「そういう関係じゃないと思うよ。だいたいロリっ子とショタっ子だよ?合わないと思う」
「ロリっ子って何?」
「イヴ姫殿下のようなかわいい子のこと」
「……ふぅん?」
そんな会話をしながら、今日もヒュイは延々とエルヴィスの妹かわいい、弟かわいいというのろけ話を聞かされながら、終始おもしろそうにエルヴィスを眺めるのだった。




