森の精ゆきめ支部隊
――――ユキメ領
「こんにちは~」
「おや。これはこれは、クロ殿下」
今日の俺は久々にたまに会いにユキメ領領主邸へとやってきた。その途中、たまがよくごろごろしている部屋の主リアンさんに遭遇した。
「たまに会いに来たんですが」
「では、私の部屋におりますのでどうぞおくつろぎください。私は少々席を外しますがお構いなく」
「ありがとうございます!」
すっかりリアンさんの書斎を訪ね慣れているので、いつも通りお邪魔することにする。
一緒にやって来たヴェイセル、紅消と部屋に入り、たまを探す。
「クロ殿下、あちらを」
紅消が示した来客用のソファーの傍らに、ユキメ領のふっわもふにゃんこ……その名もユキメジャンフォレストキャットたちがすーすー寝息を立てている。
ユキメジャンフォレストキャットは、白、グレー、黒など色は様々だがどのにゃんこもふっわもふだ。
その中の一匹のにゃんこを優しくなでなで。
「にゃ?クロなの!!」
するとユキメジャンフォレストキャットたちの中にもふまれていたふっわもふのユキヒョウ精霊たまがこちらを振り向いた。にゃんこたちにもふまれていると、ついつい見落としてしまいそうなふわもふだ。
「遊びに来てくれたの?にゃっ!」
「にゃっ」
たまの真似をして、ご挨拶っと。
「ぐはっ!クロ!その『にゃっ』をお兄さんにもください!!」
全くこの残念剣聖は。
「くらえっ!父さん特製わふたんふわもふグローブぱーんちっ!!わふっ!!」
……と言う名のツッコミ。ふわもふ生地の指ぬきグローブに、わふたんのお顔の指を覆うカバーがついた特製グローブ。普段はカバーを手の甲にボタンで固定して、わふたんパンチ(ツッコミ)に用いる。
「ぐはっ!!『わふっ』いただきましたぁっ!!」
無事、ヴェイセルを倒したところでふたたびたまをふわもふ……あれ?
「にゃぁ……なのれす……なの?」
たまの横からもふっと体を起こしたのはたまと同じユキヒョウお耳、しっぽなのだが緑の毛並みでたまよりも少し小さな女の子だった。一瞬森の精かとも思ったんだが?
「にゃっ!クロなの!」
「クロ殿下お兄ちゃんなのれす……なの!」
おなじみのなのれす口調にたまの口調がくっついてる?
「えと……君は?」
「ゆゆなのれす……なの!」
「ゆゆちゃんか」
かわいいなぁ。頭をなでなで。
「ゆあもなのれす~なの!」
ん?傍らを見ると緑の猫耳しっぽのショートヘアの女の子がいた。
「ゆあちゃん?」
すかさずなでなで。見た感じ、そのふわっもふしっぽはユキメジャンフォレストキャットだ。
「ゆのなのれすなの」
おぉっ!3にん目!……ということはやっぱり森の精!?……と3にん目を見た瞬間、俺は固まってしまった。
「クロ殿下?」
「紅消」
「どうなされましたか……?」
『クロ殿下お兄ちゃまなのれす……なの??』
「ゆのく~~~んっ!!!」
俺はゆのくんを思いっきりぎゅむ――――っした。
「ひゃうう~!熱愛なのれす~なの~」
それを言うなら熱烈だと思うけど……これは……これはもうたまらない、とまらないっ!!
「クロ殿下?一体どうして……」
「紅消……だって……だってこの子……」
わふたん狼耳に、更にガゼル角が生えている。
因みにしっぽもスイランと同じリザードマンみたいなしっぽ!
「ちびスイランみたい~~~っ!!ちったいスイランみたいで超かわいい~~~っ!!!」
ドテッ
なしてか紅消からそんな効果音がした。
「スイランお兄ちゃまなのれすなの?」
「スイラン……お兄ちゃまっ!!!やっぱりスイランの弟なんだねっ!!」
「あの……クロ殿下?」
その時不意に後ろから女性の声が聞こえた。
振り返るとそこには2人の女性がいた。1人はリアンさんによく似た毛並みで、白地に黒のメッシュの入った髪を肩までで切りそろえた雪豹族の女性。
そしてもう1人は深い緑の髪をハーフアップにした深い緑の瞳のメイドさんだ。
「えっと……」
「初めまして。リアンの妹のレアナです。こっちはメイドで森の番人のハンナです」
「あぁ、どうも……!初めまして!」
「兄からクロ殿下のご訪問をお聞きして、是非お会いしたいと飛んできたのですが……」
あう……いきなりゆのくんを大溺愛しているシーンを見られてしまったか。
「すみません……自分の契約獣と似ていたもんで、つい」
「傲魔スイランさまですね。ゆのくんもそっくりなのでよく懐いているんですよ」
とハンナさん。
さすがは兄弟みたいにそっくり!!
「よかったらクロ殿下もお茶になさいませんか?」
「あ、はい!」
「では、すぐに準備いたしますね」
早速ハンナさんがお茶の準備に取り掛かり、それを紅消が手伝っている。
俺は復活したヴェイセルも一緒にソファーに引っ張っていき、お膝の上でゆのくんをなでなでしている。
たまはレアナさんのお膝の上に、ゆゆちゃんとゆあちゃんは俺の両脇でじゃれてくれているのですかさずなでなで~~~。
そいえば森の精ゆきめ支部隊のワンポイントは左耳のあたりにとめられたふわもこホワイトリボンだ。ゆのくんも左角の付け根につけている。
「ふふっ!クロ殿下は相変わらず精霊さまに大人気ですね」
「ほんと、俺の方こそ嬉しいです。ちびスイラン……ちびスイラン……」
「クロ、ちったいスイランがかわいいのはわかるけど戻ってきて、お願いだから」
「……スイランも呼びたいっ!ねぇ、レアナさんいいかな!?」
「えぇまぁ。ユキメ領のシンボルですから構わないかと」
「ゆのくんも喜びますからね」
と、紅茶と俺の持参したジンジャークッキーを出してくれるハンナさん。
「ではお言葉に甘えて……スイラン!」
俺が呼ぶと、すかさずスイランが召喚に応じて姿を現してくれる。ユキメ領のシンボルの登場にレアナさんとハンナさんも大喜びだ。
「呼んでくれて嬉しいよ、クロ殿下」
「だって、ちったいスイランなんだもん~」
俺はスイランの前でドヤッとゆのくんをぎゅーする。
『イチャイチャなのれす~なの!!』
いやゆゆちゃん、ゆあちゃん、イチャイチャは誤解生むからやめようね?てかどこで覚えたんだ、そんな言葉。
「ふふふ、ゆのも兄のように慕ってくれるからね。もちろん他の森の精や精霊たちもね」
「スイランは、お兄ちゃんなの!」
と、たま。
うぅ……そんなたまもかわいいっ!
「あぁ……至福の時」
「ですね~」
そんな感じでまったりやっていると、リアンさんが帰って来ていきなりのスイランの顕現にびっくりしていた。




