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2 女たらし

読んでいただき有難うございます

 ルシルは勉強も出来、剣もそれなりに振れる。もう五ヶ国語はマスターしたようだ。それなのに天然の女たらしなのは十五歳になっても変わらない。


その頃には身長も高くなり顔は甘さと凛々しさが加わっていた。相変わらず挨拶代わりに

「今日も可愛いね」

と言っているらしい。学院で女子生徒に纏わりつかれようが触られようが微笑んでいるようだ。美麗な男が貴族の務めだと微笑むのだ。それだけで落ちない理由がない。ランチタイムはハーレム状態のようだと我が家の諜報員からの情報だ。聞いただけでリリーはむかむかしていた。


公爵令息で顔も超絶イケメンに笑顔で可愛いと言われて心を持っていかれない女の子がいるだろうか。一人いるが。


生まれた時から心の籠もっていない「可愛い」と言われ続ければ耐性も付くというものだ。


だからリリーは今日も婚約破棄を狙っている。

あんな女たらし熨斗を付けて差し上げるわと思いながら。


父からの報告によると女性問題はまだ起こっていないそうだ。残念である。十五歳までには数人とそういう関係になるのかと期待していた。怪しい。 


✠✠✠


リリーには十歳の時に同じ年のクリフという侍従が付けられた。

遠縁の男爵家の次男だが家が貧しいので教育を一緒に受けたら良いと侯爵が考えた。頭が良く教育を受ければリリーの助けになり、剣の腕も磨いておけば将来は護衛兼執事にどうかと思ったらしい。


クリフは真面目な男の子で勉強が出来るようになり何より喜んでいた。容姿は整っていて侍従服がよく似合っていた。

リリーは友達が出来たようで嬉しかった。クリフはお嬢様と言って譲らなかったが。


✠✠✠



ルシルとは月に一度お茶会をしたり公園に行くような付き合い方だった。公園では相変わらず女性にきゃあきゃあ言われ手を振ったりしている。

「仮にも婚約者といるのに他の女性に愛想を振りまくのはどうなのかしら。マナー違反でしょう。さっさと婚約解消しましょうよ」


「嫌だよ、リリーは妬かないから居心地が良いんだ」


「それは貴方に関心がないからよ。私は不快になるの」


「関心がないのに不快にはならないと思うけど」


「あきれ返っているのよ、生まれつきの女たらしですもの。見るとむかむかする。どういう教育をされたら女性皆に優しく出来るのかしら。苦手なタイプとかないの?」


「あるけど、女性には優しくするというのが貴族の在り方だと思っている」


「貴方のお父様もお祖父様もそういう方なのかしら。トラブルに見舞われたことはないの?」


「聞いたことはないよ、今度聞いてみるよ」


「多分、これから巻き込まれるわ。あなたのせいで虐められたり被害に遭うのはごめんなのよ。解消してください。お金は払うわ、お父様がね」


「僕が君だけを見ないから怒っているんだね。何だそう言ってくれれば気をつけたのに」


「そういうところよ、直らないわよ一生。君が好きだと言いながら見えない所で別の女性も褒めるの。心当たりがあるでしょう。いつまでも貴方の美貌が衰えなければいいけど」


「そんなことはしてないよ。厳しいな、でもそういうリリーも好きかも」


「あのね、私は私だけを好きな人が良いの、貴方女性が何人か溺れてたらボートで助けに行くでしょう。それで皆でまた溺れるのよ。私は一番に飛び込んで私だけを助けてくれる人がいいの」


「何艘かのボートで護衛も連れて行くから溺れないよ。リリーは一番に助けるし」


「もう良いわ、疲れたから帰るわ」


「送っていくよ」




クリフが後ろで拳を握りしめているのが分かる。分かるわ、整い過ぎた顔を殴ってやりたいけど手が痛くなるから我慢よ。

これが女性の憧れの貴公子かと思うと怒りが湧いてくるのよ。チャラチャラしやがってコノヤローだわ。絶対解消するわよ。



浮気でもしてくれないかしら。あら学院にルシル様を狙っている女性が沢山いるはずだわ。どうして手を出さないのかしら。向こうは積極的なはずなのに。



あら、妬かないから居心地が良いと言ったってことはそういう経験をしたということよね、報告が上がってないわ。

「諜報員どういう事?大切な情報を渡してこないなんて裏切ったのかしら」

「滅相もございませんお嬢様。あの調子で誰にも良い顔をされるので好かれていると思ったらしい令嬢が付き纏ったのです」


「まあ、素晴らしいわ、その時の証拠はあるんでしょうね」


「もちろんでございます。でも逃げ回っておられたので浮気ではありませんが、よろしいのでしょうか」


「もちろん良いわ、利用させてもらいたいから詳しく教えて頂戴」


リリーはこれからのことを考えて楽しくなった。


学院での女性問題を集めさせた。やはり勘違いをしてルシルに迫っている女性は沢山いた。問題を起こした生徒は一週間ほど謹慎させられていた。

退学にはなっていないが、婚約者との間はぎくしゃくしたものになっていた。


元凶のルシルは何を考えているのかわからない。



これで婚約を解消して貰えると思うとリリーは嬉しくて堪らなくなった。

誤字報告ありがとうございます。助かります。訂正しました。

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