リュシーの回顧録②
――――前作でプレーしていたゲームの世界に転生する。それは異世界物のファンタジーにおいて、お約束の一つだろう。
この世界に転生したことに気が付き安住の地を見つけた私がまさかその世界を中心とした運命に翻弄されるなどとどうして思っただろうか?
国名が似ているゲームならプレイした記憶がある。けれどこの世界はそのゲームの世界とは全くの別物。
とても優しく美しい女王陛下、顔は恐いけど優しいお父様、いつも優しく微笑んでくれるジェイドお兄様、いつも一緒に遊んでくれるフーゴ。
ヨルお兄様やクロお兄様、クォーツ寮のファナちゃん、スズメちゃん、お兄さんやお姉さんたち。
だけど私はミーシェという一人の少女によってその乙女ゲームと似たよった……けれどどこか違う世界のうねりの中へと巻き込まれていった。
何故かファナちゃん、スズメちゃんや、フィーネお姉様との学園生活の中で、クロお兄様たちクォーツ寮のお兄さんたちが私の護衛と称して手助けをしてくれたり、前世にプレイしていた乙女ゲームのヒロインと同じ名前、顔の少女ミーシェからの断罪劇が行われた。
そしてヤマト殿下以外微妙に名前の違う攻略対象たち。そう言えばヨルお兄様も、クロお兄様も前世の乙女ゲームの攻略対象と敵キャラに名前と顔が似ていた?そして私の顔と名前も……いいえ、気のせいよね。
だってこの世界はあの乙女ゲームの中の世界じゃないのだから。
顔と名前が似たよったひとびとを題材にして繰り広げられた断罪劇とミーシェたちとの最終決戦。
その後事態は沈静化に向かうと思ったが、私の故郷であるシュテルン州で内乱が起こった。
お父様は私が関わることは断固として拒否していたけれど、私も故郷を守りたいとの一心でお願いすると後方支援ならと許可してくれた。
その内乱の後方ながら救護や物資の搬出入などで東奔西走し、クロお兄様がシュテルン公爵邸に一足先に帰ってきてくれた。
そしてジェイドお兄様や旧セレーネー領に討伐に向かった方々の無事もお聞きしてひと安心したところでクロお兄様のお見舞いを兼ねて顔をお伺いしようとしたその時。
――――私は再び、あの少女と邂逅した。
彼女はソラと名乗った。そして彼女であり、彼女ではなかったミーシェだった頃の私への言動を謝罪してくれた。
ミーシェは私の大好きだったヒロイン。けれど偽りの物語をはめ込まれた登場人物……いいえ、この世界に生きるひとびとが巻き込まれた不可思議な騒動で自分を取り戻したソラと私は、友人として厚く抱擁を交わした。
けれど同時に私の中にくすぶった懸念は晴れることはなく、クロお兄様の前で不覚にも泣き出してしまった。
そしてその最中、お父様を狙った男からアドリさんが私とお父様を庇って凶刃の犠牲になってしまう。
その後、彼女はクロお兄様の指示の下。治療を受けたものの両目の光を失った。その後小国連合で再会した彼女は今がとても幸せだと語ってくれた。
あの時のアドリさんとの邂逅は私の胸の中にあったくすぶりもわだかまりも、全てとかしてくれた。
そしてそこで出会った名も知らない……けれど分かった。
――――私の……
もう一人のお父様。
何があったかはわからない……けれどもう一人のお父様がアドリさんとその伴侶のランさんを温かく見守って、私たちを守ってくれた。
だから私は安心できた。私の大切なもうひとりの友人をどうかこれからも見守ってください。そんな思いを込めてクォーツ公爵にお願いし、春待祭のチョコレートを贈った。
そしてそのお返しの小さな鳥のブローチを抱きしめた。どうしてかそのブローチに母の写真が入ったペンダントと同じ温もりを感じ取ったのだった。
そしてフォレスティア小領に贈ったチョコレートのお返しにもらったクッキーをつまみながら、その感想と感謝をしたためて……今日も私はソラへ向けて手紙を出しにいくのだ。




