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~この世界で俺は~5


目を覚ましたのは周りが少しうるさくなっていた頃だった。


・・・なんだ?うるさいな。

赤ちゃんはお眠の時間なんだぞ。

ゆっくり寝かせてくれよ。

・・・この声・・・悲鳴?

何人も聞こえる。

少し息の切れた吐息。

体が揺れている。

これは・・・走ってるのか?

まさか!?


グニスは目を開いた。

そこにはアニスが息を切らしながら真剣な顔で走っている顔が見えた。

手には火傷の跡、左肩からは血が流れている。

走ってる方を横目で見ると、村が燃えていて周りからは悲鳴が聞こえる。


いったい何が起きたんだ?

もしかしてあのおじいさんが何か仕掛けてきたのか?


グニスは少し周りを見るように視線を動かしている。

「大丈夫よ」


えっ?


「大丈夫よ。お父さんとお母さんが、守って、あげるから」

アニスは起きたことに気付いたのか安心させるように言ってきた。


何が起きているのか聞きたいけど話してくれるわけないよね。

聞けるわけでもないし。

今の状況で確認出来るのは母の顔と走ってる先を少し見れるくらいだから何もわからない。


すると後ろから大きな音がした。

その直後視界が真っ暗になり、何かが倒れた音がした。


何が起きたんだ?

視界が真っ暗になったぞ。

あの大きな音と倒れたような音。

状況から考えると母が倒れたんだ。

倒れる時に俺を抱え込んだため視界が真っ暗になったと考えて良さそうだ。


「危ないですよ。アニス様。いや、アニス殿」


この声は聞き覚えがある。

あのハーバルと言ったじいさんだ。


「こんなところにいては怪我をしてしまいます。どうか私のところへ」

「な・・にを・・言ってるの・・ハーバル。貴方が・・私に魔法を放ったから・・倒れているんですけど」


あの音は魔法が母に当たった音だったのか。

かなりピンチな状況みたいだ。

母は血も吐いている。

これ以上は・・・危ない・・


「何を仰っているのですか。確かに私は魔法を放ちましたが、当たってしまったのは仕方ありません。逃げる必要もないのにアニス様が逃げられたのですから」

「当たり前でしょ。この子を守るため・・・ですもの」

アニスは何とか立ち上がろうと体に力を入れる。

「そのような普通の子供に何をしても意味のないことですよ。それより我がグランタ国のため精一杯働くことの方が、その子のためになるのではなくて?アニス殿の血が流れているのですから我々の物ですよ。本来アニス殿も我が国のために働いていただかないといけないというのに、アニス殿がお逃げになられたのですからその子に責任というものもあるでしょ」

「貴方達のような・・狂った国なんかのために・・私や彼がいたわけじゃない。それに・・この子は物じゃないわ。私たちの子よ。責任も何も・・貴方達に利用されるだけじゃない。そんなこと・・させないわ」

アニスはフラフラながら立ち上がり、ハーバルの方へ向いた。

「私たちは・・貴方達に利用される道具じゃない。だから彼と国を出ることを選んだ。貴方達に・・この子は渡さない!」

アニスは右手でグニスを抱えながら左手を前に出すと、赤色の魔法陣が現れた。

「おやめなさい。今の弱り切った貴女が全力を出したところで私の魔法の方が強い。大人しくその子供を渡せば貴女は殺さないであげますから」

「・・・・母親を舐めるんじゃない!」

そう言ってアニスは炎の弾を飛ばした。

「やれやれ」

ハーバルも右手を出し、同じように炎の弾を出した。

二つの炎の弾はぶつかり、消滅した。

「・・・くっ!」

「ほらね、言ったでしょ?今の貴女では私に勝つことは出来ないのです。それに先ほどの魔法で貴女の魔力は底を尽きたでしょ。諦めて渡しなさい」

アニスは黙ってグニスを抱きしめた。抵抗するように。

「・・全く。貴女は昔から私の言うことなんて全然聞いてくれませんでしたね。初めからこうしておけばよかったですね」

ハーバルの右手から再び赤い魔法陣が出てきた。

「それではアニス様。貴女と過ごした日々は実に楽しかったですよ。・・・さようなら」

ハーバルは炎の弾をアニスに向けて放った。

アニスはグニスに当たらないように背中を向けた。

そして爆発音が鳴り響いた。



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