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クロ殿下と剣聖ヴェイセル【伏線大回収祭編】  作者: 夕凪 瓊紗.com
ディート殿下ツンデレ感謝祭編

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ヒメナと赤髪の勇者


――――side:ヒメナ

シルヴァリー共和国シルヴァリー大祭壇


私、ヒメナがここで聖女として精霊士の修行をしているのにはとある事情がある。


あの日地下牢でディートという人にもらったご飯を食べた翌日。地下牢にとてもきれいな黒髪の女性がやってきて私を連れ出してくれた。


そして豪華絢爛な玉座に座る皇帝陛下とあの黒髪の女性……ヴィクトリア皇后陛下の前に連れていかれた。


私は一体何をされるのだろう……?


皇帝陛下は何と私に頭を下げると召喚や今までの牢獄での生活について詫びてくれた。


そしてヴィクトリア皇后が私の身柄の保護してくれること約束してくれた。


聖女である以上祭壇で修業が必要だが、第2皇女である聖女がロザリア帝国の大祭壇いるのでそれは難しかった。


だからシルヴァリー共和国の大祭壇で修業する手配をしてくれた。シルヴァリー共和国は様々な種族があり、人族、獣人族、その他の種族が混ざり合い暮らしている。


この世界では私のような獣耳しっぽを持つ獣人族は珍しいのだが、雑種という複数の種族の外見が混ざり合った人々も多くあり、とりわけ目立ったり差別されたりすることはなかった。

そういう意味でもヴィクトリア皇后様の選択は正しかったということだ。


因みに言語についてはヴィクトリア皇后様が言語変換魔法のかかったたぬきのマスコットをくれた。これを首から下げていたら数か月でこの世界の言葉がわかるようになった。もちろん読み書きは訳してくれないので自力で覚える必要があったが。


シロナもヴィクトリア皇后様に保護され世界を回って修行をしているらしい。


赤髪の勇者については大祭壇がいち早く西方荒野と言うところに追放したらしく行方不明だった。


そこはSS級冒険者でもないと立ち入れない危険地帯であり、そこへの捜索は却下されてしまった。シロナが捜索に行けるようにと必死にレベルを上げているらしい。


もう1人の勇者についてはやはり私と同じホウライから召喚されたらしいのだが、ロザリア帝国の冒険者たちを連れ立って既に旅立っていたらしい。行方については調べればわかるとのことだったが遠慮させてもらった。……何故なら最初の召喚の間で彼が私に向けてきたのはひどく憎むようなまなざしだったから。

もう1人の少年については情報が少なくあまりよくわからないけれど……。


召喚されてシルヴァリーで修業して数年が経った。私は司祭の資格を取らないかと勧められているが一度進路のことも含めてヴィクトリア皇后様に報告に行かないといけない。


シロナは今、南部連合王国にいるらしい。一緒に行こうかと思ったがしょうがない……一人で帰ろう。


少なくとも大祭壇関係者や第2皇女には会いたくないなぁ……。


そう思いつつ私はロザリア行きの相乗り馬車を探すのだが、どこも満席で中々見つからない……。


「嬢ちゃん、飛竜便はどうだい?」

「その……そんなに手持ちがないので……」

いや、節約しているのでロザリアからの仕送りの余りもかなりあるのだが無駄遣いはしたくないし……。


「なら、見習いで良ければ安く済むぞ。腕はいまいちだがな」

「……っ」

腕がいまいちって……。


「大丈夫!今日の見習い便は新人だが腕がいいから乗せてもらいな。早く着くよ」

「……まぁ、早く着くんなら……」


「おーい、イチル!お客さんだぞ!ついでにロザリアまで飛んでくれや」

イチルと呼ばれた少年は、赤髪に青いくすんだ目をしていて……。

あれ……この人……どこかで……?


「え……っ!目的地はエストレラなんすけど」

エストレラ!かつてシロナと行こうとしていた国……。けれどシルヴァリー共和国で修業する中で聖女がよく思われないという噂を聞いたのだ。今はとにかくヴィクトリア皇后様の保護があるから無理に逃避行しなくてもよくなったのだが……。


「いいじゃねぇか。通り道だろ?乗せてったれ。女の子が困ってるんだから」

「……はい……わかりました。親父さんには世話になってますから」


「おうっ!ロイドにもよろしくなっ!」

ロイド……?少年の関係者だろうか?


――――


「イチルと言います」

「私はヒメナです」


「ヒメナさん。今日はよろしくお願いします。おいで、ヴィオラ!」

赤髪の少年……イチルさんが口笛を吹くと白銀の飛竜が舞い降りる。イチルは手早くバッグから2人乗り用の鞍を取り出し取り付ける。


「それってマジックバックですか?」

「あぁ……冒険者デビュー用に恩人が作ってくれてね」


「冒険者なんですね」

「えぇ。あなたは……?学生さん?」


「いえ、精霊士です」

「精霊士……」

途端に少年が暗い顔をする。


「あなたは闇の精霊士をどう思いますか?」

確かシルヴァリー共和国やロザリア帝国は光の精霊のみを祀っているので光の精霊士しかいない。私も光の精霊士だ。


闇属性の属性精霊は特別なので仕える精霊士は例外的に属性精霊士という呼び方がある。


しかしエストレラのみ属性精霊以外の闇の精霊を祀っており、彼らや闇の属性精霊に仕える精霊士を闇の精霊士と呼ぶ。魔族の国は……どうだかわからないけど。


「……えっと……」

エストレラの精霊士とそれ以外の国の精霊士の間には闇の精霊士をめぐる確執があるとかないとかいうのを聞いたことがある気がする。


「闇でも光でも仲良くできればいいと思いますが……現実はそう上手くはいかないですよね……私はまだ子どもですから」

「……変なことを聞きましたね。忘れてください」


「あ……いえ」

「どうぞ」

イチルさんが手を差し伸べてくれる。


「はい、よろしくお願いします。イチルさん、ヴィオラちゃん」

「きゅいいいいぃぃぃんっ」

ヴィオラちゃんの鳴き声はとてもきれいな声だった。イチルさんに鞍まで上げてもらいイチルさんの後ろに腰掛ける。ロザリア帝国まではあっという間だった。ロザリア帝国帝都の飛竜離着陸場で下ろしてもらう。


イチルさんがすこし複雑な顔をしていたが……ここで何かがあった……?もしかしたらイチルさんは、あの時の……?


「あの、イチルさんは……」

「はい」


「……エストレラに住んでらっしゃるのですか?」

「……えぇ。エストレラに来られる際はまた飛竜便をご用命ください」


「はい、では……お気をつけて」

「ありがとうございます。ではまたどこかで」

……聞けなかった。

まるでこの世界の不条理を散々見てきたかのようなあの瞳には……。


イチルさんを乗せたヴィオラちゃんが一気に遠ざかっていくのを見送ることしかできなかった。



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