東方魔王国周遊①
――――ある日の王城。
「そいえば東方魔王国行ってないなぁ」
「クロ、東方魔王国に行きたいの?」
「ん、まぁちょっと興味はあるかな」
いつもの如く王子王女会議と言う名のお茶会で、クッキーと紅茶をはむはむしながら俺が呟くと、俺の双子の弟のヨルが嬉しそうな顔で話題に飛びついて来る。
「それじゃ一緒に行こう?」
「うん、ヨルとならそりゃぁもう!でもスケジュールとか大丈夫?」
「うん、空けてあるから」
……空けてある?
「クロのスケジュールも空けてもらってるからね」
ジェイド兄さんが言う。え、空けてある?
「そんじゃぁ今度の訪問はヨルとクロに決まりだなっ!」
とアスラン兄さん。
んんん?
「楽しんでおいで」
続いてエル兄さん。
「東方魔王国って鴇子ちゃんのお国だよね」
俺のかわいい妹イヴがかわいく聞いてくる。イヴは東方魔王国王女のピンクのツインテール少女鴇子ちゃんとは大の仲良しだ。
「あぁ、これで定例訪問の巡使が決まったなっ!!」
とエメラ姉さんが告げる。
「え?定例訪問?」
「うん!東方魔王国の定例訪問が予定されてるんだっ!!」
な……なんですとぉっ!!?
確か前にも行きたいって言ったらそういう流れになった感すっごいあるんすけど今回もかいいいぃぃぃぃっっ!!!
――――てなわけで。今回もヴェイセルのゲートでやってきました東方魔王国。
毎度おなじみクロ殿下パーティーのヴェイセル、紅消、そしてヨル、その執事のコンラートさん、近衛騎士隊の皆さん。
更には……。
「ふっふっふ~~~っ!見惚れたであろう!ここが我が東方魔王国じゃっ!!!」
かわいらしいピンクのツインテールを揺らし、鴇子ちゃんはばばーんとポーズを決める。
「因みに鴇子さまは定期的に訪問して滞在しているだけですので、通算で言うとラズーリにいた年数の方が多いです」
と、鴇子ちゃんの執事で久々すぎる登場のイグリさん。
「むぅ~~~っ!それでも妾の故国には違いないであろう?」
「はいはい」
今回は案内役として鴇子ちゃんとイグリさんが一緒である。
「では早速観光と行こうかの!」
「へ?観光行くの?」
「鴇子ちゃん、まずは東方魔王陛下に訪問と鴇子ちゃんの帰国の挨拶に行かないとね」
と、ヨルが華麗にアシスト。
「うむ、そうじゃな……久々の父上じゃ……少し緊張するのう」
鴇子ちゃんもまだまだ子どもだな。ちょっと微笑ましい。
それにしても東方魔王のギルベルトさんか。前に南部連合王国でも会ったけど俺も久々でちょっと緊張してきた。
――――――東方魔王城
「よくぞ戻った我が娘、鴇子よ」
魔王の玉座の間で妖艶な笑みを浮かべ、迫力満点の東方魔王ギルベルト魔王陛下が口を開いた。
「うむ、只今戻ったのじゃ!父上っ!」
鴇子ちゃんは元気に父であるギルベルト魔王陛下に手を挙げて挨拶している。
「そしてようこそ東方魔王国へ、クロ殿下。クロ殿下とは南部連合王国で邂逅した以来であるな」
うぐっ!その妖艶な笑みがこちらにもっ!
緊張するわ~~~っ!!!
「は、はい!お久しぶりです。ギルベルト魔王陛下」
俺を見据えて頷いた後、続いてギルベルト魔王陛下がヨルに目を向ける。
「そして隣にいるのが汝の双子の弟王子か」
「はい、第5王子のヨルリンと申します。どうぞ私のこともヨルとお呼びください」
華麗に微笑を浮かべるヨル。双子の弟で同じ顔なのに惚れ惚れする王子スマイルだ。
「ではヨル殿下。クロ殿下と共に東方魔王国への訪問を歓迎いたす」
「妾も歓迎するのじゃ~っ!」
「鴇子さま、ここはし~~~っ」
鴇子ちゃんとイグリさんの微笑ましい場面に心の中で苦笑する。
『はい、歓迎を感謝いたします。ギルベルト魔王陛下』
俺たちは双子ならではの息の合った謝辞を述べた。
「しかしだなぁ……」
どうしたんだ、ギルベルト魔王陛下?
「カリン殿のことはカリンさんと親し気に呼ぶのに、我のことは魔王陛下とな」
いやそこ!?そこなんですか!?ギルベルト魔王陛下あぁぁぁ――――っっ!!!
いや確かにそうだけど!!ここは格式ばった場面なんですからっ!!!
「えと……ギルベルトさん?」
「うむ、それでよい。ヨル殿下も是非親しみを込めて我を呼ぶといい」
「お心遣い感謝いたします。ギルベルト様。これからも東方魔王国とエストレラ王国双方の友好と繁栄を願います」
ヨルはジェイド兄さんになみにすらすらと述べていく。
す、すげぇ……。
この妖艶で迫力のあるギルベルトさんに対して微笑みながら、ザ・王子という身のこなし。
うぅ……俺も見習わなければ。
「あぁ。双方の友好と繁栄を」
ギルベルトさんもそれに応えてくれる。
「さて、この後は東方魔王国各所を視察するのだったな」
『はい』
「ウチの鴇子をつける。存分に東方魔王国を堪能してくれ」
『はい、ありがとうございます!』
「夜には歓迎のパーティーを用意している。是非、楽しんで行ってくれ」
『はい、感謝いたします!』
どうだ、双子の息の合ったこのセリフを!!ザ・双子ミラクル!
「(もう、クロったら)」
と、ヨルが小声で。
さすがは双子。以心伝心か?
――――そんなわけで。
「まずは、ここじゃ!」
早速東方魔王国観光だ。表向きは視察なんだけど。最初に鴇子ちゃんの案内でやって来たのは……勇者サラ記念館。噂のサラさん記念館っ!!!
サラさんは俺の親友ニマの母にして、かつて召喚勇者から東方魔王国を救ったというトンでも勇者である。
東方魔王国はシンガポールの都市のように高層ビルディングが多く、近代都市という印象だった。
というかこの世界に高層ビルディングはありなのか。サラさん記念館もガラス張りのおしゃれな建物だ。
中もヨーロッパの有名美術館のようだ。サラさんが使ったとされる剣のレプリカ、部分鎧のレプリカ。本人寄贈の、当時使用していたマント、勇者サラの伝説をまとめた展覧室。ごくごく普通の冒険者魂を刺激する内装!普通っ!結構普通っ!
「クロったら、それ以外に何があるの?」
と、ヨルがきょとんとして俺を見てくる。あ、ヨルに伝わった?
だってあのトンでも勇者サラさんの記念館だよ?もちょっとぶっ飛んだものを想像していたんだけど。
――――さて、お次は。
「東方魔王国名物、屋台共和国じゃっ!」
魔王国なのに共和国って、オイ。いろんな屋台が並んでいて楽しそうだけどね。
「まずは、東方魔王国名物おでんじゃっ!中でもこのおでん屋さんは最高なのじゃ」
と、早速鴇子ちゃんの執事イグリさんがおでんを頼み、俺たちも早速だしのしみ込んだ大根やもちきんちゃく、ちくわぶをパクり。
「……おいひぃ」
あぁ昔懐かしい味、前世で日本で食べた味。前にヴェイセルも作ってくれたけどそれも日本で食べた味。
「本当!おいしいね」
とヨルも大満足だ。
「じゃろう?妾も帰国したら必ず所望するのじゃっ!」
「ほら鴇子さま、まずはふぅふぅしないと」
「あう……そうじゃった。ふぅふぅ……はむっ!んんっ!美味なのじゃっ!」
「出汁が効いてておいしいね」
ヴェイセルも大満足なようた。
真昼間の第1発目におでんを選択するのはどうかとも思うが、せっかくの鴇子ちゃんのおすすめだ。おいしかったし、いいだろう。
――――
「お次はこれじゃ!串カツじゃ!」
たれの2度漬け禁止の串カツ!
「クロ、ここでは2度漬け禁止ね」
「はうっ!もちろんっ!」
そこは日本の関西と同じだっ!!
「2度漬け禁止とは何だ?」
と紅消。
「何のこと?」
と、ヨルも。
「串カツはのう……たれへの2度漬けは禁止なのじゃ!」
「ふむ、このたれを漬けるんだね」
「現地ならではのルールと言ったところでしょうか」
「どれだけつけるかがミソになりますね」
とコンラートさんも真剣に見入っている。
……でも、俺1回だけヴェイセルに作ってもらった串カツを2度漬けして食べちゃったけど……ナイショだよ?
まぁここではたれの2度漬け禁止のルールを守って……。
ぱくっ!
さくっ!
「はうぅっ!おいひぃっ!」
「本当!たれもおいひぃっ!」
「じゃろう?これぞ屋台のだいご味なのじゃっ!」
うん、うん、わかる~~~。
東方魔王国の屋台っ!最高っ!
――――
「お次はここじゃ」
鴇子ちゃんが案内してくれたそこにはまるまるとしたイカ焼きを串にさして出してくれるイカ焼き屋さんだった。
「これがイカ?エストレラ王国のイカとは全然違うね」
「うん、ヨル。あれはスルメだからな」
元々干物の状態で獲れる謎のスルメ。大体天気がイカの時に地域限定で獲れるのだ。
「うむ、あのイカも妾の角で収穫できるからの。たまに食べるがあれはあれでおいしいのじゃが、こちらのイカも肉厚でうまいのじゃ……はむっ」
と、鴇子ちゃんが一口。
俺たちもそれに続く。うん中身は想像通りイカ飯だ。
うん、おいひい。……いや、スルメもおいしいけどね?
「こういうイカもおいしいね、クロ」
「うん、ヨル」
東方魔王国はうまいものがいっぱいだ~~!




