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婚約者がモテ過ぎる  作者: もも


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3/3

3 自業自得

読んでいただき有難うございます

 三歳になった時キリングス侯爵家の生まれたばかりのリリーと婚約を結んだ。二歳になったリリーがルシルの後を一生懸命付いて来る姿は可愛いとしか思えなかった。妹が出来たようで嬉しかったのだ。女の子って可愛いと思ったのがいけなかったのかもしれない。



それに加え父親が当たり前のように女性を褒めているのだ、当然のようにそれを見習った。

そうすると頬を染めたりうっとりとして近付いてくる者もあったが、乳母や護衛が近づく者を遮ってくれ、実際に害を為された事がなかったのでそれで良いものとして育っていったのである。


公爵家当主は夫人だった。

イケメンな夫は未だに社交界で大人気だ。誘惑目的のダンスをせがまれたり、媚薬の入ったワインを飲まされそうになったこともある。妻の目の前で平気で腕に抱きついたりする。そういう常識のない女性達やそれをはっきりと断らない夫のこともいつしか冷めた目でしか見られなくなってしまった。

何を考えているのだと問い詰めたこともある。けれど「貴女のことだけだよ」と甘く微笑むだけの夫に情を持ち続けるのは難しかった。



女性達の家には抗議の文書を公爵家として出した。社交界で相手にされなくなり潰れた家もある。それなのに近づく羽虫は後を絶たなかった。


浮気はしないものの女性に甘く無自覚な夫をどうやって躾し直そうかと考えている途中なのに、気付けば息子まで同じ様になっていた。同じ轍を踏むようにはさせないつもりだ。


仕事に集中している間に女たらしに育ったようだが、これ以上馬鹿な真似をしたらどうしてくれようかと歯噛みをした。





母は公爵家当主らしくいつも毅然としていたので、ルシルは残念ながら何も気づくことがなかった。



✠✠✠



リリーは何でも言ってくる気を許せる相手だった。八歳の時のお茶会で婚約をやめたいと言い出したのでルシルは嫌だと断った。

こんな面白い子を手放すものかと思ったのだ。



自分の口から出る言葉は女性を褒めるものばかりだ。そのせいでリリーに嫌われているのは知っていた。止めようと思うのだが条件反射のように出てしまう。

嫌われても婚約は解消したくなかった。本当に可愛い子はリリーしかいなかった。


学院に入ってからは更に見た目が上がり少年から大人になる経過で身長も高くなり凛々しい男に育っていた。

その上褒めるのが礼儀と思っている美麗な男が当たり前に微笑むのだ。

当然勘違いした女子生徒が迫って来るようになり争いまで起こるようになった。

中には婚約が駄目になったカップルもある。



学院長から現実を聞かされたルシルは猛反省をすると直ぐに行動に移した。

知り合いの王宮魔術師に相談をしたのだ。


リリーが婚約破棄を虎視眈々と狙っているのは知っていた。



理性のある男にならなければリリーを逃してしまう。ルシルはどうしてもリリーと結婚するつもりだった。


可愛くて言いたいことを隠さず言ってくる相手など、そうそう見つかるとは思えなかったからだ。



ルシルが真面目になったとリリーは父から言われた。

「どういうことでしょう」

「数多くの婚約が壊れそうになり学院長に苦情が殺到したようだ。公爵家に抗議は出来ないからね。呼び出してルシル君に注意をしたそうだ。すると流石に悪いと思ったのだろう。言葉を制御する魔術の腕輪を作らせたそうだ」


「漸くですか。ルシル様がつれなくなっても想いを寄せる方は減りませんわ。今更ですわ。大ハーレムが出来るのかと期待していましたのに残念ですわ」


「公爵家にはそんなお金はないさ。リリーと婚約しているから経済的に少しばかり協力しているだけだから。夫人が痺れを切らしたらしく公爵を躾し直すのにもその腕輪が活躍しているようだよ」




「おじ様もやたらと女性を褒めますものね。親子って怖いですわね、変なところが似て。

おば様も早く思いつかれたらよろしかったのに遅すぎて残念ですわ。

一つでも婚約を壊せば婚約解消の理由になりますわよね。お父様よろしくお願いします」


部屋の端でクリフが満足そうに口の端を上げた。



こうして婚約破棄は相手の有責で整った。有責だがおば様に免じてお金は発生していない。リリーにしてみればスムーズに婚約が解消できれば何も言う事はなかった。

おじ様は病気療養中になり社交界では見かけなくなった。

腕輪を着けられ領地で執務を監視付きでするらしい。おば様が離縁するのも面倒なので現状維持なのだとか、事務官代わりだとか言っておられた。

それも駄目になったら消すと怖いことを言われていた。放り出す気はないのだわ、大人ってよく分からないとリリーは思った。



ルシル様はしつこく

「リリー、君だけが好きだったんだ。他の女性には興味もない」

と押しかけて来る。腕輪のせいだわ。


「腕輪があるから他の人を口説かないだけでしょう。外れたら元どおりのルシル様になるに決まっているわ、信用できないの、帰ってくださる?」


「昔から君だけが好きだったんだ。父を見て育って男は女性を褒めるものだと思って生きて来たけど、母が父の躾をし直すってついに切れたんだ。

今まで当たり前と思っていたのは、違っていたのだと漸く思い知ったよ」


「何度も婚約者がいるのに他の女性に愛想を振りまいて、可怪しいと言ってあげてたのに聞きもしなかったのよ、今頃になって遅いわ」


「ごめん、許して。もう一度だけチャンスをくれないか。リリーにきつく言われても可愛いだけだったし、悪い癖はきちんと直すよ。君はまだ十三歳じゃないか」


「貴方は十六歳なのに、もっと大人にならないと生きていけないわ。おじ様のようになるわよ」


「うっ、遠慮のない言葉がグサグサ刺さる」


「十三年我慢して来たの。あなたの馬鹿げたチャラい態度や言葉をね。やっと解放されたのよ。これ以上の我慢をしろと言うのかしら」


「返す言葉もないよ。でも生まれ変わるから見ていて欲しいんだ」


「次の縁談が沢山来ているみたい。私が決めても良いとお父様に言われているのよ」


「自分の馬鹿さ加減がよく分かるよ。でもお願い、振り向いて貰えるようにするから」



ルシルはリリーと母の厳しい躾で生まれ変わったようになった。


過去の事を覚えている令息達からはラブクラッシャーと呼ばれて遠巻きにされていた。友人はいなかった。地位と美貌が目当ての者しか近づいて来ないと嘆いていたが自業自得というものだ。

意外と冷静に判断しているんだと感心した。



✠✠✠


ルシルの卒業後、学院にはクリフが護衛として一緒に入学した。守られて尽くされる三年間の学生生活は快適だった。一緒に勉強をするのも楽しい時間だった。見目の良いクリフもちょっかいをかけられていたがリリー以外は見向きもしなかった。




在学中にリリーは昔から自分だけに優しいクリフを選んだ。親戚筋の伯爵家に養子に入って貰い婚約をした。爵位は父が持っていた子爵位を貰うことになっている。直ぐに爵位を上げる自信がリリーにはあった。

頭脳明晰で兄の都合が悪い時に父に付いて仕事の場にも同道していたのである。


クリフが相変わらず執事で護衛なのは変わらない。


「クリフったらもう婚約者なのだから護衛はいいのよ」

「嫌だ、貴女を守れるのは私だけで良いよ。手が届かないと諦めていた想いが漸く実ったのに手放すわけも無いじゃないか」

ずっと後ろに控えていた時と違い、熱のこもった瞳で甘えてくるクリフが色気のある声で発する言葉に、ズキュンと胸を撃ち抜かれたリリーだ。

「私を選んだことを決して後悔はさせないよ、リリー」

髪をひと掬いし柔らかなキスを落としながら囁くクリフの瞳から目が離せない。

「私だけを見て欲しいの」

「もちろん、僕が欲しいのは君しかいない。愛しているよリリー」

二人の周りには甘い空気が漂っていた。


読んでいただきありがとうございました。ルシルは真っ当(?)な公爵になりました。

クリフの登場場面が少しだけになってしました。


いつも誤字報告をくださる皆様本当にありがとうございます。感謝しています。

では又お会いできますように。

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