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いきなりピンチでチャンス


「この人間のオスはニィーのモノニャ!」

「ああ?! 何言ってんだ!! こいつはアタシのもんだ」

「お二人とも見苦しいですわ。彼を最初に見つけたのは私です。よって、彼を好きにする権利は私が持っています」


 意識が目覚めると、僕の前で三人の女性が何やら僕の所有権について揉めていた。


 どこかの小屋らしいが、内装が質素極まりなく彼女たちがここで暮らしている形跡はない。監禁場所として一時的に使っているに過ぎないようだ。

 腕と足が縛られていて身動きが取れない。

 三人の女性は言い争いに夢中で、僕が目覚めたことに気づいていないようだ。

 隙を付いて逃げ出す為にも、僕は気絶した振りをしながら三人の様子を暫く観察することにした。


「最初に人間のオスが居ることに気づいたのはニィーニャ! つまり一番最初に見つけたのはニィーって事だニャ!」


 この自分の事をニィーと呼ぶ女性は、上には丈の物凄い短いタンクトップのような衣服を着ており、下はまるでティーバックのようなきわどいホットパンツを履いている。

 もはや着ていて意味があるかどうか定かではない服装だが、そんな過激な衣服よりも目を引くのが彼女の頭とお尻についてる耳と尻尾だ。

 頭のてっぺんからぴょこんと飛び出ているあれは、あからさまに猫の耳である。カチューシャなどについている飾りとかではなく、定期的にピクピクと動いている事から見ても、血の通った体の一部で間違いないようだ。

 お尻から生えている尻尾も同じく飾りではなく、骨が入って動くようだし、ニャーニャー言ってることも併せて、彼女はこの世界に生きる猫人間なんだろう。


「馬鹿言うな。実物をいっちゃん最初に見たのもアタシで、最初にあいつを捕まえたのもアタシだ。全部アタシが一番乗りだ。つまり、この後もアタシが一番最初だ」


 続いては身長が2メートルほどはありそうな高身長の女性だ。

 全体的に筋肉質な彼女は如何にも武闘派と言った雰囲気に違わず鎧を着こんでいた。しかし、胸や股間といった急所をピンポイントに守る程度の面積しか持たいない鎧は、防御力に些か難がありそうである。

 高身長、筋肉質、鎧、と目を引く要素は多いが、そんな個性よりも更に目を引くのは赤い肌と肩と顔に生えた角である。

 ニィーと自分を呼ぶ女性が猫人間ならば、この女性は鬼なんだろうか。男勝りの口調もそんなイメージを助長させる。


「貴方たちのおバカさにはほとほと呆れますわ! いいですか、場所を特定して発見したのはこの私ですわ。私が正真正銘の第一発見者なんです! 私がいなければ彼を捕まえることも出来なかったんですわ!」


 最後は丁寧な口調の淑女である。

 露出の高めの二人に反してこの淑女は、シスターが着ていそうな修道着に身を包み、肌の露出は顔だけになっている。

 そんな露出が皆無の服であるが、服がやたらとぴっちりとしたタイトな作りになっており、ボディラインがかなり強調されている。おっぱいもお尻もやたらに大きい彼女がそんな格好しているために、下手に露出の高い服を着るよりもいやらしい印象を受けてしまう。

 目を引く格好であることは確かであるが、僕は彼女のお尻から黒い紐のようなものが伸びている事を見逃さなかった。あれは尻尾だ。それも猫の尻尾などとは違う、先端に槍のようなヒレがついている謂わば「悪魔の尻尾」と言った印象のものだ。

 彼女はもしかしたら人間に化けている悪魔のなのかもしれない。


「それを言うならニィーがいなけりゃアイツを探すって発想もなかったニャ!」

「いつかは気づいていましたわ! 時間の問題ですわ!」

「見つけた云々ごちゃごちゃうっせえなあ。一番最初に本人を捕まえた奴が一番に決まってんだろ」


 猫人間に鬼、悪魔。会話内容からしてもどうやら僕は転生早々、悪者に捕まってしまったようだ。

 早くここから逃げ出す術を考えたほうがいいのだが、彼女たちの会話が気になってそれどころではない。


「ダメニャ! ダメニャ! あいつはニィーのつがいにするニャ!! 交尾するニャ!」

「馬鹿言ってんじゃないよ! アイツはアタシの夫にするんだよ! アタシと子供を作るんだよ!」

「おバカは貴方ですわ! 彼は私の肉バ、じゃなくて下僕にいたしますわ! 貴方たちには精子の一滴もくれてやりませんことよ!」


 ここから逃げなかったら僕は一体どうなっちゃうんだ。


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