~この世界で俺は~6
しかし、魔法はアニスには届かなかった。
アニスは恐る恐る振り返ると、そこにはタングスが立っていた。
炎の弾を正面から受けていたのだ。
「タングス!」
アニスが叫んだのと同時にタングスは前に倒れた。
アニスはふらつきながらタングスの元へ歩いた。
「どうして・・私を見捨てて貴方がこの子を連れて逃げれば、二人とも助かったかもしれないのに」
アニスの瞳から涙が溢れている。
「・・・君を守る・・そう・・約束・・しただろ・・?それに俺は・・もう・・死にかけていたんだ・・・その命で・・・君を守れたのなら・・・こんなに・・嬉しいことは・・・ない」
「だめよ。死んじゃだめ。この子のお父さんなんでしょ?貴方はもっと生きなきゃだめよ・・」
「・・・子に・・必要なのは・・・父親・・ではなく・・母親だよ・・俺の分まで・・・頼んだ・・・」
「・・・わかったわ。この子を何としても守る。だから少しだけあっちで待ってて?」
タングスは笑顔を見せた。
「そろそろいいですかねアニス様。次はもう守る人はいませんよ」
アニスはハーバルを睨みつけた。
「・・・アニ・・・ス・・・走るんだ・・・最後に・・君たちへ・・・プレゼントだ・・」
「・・・わかったわ。・・・ありがとう・・タングス・・」
アニスはハーバルとタングスに背中を向けて走った。
「この期に及んでまだ逃げられると思っているのですか。無駄なことを」
ハーバルは再び右手を前に突き出して魔法陣を出し、炎の弾を放った。
しかしその弾はアニスに届くことなく、タングスの手前で爆発した。
「これは・・・結界!?死にぞこないの分際で小癪な」
「これで・・0歳の・・誕生日と・・アニスの・・誕生日を・・祝えた・・・かな?・・生きて・・・アニス・・・グニ・・ス・・」
アニスは村から山の中に入り、茂みの中に入っていった。
追っ手を警戒してのことだ。
グニスはアニスが無闇に走ってる様子ではないように見えた。
どこかに向かっているような。そんな気が。
しばらくすると、少し開けた何もない場所に出てきた。
そこでアニスは立ち止まった。
ここに来たかったのかな?
ここには何もないから隠れるにしても難しいような気がするんだが。
一体何を考えて。
アニスは歩き出した。
少しずつ何かが見え始めた。
そこには小屋が現れた。
小屋!?
さっきまで何もなかったはずなのに。
近付くと現れるような仕組みなのか?
隠しているということなのかもしれないけど近づいたら誰にでも見えるんじゃ。
「グニス。貴方、私に話しかけてくれてたよね?始めは空耳かと思ったけど村で起きた出来事を考えると助言してくれていたのよね。何か企んでいることを伝えてくれていた。多分私にしか聞こえていなかったと思うの。お父さんはあまり魔法が得意じゃないから。私の声とか聞こえて理解が出来ていると思って、今から言うことしっかり聞いてね。時間が無いから」
・・・念話出来てたんだ。
それなら今その念話で何か聞けるかもしれない。
「この小屋はね、私の持ってる鍵がないと入れないし外からも見えない。鍵を持ってなかったらこの広場を通っても何もないのと同じようになってるの。別空間になってるって感じかな。だから見つからない。安心して隠れられるわ」
アニスは鍵を使って小屋の中に入った。
ベッドにグニスを寝かせてアニスも寝転がった。
アニスはグニスの手に鍵を握らせた。
「でもあの人なら万が一ってこともあるの。だからこれから私はこの近辺にたどり着けないような結界をこれからかけるわ。鍵を持っていれば問題なく小屋に戻ってこれるから。それと、この小屋の地下にたくさんの本があるから、それでいろいろなことを勉強してね。本当はしっかり育ててあげたかったけどあの人を欺くために、私は貴方を守るために命と引き換えに結界となるわ。貴方の事見守ってるからね」
アニスの体が光始めた。
「・・・・・・お母さん」
「・・・ふふっ。お母さんと呼んでくれてありがとう」
アニスは笑顔になり、涙が布団に落ちた瞬間アニスの体が光となり消えた。
結界となったのだ。
グニスの目から涙が溢れていた。
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