~学園~7
全員が出てから王は頭を下げた。
「宰相が大変失礼な事をした。申し訳ない」
王妃も立ち上がり頭を下げた。
リーシャも振り返り頭を下げた。
「気にしなくていい。あの人の言うこともわからなくもない。だが、俺は生きたいように生きるって決めてるから変えることはしない。それが公式の場でもな」
王は頭を上げた。
「ああ。構わないとも。娘の恩人なのだ。気にしなくて大丈夫だ」
その言葉と同時に王妃とリーシャも頭を上げた。
「あんたは剣術とかしてたのか?」
「少しだけだがね」
そう言って王は振り返り、玉座に戻っていった。
「まさかこの殺気に気付くとは思わなかったよ」
グニスはそう言ってヨツカの方を見た。
とても冷たく怒った目で。
その目から殺気が出ているのかヨツカは見られた時に委縮し、体が震え出した。
目を見ていない王と王妃とリーシャには何も感じ取れなかった。
王は玉座に座り、王妃も王の後に続いて座った。
「ほとんど勘に等しいくらいだがね。昔はそれなりに剣を振るうことは出来ていた程度の実力だ。彼女の殺気はとても薄く気付きにくいものだったが、宰相とヨツカさんの間にいたからわかっただけかもしれないな」
「そうか。事前に殺気は出さないようにと伝えていたんだが、我慢出来なかったみたいだ。申し訳ない。帰ったらしっかり言っておくよ」
グニスは王の方を見て答えた。
その時にはヨツカに向けていた目ではなかった。
ヨツカは帰ったら地獄が待っていると思い、下を向いてさらに震え出した。
「・・ヨツカさん、大丈夫ですか?」
リーシャが心配して声をかけた。
「・・・・・」
ヨツカは聞こえていないのか返事をしなかった。
グニスはその様子を横目で見ていたので、ヨツカの頭を撫でた。
ヨツカは意識がはっきりしたのか頭を上げてグニスの顔を見た。
いつものグニスの顔をしていてホッとした。
「ちゃんと返事してあげな」
そう言われ、周りの状況を確認した。
全員に見られていた。
「大丈夫ですか?」
リーシャが再び聞いた。
「・・・何がですか?」
状況を把握したヨツカが返事をした。
「すごく震えていたのが心配で」
「・・・お構いなく。大丈夫なので続きをどうぞ」
そう言ってヨツカは数歩後ろに下がった。
「では、改めてではあるが我が娘リーシャを救ってくれてありがとう」
王は座りながら頭を下げた。
「私からも感謝を申し上げます。リーシャを助けていただいて感謝しかありません。本当にありがとうございます」
王妃も頭を下げた。
「私からももう一度言わせてください。あの時は危ないところを助けていただきありがとうございます。何度伝えても感謝しきれません」
リーシャも頭を下げた。
「さっきも言ったが偶然出くわしただけだ。気にすることは無い。・・・と言いたいがそれだとお互い言い合いになるだろうから感謝は受け取ることにする。これで終わりにしてくれ」
三人は頭を上げた。
「・・わかった。では遅くなったが自己紹介がまだであったな。私はこのエルロッテ国の王でリーシャの父、バファルト・エルロッテである。隣に座っているのが、我が妻フィローネ・エルロッテだ」
紹介されて王妃であるフィローネは立ち上がった。
「ご紹介されました、フィローネ・エルロッテでございます」
ドレスの裾を掴み、少し頭を下げた。
貴族のような綺麗な挨拶をした。
「娘の紹介は必要ないだろうが、紹介させてくれ。娘のリーシャ・エルロッテだ」
リーシャもグニスの方を見て、
「リーシャ・エルロッテです」
リーシャもフィローネと同じようにドレスの裾を掴み、貴族のような挨拶をした。
「グニスだ。こっちはヨツカ」
ヨツカも紹介され、少し会釈をした。
「ではグニス君、感謝は先ほどので終わりにさせてもらうが、礼は別でしっかり受け取っていただきたいのだがどうだろうか?」
「礼と言われてもな。別に何もいらないんだが」
「そうは言っても我々としても何か礼をしないと気が済まないのだ。娘からの礼として学園への招待状をもらったのであれば我々からの礼も受け取ってもらえないだろうか?」
「その招待状が家族全員からの礼としてでは駄目なのか?俺はそれで構わないんだが」
「それは娘からの礼としてもらっておいてほしい。我々親としての礼は別で準備させてほしいのだ」
グニスは少し考えた。
とは言っても何も欲しい物はないんだがな・・。
欲しい物は手に入れられるわけだし。
「我々としては其方に領地の譲渡や貴族としての身分の準備、助けてもらったお礼金、城への出入り自由
、娘の婚約者など全て答えようと思っている」
娘の婚約者と聞いてリーシャが、
「お、お、お、お父様!?こ、こここ、婚約だなんてそ、そ、そ、そんな!?」
リーシャの顔は赤くなりまんざらでもなさそうな顔をしている。
「娘も嫌そうにしておらぬし、むしろ受け入れてそうなところを見ると良いかもしれぬな」
「お父様!?そのような事を私に相談もなく決めようとしないでください!」
照れているのを隠そうとしているのかリーシャはバファルトに突っかかるように叫んだ。
「嫌なのか?」
バファルトはからかうようにリーシャに尋ねた。
「い、嫌というわけではありません。むしろ私なんかでいいのかと思うところです」
むしろのところからはボソッと小さな声で言っていたので父と母には聞こえていなかった。
しかしグニスとヨツカには聞こえていた。
ヨツカは不機嫌になっている。
「ならばよいではないか。グニス君、今言った物の他にも準備は出来るが何かあるか?」
何を勝手に盛り上がっているんだ。
何故こんなに婚約の話が進むんだよ。
別に婚約する気なんかないって言うのに。
「とりあえず城への出入り自由だけでいい。統治するつもりもないのに領地をもらっても仕方ないからな。貴族なんかになりたいとも思わない。金の方ももらうつもりもない。婚約もするつもりもない」
婚約するつもりがないことを知り、ヨツカの機嫌は元に戻った。
代わりにリーシャが少し落ち込んでいた。
それをヨツカが見て、ざまあみろという感じで少し口元が緩んだ。
「それだけで本当にいいのか?我々からしたらお礼金だけは受け取ってもらいたいのだが。それと出来れば婚約の方も」
「こういう時、お礼金は多すぎるぐらい渡されるからな。経験は無いが何となく想像がつく。だからいらない。それに婚約はしない。俺は自由に生きたいんだ。婚約して縛るようなことはしてほしくない。それに何でそんなに婚約をこだわるんだ?偶然とはいえ助けたが、あんた達からしたらリーシャから話を聞いただけの初対面の男を信用しすぎだ。礼以外に何かあるんじゃないのか?」
グニスの言葉の後、少しの沈黙が漂った。
リーシャも少し疑問を持ち、バファルトの方を見た。
バファルトとフィローネは何か悩むような顔をしていた。
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